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34. 感情因子


 項目は2つに増えたけど、表記は微妙に異なるね。因子のタイプが違うってことなのかな?


 僕、なんてお願いしたっけ?


 たしか、取り込み可能な因子の候補を増やしてほしいとお願いしたよね。それで違うタイプの因子が見えるようになったってこと? お願いって難しいなぁ。


 まぁいいや。できることが増えたなら、それを喜ぼう。


 新たな因子は“驚き”か。ベルさんの今の状況にも合致している。ということは、これって感情が見えてるってことかな?


 これ、取り込んだらどうなるんだろうか。試しにストックの方に取り込んでみた。


 すると、ベルさんの表情が一瞬スンとなって、すぐに微笑が浮かぶ。


「たしかに、これだけの実力があるなら、跳び鼠だけでは物足ないかもしれませんね。いいでしょう。Fランクの魔物なら教えますよ」


 おっと、そうだった。そのために魔法を披露したんだったね。


 けれど、僕の興味は完全に恩寵のほうに移っちゃってる。そっちの話はルクスに任せよう。


 ええと、まずはちゃんとストックできてるかチェックだ。ウィンドウを操作してっと。


 あれ? リストに“驚き”がないぞ?


 不思議に思って調べていると、新しい項目ができていた。



■付与可能な感情因子■

・驚き(上限Lv3)



 おお、やっぱり感情の因子なのか。普通の因子とはレベルの表記が少し違うね。上限が3ってことは、それ以下なら自由に設定できるってことかな。


 もう一度、ベルさんに付与してみよう。いや、その前にベルさんの因子チェックかな。感情因子だけを表示させてみよう。



■現在の感情因子■

・平穏



 なるほど。今は落ち着いていると。これを取り込むとどうなるかな。


 再び、ベルさんの表情がスンと消えた。でも、すぐに穏やかな微笑が浮かぶ。


 再度、感情因子をチェックだ。



■現在の感情因子■

・平穏



 戻ってるね。取り込んだとき無表情になるのは、その瞬間だけ無感情になるからかな。


 じゃぁ、次は付与の実験だ。



■付与可能な感情因子■

・驚き(上限Lv3)

・平穏



 リストには“平穏”も増えたけど、今と同じ状態を付与しても意味がない。だから付与するのは“驚き”だ。わかりやすいようにレベル3で付与する。


「……っ!」


 付与した瞬間、ベルさんはビクッと肩を揺らした。


「どうしました?」

「え? いえ……何でもないです」


 ルクスが声をかけると、ベルさんは不思議そうにしながらも、魔物の話を続けた。驚いた様子はあったけど、本当に一瞬だったね。


 今の状態はどうかな?


■現在の感情因子■

・平穏


 平穏に戻ってる。


 なんだろう。効果が一瞬すぎてあんまり意味がないぞ。50GPも使ったのに。


 ほかの人はどうだろうか。アダンさんは……


■現在の感情因子■

・平穏


 平穏だね。試しに“驚き”を付与してみたけど、ベルさんと変わらない反応だった。一瞬驚いてもすぐに、平穏に戻る。


 他には……そうだ。アダンさんたちと一緒になって驚いていた冒険者の人たちはどうだろうか。



■現在の感情因子■

・驚き(Lv1)



 お、まだ少し驚いている状態だ。ここにレベル3の驚きを付与したらどうなるかな?


 見た目には変化はないね。じゃあ、因子は?



■現在の感情因子■

・驚き(Lv3)



 レベル3のままだ!


 これはどういうことだろうか。申し訳ないけど、見知らぬ冒険者の人たちには実験台になってもらおう。


 何人かに手伝ってもらった結果、ちょっとだけ感情因子の性質がわかってきた。


 まず、感情因子は時間経過でレベルが下がっていく。レベルが0になると消失して、平穏状態になるみたいだ。


 平穏状態の人には感情因子を付与してもあまり意味はない。ベルさんやアダンさんがそうだったみたいに、すぐに平穏状態に戻ってしまう。


 けれど、すでに驚いている人には有効だ。高レベルの“驚き”で上書きすることで、驚いている状態を長引かせることができるみたい。


 ただし、付与し続けると耐性ができるのか、レベルの減衰が早くなるようだ。だから、ずっと驚かせたままというわけにはいかない。


 ちなみに“驚き”を“平穏”で上書きすることもできる。この場合、一瞬だけ生じる無表情の瞬間がなくなるだけで、感情因子を削除するのと大差ない。


 他の感情因子で上書きした場合はどうなるんだろうか。気になるよね。どこかに落ちてないかな。


 そう思って、ギルド内の人の感情因子を片っ端からチェックしてみたら、すぐに見つかった。



■現在の感情因子■

・呆れ(Lv3)


 呆れか。いったい、何に呆れてるのかわからないけど、ありがたく拝借させてもらおう。


 と思ったのだけど、その前に声をかけられた。


「お前ら、今度は何をしたんだ?」


 聞き覚えのある声に、ウィンドウから意識を外すと、そこには知ってる顔があった。


「え、オードさん? なんでここに?」


 今日は宿でゆっくりするって言っていたのに。


 僕の問いかけに、呆れた目のままため息を吐いた。


「おかしな魔法の使い方をする子供の噂を耳にしたんで、気になって様子を見に来たんだ。そしたら、案の定ってわけだ」

「な、なるほど……」


 それはお騒がせしました。


 と、とりあえず、オードさんの感情因子を取り込ませてもらおうかな。あくまで新しい因子が欲しかったからで、呆れた目に耐えかねたわけじゃないよ?

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