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48. 実力を見せつける

 少し打ち合わせをして、チャレンジ開始だ。攻撃役は戦いのときの同じく双子が担う。僕は当然、因子操作をする係。ルクスは特にやることがないので、応援係だ。


「ライナ、レイネ。準備はいい?」

「「いいよー!」」

「じゃあ、やるよ!」


 宣言とともに、僕はロックスネークの因子“ロックスキン”を取り込んだ。一瞬にして、巨大な岩の鎧が消えてなくなる。


「はぁっ!?」


 ひときわ大きな声はレンサーさんのものかな。僕の因子操作はそれなりの衝撃を与えることができたみたい。


 とはいえ、本番はここからだ。勝負の結果は“ロックスネークの体に傷をつける”ことで決まるんだからね。


「「えい!」」


 双子が魔法を放つ。さっきと同じ〈アクアレーザー〉だけど、さっきよりも規模が小さいような……?


 いや、違う! 規模が小さく見えるのは細く収束させて噴出させているから。勢いはさっきよりも数段激しい!


 一点に集中された水流は、鋭い刃のように蛇の体を削り取っていく。ほどなくして、巨大蛇は真っ二つに切断された。


「「やったー!」」


 双子は無邪気に喜んでるけど……なかなか刺激的な光景だ。これって、もしかしたら、因子操作しなくても切断できてたんじゃない? ウォーターカッター、できちゃってるじゃん。


 ともかく、無事、ロックスネークの体に傷をつけることができた。かたや岩の鎧を攻略できず、かたや真っ二つ。どう見ても、僕らの勝ちだ。


 そのはずなんだけど……勝敗判定を下すはずのアダンさんが固まったまま動かない。その隣ではオードさんとレンサーさんも似たような状況だ。


「あの……勝負の結果は?」

「……」


 呼びかけてもアダンさんは動かない。けど、多少なりとも僕らと付き合いのあるオードさんは我に返ったみたい。


「おい、アダン爺! 呆けてる場合じゃないぞ、結果だ!」

「あ、ああ。そうだったな。この勝負、ロイたちの勝ちだ!」


 よしよし、良かった。無事、僕らの勝ちが認められたね。まぁ、負けるとは思ってなかったけど。


「やったな!」

「レイネたち、凄いでしょー!」

「真っ二つー!」

「本当にすごかったよ」

 

 みんなで健闘を称えあう。ルクスの見せ場がなかったのはちょっと申し訳ないね。


「ば、馬鹿げてる! 岩の鎧がなきゃ傷つけられるのは当たり前だろ! あんなの俺たちだってできる!」


 勝負はついた。それなのに、ターブルが難癖をつけてくる。せっかくみんなで喜んでいたのに気分が台無しだよ。


「お前らな……ん、どうした?」


 オードさんが苦言を呈そうとしたけれど、それを止める。


「まぁ、そこまで言うならやってもらおうよ」

「はっ、よく言った! 鎧さえな……け……りゃ……」


 勢いよく喋りだしたターブルの声が萎んでいく。話している間に、僕がロックスキンの因子を戻したからね。真っ二つになったせいで因子が二つ必要になったけれど、ぱぱっとコピーして付与したよ。


「なんだありゃ! なんで鎧が戻ってる!」

「僕が戻したからね」

「なんでだよ!」


 おかしなことを言うね。


「勝負だからね。鎧を消すところからやらないと公平じゃないでしょ?」

「で、できるわけないだろ、そんな非常識なこと!」

「そう? 僕はやったけど」


 結局のところ、それが答えなんだ。僕たちにはできて、テーブルたちにはできない。それだけの話。とても簡単なことなのに。


「こんなの……こんなのおかしいだろうが!」


 だけど、ターブルはまだ納得していないみたい。


 もう。しょうがないな。


「ルクス」

「ん、どうした?」

「せっかくだから、あのまま切断してみない? 僕も手伝うからさ」

「岩の鎧ごとか? ……まぁ、やってみるか」


 勝算はあるんだろって目で聞かれた気がするので、頷き返しておく。


「俺はどうすればいいんだ?」

「ライナとレイネがやったようにできる? 僕がそれを強化してみるから」

「わかった」


 基本的にやることは双子と同じ。アクアレーザーによるウォーターカッターだ。“水霊の加護”のおかげで、ルクスは一人でも双子の協力魔法に匹敵するくらいの威力が出る。


 魔法が発動し、水の刃がガリガリ岩の鎧を削っていく。だけど、修復速度を上回るほどじゃなかった。そこで僕の出番だ。


 ルクスの噴射するアクアレーザーに重ねて土魔法の〈サンドショット〉を使う。なるべく拡散させずに混ぜる感じで。このとき、イメージするのは海辺の白砂――ケイ砂と呼ばれる石英の粒を多く含んだ砂だ。これを研磨剤として、ウォーターカッターの切断力を高めようってわけ。


 この試みはうまくいった。研磨剤によって切れ味が良くなった水の刃はゆっくりと……でも確実に岩の鎧を削っていく。ちょっと時間は掛かったものの、最終的には、鎧の上からロックスネークを切断することに成功した。


「どう? 君たちはできるわけないって決めつけたけど、僕らは鎧のままロックスネークを切断したよ」

「くそっ! 覚えていろよ!」


 顔を青くしているターブルたちに宣言すると、彼らはお手本のような捨て台詞を残して去っていった。


 せめて、謝罪くらいしていって欲しいよね。まったく。


 ただまぁ、ちょっとやりすぎたかもしれない。アダンさんたち、また固まっちゃったから。


 いや正直、ここまでするつもりはなかったんだけどね。当てつけの意図があったのは否定できない。だって、アイツらがルクスたちを下に見るように態度をとるんだもの。そりゃ腹が立つよ。


 うんうん、こればっかりは仕方がないよね。悪いことばかりじゃない。ここまでやれば、ちょっかいをかけてくることはなくなるはずだ。たぶんね。

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