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39. キャルさんの恩寵

「素敵な服をありがとうございます」


 まずはお礼。僕が頭を下げるとルクスと双子もそばにやってきて、ありがとうございますと頭を下げた。


「いーの、いーの! あーしたち、仲間なんだから、助け合わないと!」


 キャルさんがニパっと笑う。


 そう言ってもらえるのはありがたいけど、今のところ何も返せてないのが心苦しい。因子操作で何かできないか、後で考えてみよう。


 ともかく、まずは相談だ。


「実は他にも用事がありまして」

「おや、そうでしたか。では応接室に移動しましょうか」


 カトレアさんに案内され、応接室に。キャルさん、カトレアさんと向き合う形で、僕らも座った。


 あらためて相談事を切り出す。聞きたいのはGPの稼ぎ方だ。


 けれど……


「GP? なにそれー?」


 キャルさんにはいきなり首を傾げられてしまった。


「えっと、恩寵を強化するためのポイントなんですけど……」


 仕方なく、僕の恩寵を例に詳しく説明したんだけど、キャルさんは驚くばかり。


「ほー。ロイ君の能力って、そんななのかー。便利そーでいいじゃん」


 最終的な感想がこれだった。どうやら僕とキャルさんでは、恩寵の仕組みにかなり差がありそうだ。


 いや、僕がここまでいろいろできるようになったのはウィンドウのおかげだ。


「キャルさんも、恩寵をウィンドウ表示できるようにお願いしてみたらどうですか?」

「ウィンドウ? えーと、なんだっけ?」


 ここでまたキャルさんが首を傾げる。


 この反応、本当にわかってないみたいだ。ひょっとしたら、キャルさんも前世の記憶を持ってるんじゃないかと思っていたのに。


 ということは、これまで作った服も、全部、自分のアイデアってこと? それは凄いね。


 一応、ウィンドウについて説明して試してもらってけど、無理だったみたい。前世の記憶がないと、うまくイメージできないみたい。


「それじゃあ、キャルさんの恩寵は強化できないんですか?」

「強化? うーん、どーだろ? 考えたことなかったからなー」

「強化ではありませんが、ときどき不思議な道具を授かりますよ」

「あー、うんうん。そだね」


 横からフォローしてくれたのはカトレアさん。なんでも、キャルさんは服作りに使える道具を混沌神から授かることがあるみたい。


 例にあがったのは、自動裁縫機械――どうもミシンっぽい――や何でも切れる裁ちばさみ。それらはキャルさんにしか扱えないけど、とても便利なのだとか。


 混沌神が授ける道具としては違和感あるよね。けど、服作りこそキャルさんが世界に混沌をもたらす手段。それを補助するという意味では適切なのかも。


 そっか。道具というのもありなんだ。GPでも同じこと、できるのかな? 


 でも、現状でさえ、カツカツだからなぁ。やっぱり能力アップに使いたいよね、GPは。そういうことができるかも、とだけ覚えておこう。


「ところで、キャルさんの恩寵って、どんな力なんです?」


 本題から外れるけど、気になるから聞いてみた。話の流れで僕の因子操作も説明しちゃったから、もしかして教えてもらえるかもと思って。


 実際、キャルさんは気軽な感じで教えてくれた。


「あーし? あーしの恩寵は“プチ・破壊と創造”だよ」


 なんだろう。聞いただけではまったく想像がつかない恩寵だね。まぁ、他の恩寵も大概そうなんだけど。


「どんな力なんです?」

「あーしがほどほどに壊したものにこの力を使うと、ちょこっと強化された状態で修復されるんだよ」


 うーん、なるほど?

 わかるようなわからないような?


「当店で扱う服は丈夫な布で作られています。この布も店長の恩寵で強化されているんですよ」


 カトレアさんが具体的な利用例を教えてくれる。そう言われると、少しだけイメージが沸くね。


 僕が感心していると、ライネとレイネがコソコソと二人で話し始めた。


「強くなるー?」

「できるかもー?」


 何の話をしてるのかなと思っていたら、双子が同時に振り向いた。


「「ロイ、枝!」」

「……え? 枝?」


 突然なんなの。いや、枝は持ち歩いてるだけどね。枝ポキ方式で因子を複製するときのために。


 保管用の小袋から短い枝を取り出して渡すと、また声を揃えて「因子は?」と聞いてくる。


「まだつけてないよ」

「つけてー!」

「甘くなるの! 甘くなるのがいい!」


 よくわからないけど、言われるがままに因子を付与する。



■取り込み可能な因子■

・甘みアップ(Lv5)

・甘みアップ(Lv2)



「付与したよ。これでいいの?」

「「うん!」」


 満面の笑顔で頷く双子に枝を差し出す。受け取ったレイネは、それをそのままキャルさんの前に突き出した。


「これ、強くできるー?」


 ……え?


「もしかして、因子を強化したいってこと?」

「「そう!」」

「そんなこと……できるのか?」


 双子はニコニコ。僕とルクスは困惑気味に顔を見合わせた。


 まさかっていうのが正直な気分。でも、双子のアイデアで枝ポキ方式の因子複製ができるようになったんだ。ありえないと否定はできない。


「因子というと、ロイさんの能力ですね。それを店長の能力で強化する、ですか。面白い発想ですね」

「いーね! 早速やってみよー!」


 一方で、キャルさんとカトレアさんに戸惑いはない。これが混沌神との付き合いの長さの違い……なのかな? 本人の資質のような気もするけど。


 キャルさんはレイネから受け取った枝を折れるか折れないかのギリギリのところまで曲げる。そして、目を閉じた。


「カフーラ様、おねがーい」


 お祈りにしてはあまりに軽い言葉だ。これに関しては僕もどうこう言えないけど。


「強化はできたよー。因子はどうかな?」

「……確かめてみますね」


 再び僕の手元に枝が戻ってきた。ウインドウを開いて、因子を確認してみる。



■取り込み可能な因子■

・甘みアップ(Lv7)

・甘みアップ(Lv4)



 本当に強化されてるぅ!?

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