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153. 家を建てなきゃ

 “亜空間収納”因子が何でも……は言い過ぎだけど、袋状のものならマジックバッグにできそうだ。とはいえ、まだその特性ははっきりしていない。


 レベルによる収納量の違いはどんなものか。何でも収納できるのか、それとも収納できないものはあるのか。因子を外したとき、中身はどうなるのか。いろいろ調べたいことはある。


 ただ、詳細にやろうとすれば時間がかかりそうだ。因子が確保できたので、実験はいつでもできる。まずは当初の予定通り行動すべきだろうね。


「オードさん、因子についてはまた今度ね」

「あ、ああ。というか、こんなところで気軽に試すことじゃなかったな」


 声をかけると、オードさんはバツが悪そうな顔をしたあと、表情を引き締めた。イリスさんをはじめとしたパーティメンバーも同じような表情で頷く。


 うん、たしかにね。マジックバッグは貴重なものだ。それが量産できるかもって話は迂闊にするべきではないのかも。まぁ、ここは外だし、聞いている人なんていないと思うけどね。


 それはそれとして、今は家作りを優先しないと。あ、いや、まずはルーナの翻訳機を作るんだったっけ。


「翻訳機を作るのに必要なものってあるの?」

『ううん。僕の翻訳機をコピーするだけだから、特別なものは必要ないよ』


 僕の問いに、リックが首を振る。


 調整はあくまでソフトウェア的なもので、構造自体はまるっとコピーするだけで大丈夫みたい。まぁ、その調整が大変らしいけどね。


「登録すると、コピー元は消えちゃうんじゃないっけ?」

『ああ、うん。でも、設定ごとコピーされるんだよ。だから、僕自身の分はすぐに使えるよ』


 それなら、問題ないね。登録後に2台複製して、1台はそのままリックが使えばいい。


『いや、簡単に言うが、本当に大丈夫なのか?』


 ……と思ったけど、レグザルが眉を下げて、疑問を呈してきた。


『デュプリケーターがあるなら複製はできるんだろうがエネルギーはどうする。 翻訳機丸ごととなると、結構使うだろ』


 何でも複雑な物を対象とすると必要なコストが大きくなるみたい。翻訳機2台分のエネルギーを確保できるのかと疑問に思っているようだ。


 とはいえ、魔石を無限複製できるからエネルギーに関しては問題ないんだけど。ああ、よく考えたらレグザルは知らないのか。


 ほぼ同時にリックも気がついたみたい。ポンと手を叩いて、事情を説明し始める。


『ああ、内蔵エネルギーでは足りないと思うよ。でも、多少効率は悪いけど魔石をエネルギーに変換することができるんだ』

『それは知っている。俺たちも魔石を使ってエネルギーを確保していたからな。だが、製品まるごと複製しようとすると相当なエネルギーが必要だぞ?』


 レグザルが言うには、オリジナルの製品には複製防止のための仕組みがあるらしくて、コピーのコストがかなり大きくなるみたい。それを避けるためには、細かいパーツに分解してパーツごとに複製する必要があるらしい。


 だけど、翻訳機は精密機器だ。分解してしまうと元に戻せる保証はない。分解してコピーするのはかなりリスキーだ。


 とはいえ、それはリックも知っているみたい。レグザルに頷いて言葉を返す。


『そうだね。だから、分解はせずにそのままコピーするよ』

『だから、エネルギーが……』

『うん、わかってる。でも、心配はいらないよ。実は――』


 リックが魔石の無限複製について説明する。それを聞いたレグザルは素っ頓狂な声を上げた。


『ちょ、ちょっと待て! 本気で言ってるのか?』


 レグザルが僕とリックの顔を交互に見て唸る。


 驚いたのはレグザルだけじゃなかった。


「ロイ! お前、今とんでもないことを言わなかったか!?」


 オードさんだ。彼だけじゃなくて、他のメンバーも信じられないという顔をしている。


 そういえばオードさんたちにも言ってなかったっけ。あのときは一緒にいたのは……キャルさんたちだっけ。


「うん。実はそうなんだ。因子を使って――」

「いや、いい。ここで話すのはやめとけ。もっと街から離れるぞ」


 事情を話そうとしたら、オードさんに有無を言わさずそう言われてしまった。ルーグさんはさっとUFOをしまって移動する構えだ。


 まぁ、魔石を無限に増やせるって話がバレたらまずいのは僕でもわかる。ちょっと迂闊だったかな?


 僕らはさらに街から離れた場所、近くの森あたりまで歩くことになった。オードさんが、ちらりと周囲を視線に巡らせて、こちらに顔を向ける。


「あいかわらず、突拍子もないことを言い出すな、お前は」

「ロイだからねー」

「ロイだもんねー」


 僕が応える前に、何故かライナとレイネが嬉しそうに答えた。ルクスもうんうん頷いている。さらに、オードさんたちまでが「まぁ、そうか」と言って笑った。


 それで納得されるのも何だかなぁ。まるで僕が変みたいじゃない? 変わってるのはあくまで混沌神様の恩寵であって、僕ではないよね?


 釈然とないものを感じつつ、改めて無限複製のやり方について説明していく。といっても、因子でコストを下げて複製するってだけだから、それほど語ることもないんだけどさ。



「その機械とロイがいなきゃできない方法ではあるが……とんでもないな」


 説明を聞いたオードさんが何とも言えない表情で言葉を絞りだす。似たような顔でレグザルが唸った。


『ほ、本当にそんな簡単に増やせるのか……?』


 こちらはまだ信じられないって感じかな。そういうときは論より証拠、実際にやってみればわかるよね。


「じゃあ、実際にやってみれば――」

「『待て待て。もっと人目がつかないところでやれ』」


 オードさんとレグザルの声がハモった。


 こんな場所なんだから誰も見てないと思うんだけどね。でも、みんなが反対するから、家作りを優先することになった。


 まぁ、予定通りとはいえば予定通りだからいいんだけどね。

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