31. 跳び鼠狩り
魔法を使えるようになった僕らは、いよいよ冒険者として本格的に活動してみることにした。
冒険者の仕事はいろいろあって、街の清掃や畑仕事の手伝いみたいなものもある。けれど、僕らが挑戦するのは魔物退治の仕事だ。冒険者といえばやっぱりコレだよね。
「この辺りだよな」
「そう聞いてるけど」
僕らがやってきたのは、街から出てすぐの草原。街道から少し離れた場所に跳び鼠がたくさん住んでいる場所があるんだって。通称、跳び鼠の巣。まぁ、そのままだね。
「ネズミ、どこー?」
「ちゅう。ネズミ、ちゅう」
ルクスだけじゃなくて、双子もついてきている。冒険者として仕事は受けられないけど、一緒に行動する分には問題ないからね。
野生動物を狩る場合、騒がしくすると獲物に逃げられちゃうので良くない。でも、跳び鼠は魔物だ。多くの魔物は好戦的で、積極的に襲いかかってくるから、双子が騒いでも特に問題はない。
「……っと、いるな」
「え、どこ?」
草をかき分けて進んでいると、ルクスが前方を指差した。目を凝らしてみても、草だらけで何も見えないんだけど。
「巣穴からこっちを伺ってるな。もう少し近づけば飛び出してくるだろう」
「ルクスって、もしかして気配とかわかるの?」
「いや、どうだろうな。なんとなくそんな気がするだけなんだけど」
ルクスの言ったことに間違いじゃなくて、少し進むとネズミがぴょんと飛び出してきた。そこそこデカいね。僕らの頭くらいはある、でっぷりとしたネズミだ。
「レイネがやるー!」
言うが早いか、レイネが水球を飛ばした。水球はネズミの頭をすっぽりと覆う。ネズミがいくらもがいても離れない。しばらくすると、ネズミは息絶えて動かなくなった。
「やったー!」
「ずるい! ライナも! ライナが次やるー!」
レイネは跳び上がって喜び、ライナが羨んでいる。初めての戦闘直後とは思えないほのぼのとした光景だ。
僕はルクスと顔を見合わせた。
「想像していたより、あっけなかったな」
「そうだね」
魔法を習得するまで活動を控えるって言ったとき、オードさん呆れてたものなぁ。その理由が今わかった。跳び鼠を倒すのに、魔法なんて必要なかったね。もちろん、あったほうが便利だから使うけど。
「どうする?」
「解体の仕方とか知らないし、そのまま持ち込みでいいんじゃない」
「じゃあ、俺が運ぼう」
ルクスが新たに大きめの水球を作り、跳び鼠の死体を包んだ。そのあと、水球はぷかりと浮かび、ルクスの背後に控える。
「そんなことできるんだ」
「加護があるからこの程度はな」
この程度ってルクスは言うけど、水球に荷物を運ばせるって凄くない? しかも、冷却効果もあるから、肉も傷まないよ。
そのあとも順調にネズミ狩りは続いた。ネズミを探し出して、水球で包み込むだけの簡単な仕事だ。
「さすがにこれ以上運ぶのは厳しいな」
5匹目のネズミを倒したところで、ルクスが限界を宣言した。いや、5匹運べるだけでも凄いけどね。大きいな水球にネズミの死体がぷかっと浮いている。出くわす状況によっては、ちょっと怖い光景だ。
「それじゃ、一旦、戻ろうか」
「そうだな」
「「わかったー」」
僕の提案に、反論はなかった。
一応、ズタ袋は用意してあるから、追加で一、二匹狩れないことはないけどね。でも、そこまでする必要はないかなって言うのが、みんなの共通する気持ちだ。だって、あまりにあっけないから戦っている感じがしないもの。
「今のうちに、因子を確認しておいたらどうだ」
「あっと、そうだね」
ええと、ネズミの因子は、っと
・多産
・ちょこまか動く
・平凡
・多産
・魅惑の尻尾
◆多産◆
生まれる子供の数が増える。
収穫量が増える。
◆ちょこまか動く◆
敏捷性が固定値で上昇する。
◆平凡◆
特に際立ったところがない。
突出した能力がある場合、制限を受ける。
◆魅惑の尻尾◆
尻尾を持つ場合、魅力が一定倍率で上昇する。
「どうだったー?」
「いいの、あったー?」
「うーん、微妙かなぁ」
双子の問いに、首を捻りながら答える。
まぁ、”ちょこまか動く”は悪くないと思う。でも、取り込み枠が足りないんだよね。僕ら、魔法攻撃タイプだから、そこまで素早く動く必要がないってのもある。逃げるときには便利そうだから、”頑丈”とどちらを優先するかってところかな。
“多産”は畜産とか農業とかやるなら使えるのかなぁ? 今のところ予定はないけどね。
とりあえず、この2つはストックしておこう。“平凡”と“魅惑の尻尾”はいらないかな。ストックできる数にも限りがあるから、スルーで。
「やっぱり弱い魔物だと、因子もぱっとしないのかも」
「そうかもな。次はもう少し手強い魔物を狙うか」
「レイネ、倒せるよー!」
「ライナもー」
あはは、みんなやる気だ。手頃な魔物がいればいいんだけどね。




