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47. ターブルたちとのトラブル

 ひとまず、僕らは少人数で戻ることにした。運搬を考えると二度手間だけど、このまま違う違わないと話していても時間の無駄だからね。


 同行してくれるのは、オードさん、アダンさん、それとレンサーさんだ。


 レンサーさん……最近、ほとんど酒場にいるけど、冒険者活動はちゃんとやってるのかな。パーティメンバーに怒られないといいけど。


 跳び鼠の巣のそばまでくると、言い争う声が聞こえてきた。


「いいから、それを寄越せって言ってんだよ! 俺たちがいいように使ってやるから! どうせお前らも拾っただけだろ?」

「だから、何度も言ってるだろうが。これは俺たちで倒したものだ!」

「そんなわけねぇだろ!」

「嘘をつくなら、もっとマシな嘘をつけ!」


 聞こえてくる幾つかの声のうち、1つはルクスのものだ。どうやら、ロックスネークを巡ってトラブルになっているみたい。


「ルクス!」

「ああ、ロイ。良かった。人を連れてきてくれたか」


 僕らの姿をみると、ルクスがほっと息を吐いた。よほど困っていたみたいだね。


 それもそのはずで、言い争っていた相手はルクスたちに因縁のある相手だった。以前に遭遇したスラム出身の冒険者ターブルたちだ。


 そのせいか、双子はルクスの背後に隠れておとなしい。ルクスは1人で、男4人に立ち向かっていたことになる。


 いや、一応、ビネがルクスの隣に立って仁王立ちしてくれてるんだけどね。迫力という意味ではちょっと物足りない。というか、ターブルたちに認識されているかも怪しい。


「で、これはどういう状況だ?」

「俺たちが倒した獲物をコイツらが奪ったんだ!」


 オードさんが尋ねると、ターブルが即座に答えた。もちろん、大嘘だ。少なくとも、僕らがロックスネークと戦っているときに、彼らの姿はなかった。


 もちろん、オードさんも信じたりはしない。呆れた様子でターブルに指摘する。


「あれ、ロックスネークだぞ。単独パーティだと討伐推奨ランクはCランク以上。Eランクのお前らには無理だ。話を盛りすぎだろ」


 Cランク!?


 ロックスネークって、そんなに強い魔物だったんだ。因子で弱体化させたとはいえ、双子の魔法で一撃だったのに。


「ぐっ……だが、それはコイツらだって同じだろ! まだ見習いだぞ! 俺たちよりもありえない!」


 自分たちの手柄にできないとわかった途端、ターブルは方針を変えてきた。Eランク冒険者である自分たちが倒せないなら、見習い冒険者の僕たちに倒せるはずがないという主張だ。


「それは……まぁ普通はそうだな」


 それ自体はとても真っ当な論理展開なので、オードさんも少し弱ってしまったみたい。困り顔で同意する。


 その様子に、ターブルが勢いを取り戻した。


「だろうが! 俺たちが倒したと考えたほうがまだ信憑性が――」

「いや、それはない」

「ないな」

「さすがにな」


 しかし、ターブルの主張はオードさん、レンサーさん、アダンさんから揃って否定される。


「なっ!? コイツらを贔屓するつもりか!」

「いや、そういうわけじゃない。あくまで、お前らに倒すのは無理だという話だ。ロックスネークの岩の鎧は生半可な攻撃を弾いてしまう。お前らの腕前と、その装備じゃ討伐はできん」


 アダンさんが諭すように言った。しかし、それでターブルが納得するわけもない。


「だったら、コイツらだって同じだろ!」

「いや、コイツらは普通じゃないからな……」


 オードさんが遠い目をして答えた。そんな反応にレンサーさんは不思議そうな顔をしている。


「そこまで言うなら、ロックスネークの体に傷をつけられるか試してみるといい。それで、どちらが倒したか判別するのはどうだ?」


 アダンさんは何か考え込んでいたけど、ひとつ頷くと僕らにそんな提案をした。


「い、いいだろう! なぁ、お前ら!」

「あ、ああ!」

「やってやるぜ!」

「当たり前だぜ!」


 あとに引けないのか、ターブルたちは賛成に回った。ここで僕らが反対すると、やっぱりお前らには倒せないんだなって展開になりそうだ。


 うーん。さっきのアダンさんの話からすると、ロックスネークの岩の鎧はかなりの防御力を誇るみたい。確実に傷をつけるなら、因子の取り込みをやらないと駄目かも。


 僕としては因子操作を明かしてまで、ロックスネークの権利主張をする価値はあるのかなっていうのが正直なところ。


 でも、ルクスが頑張って守ってくれたことを思うと、ターブルたちに奪われるのは面白くない。


 それにここで引いたら、ターブルたちはつけあがるよね。きっといつまでもつきまとわれることになる。ここで、はっきりと僕らの実力を見せつけておくことは必要かもしれない。


「よし、やろうか」

「「やる!」」

「ああ!」

「チュウ!」


 僕が賛成の方向に話を振ると、みんなも同意してくれた。


「では決まりだな。まずはお前たちからやってみろ」

「やってやるよ!」


 最初にチャレンジするように指示されたのはターブルたちだ。彼らは気合十分といった様子で武器を掲げた。でも、勢いが良かったのはそこまでだ。


 ロックスネークの死体に向けて武器を振るけど、岩の鎧を攻略できる気配はない。砕けはするんだけど、勝手に修復されるんだよね。


「もういいだろ。そこまでだ!」


 たぶん10分くらいガンガンと武器を叩きつけてたけど、結果として岩の鎧を突き抜けてロックスネークの体に傷をつけることはできなかった。アダンさんに攻撃を中断するように指示されて悔しそうに下がっていく。


「次はロイたちだ。準備はいいか?」

「はい」


 どうせなら、思いっきり派手な形で結果を示そう。ターブルたちが僕らにちょっかいかける気がなくなるようにね。

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