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151. 下準備と新しい因子

 僕らは今、ラーベルラの街の門まで来ている。


 一緒にいるのは僕の家族であるルクス、ライナ、レイネ。アライグマ隊やトビネズミ隊も一緒だ。さらには、リック、ルーナ、レグザルにもついて来てもらった。最後は運搬役としてオードさんパーティ。かなりの大所帯だ。


 ぞろぞろと移動すると、どうしても街の人たちから注目される。まぁ、これは人数のせいではなく、いつものことだけど。


「こ、これは使徒様がた……いったい、どうされたのですか? ま、まさか、お帰りに!?」


 普段はこんな風に大人数で移動することはない。だからか、門番さんが僕らを見て大きな声を出した。


 僕がラーベルラの領主代行になったという話は、まだ公表されていない。だから、ブルスデンに戻るのではと思ったみたい。


 門番さんの声が大きかったせいで、さらに注目が集まってしまった。不安そうな顔で住人たちが集まってくる。


「そんな!」

「使徒様、帰ってしまうのですか!」

「見捨てないでください!」

「アライグマ様! 我らに救いを!」


 うーん。思った以上に、住人には不安が残っているようだ。できれば不安を取り除いてあげたいんだけど、感情因子は一時しのぎでしかないんだよね。


 それでもやらないよりはと思って、周囲一帯から“不安”の因子を取り除き、“平静”の因子に付け替える。


「大丈夫ですよ。少し用事で街を出るだけです。すぐに戻ってきますから」


 そう言うと、因子操作のおかげもあって、住人は落ち着きを取り戻した。最初にきっかけを作った門番さんも冷静になったみたいで、申し訳なさそうに頭を下げた。


「すみません。私が余計なことを言ったばかりに」

「いえ、大丈夫ですよ」


 恐縮する門番さんの横をすり抜けて、街の外に出るとルクスが呆れと感心が半々くらいの声音で言う。


「ロイ……お前、なんかすごいな」

「すごい!」

「かっこいい!」


 双子がきらきらした顔で僕を見ている……のはいいんだけど、“すごい”とか“かっこいい”要素はあったかな?


 ああ、みんなに頼りにされているように見えたのかもね。


「ええと……いろいろあってね――」


 経緯について説明する。アライグマの神の使徒としてあがめられていると話すと、ルクスは首を傾げ、ライナとレイナはきゃっきゃと笑った。


「「アライグマの神様!」」

「チュチュウ!」


 嬉しそうに声を揃えるライナとレイネにビネが抗議をする。やっぱり、アライグマ優遇に思うところがあるみたいだ。みんなでビネをなだめつつ、少しだけ歩く。


「この辺でいいでしょうか」


 門から壁沿いに20mくらい歩いたところで、ルーグさんが足を止めた。門からも見える位置だ。街道から近すぎるかなとは思うけど……あまり離れすぎても不便だから、こんなもんかな?


 僕らがここに来た目的は家づくりのためだ。僕一人ならもうしばらく宿暮らしでもいいかなと思ってたけど、せっかくルクスたちも来てくれたので、ちゃんとした住処を確保しようと思って。


 領主館に部屋を借りることも考えたけど、考え直した。なにしろ、先日の戦いで客間の壁には大きな穴が開いているからね。部屋数に余裕がないんじゃないかな。今はラウル様たちもいるしね。


 それにリックたちのこともある。一日中宿に閉じこもる生活は不自由だ。できれば、人の目のない場所で過ごさせてあげたい。


 まぁ、喋ることに関してはあまり隠していないんだけどね。もうすっかりばれちゃってるし。それで、悪魔と間違えられるようなことも今はない。


 けど、迂闊に街に出ることはできないんよね。そんなことをしたら、神様の使いとしてもみくちゃにされてしまうから。アライグマ隊はあれでマスコット的な扱いには慣れてるけど、リックたちには精神的な負担が大きい。


 というわけで、いっそのこと新しい家を建てようと思ったってわけ。


「いいと思います」


 僕が答えると、ルーグさんは頷いて、マジックバッグを取り出した。しばらくすると、僕らの目の前には銀色の円盤状の物体が現れる。リックのUFOだ。


 ルーナが驚きの声を上げた。心なしか嬉しそうな声だ。


『うん、僕の宇宙船。でも、前にも話した通り、壊れてるんだ。まぁ、修理の目途はある程度立ってるけどね』


 オードさんにはこれを取りに戻ってもらったんだよね。僕がしばらくラーベルラにいることになったから、リックたちもこちらに拠点を移してもらおうと思って。一応、僕の従魔ってことになっているし、そうでなくても保護者として離れないほうがいいだろうから。


 せっかくブルスデンに工房を作ったのに……と思うけど、設備の核である機能はほとんどUFOに集約されているから、UFOさえあれば問題ないんだって。


「リック、不足がないか確認してくれ」

『あ、そうだね』


 オードさんに言われて、リックがUFOの中に入っていく。しばらくして、『問題ないよ』と顔を出した。その手にあるのはマテリアルデュプリケーターだ。これさえあれば、建築資材は作り放題だから、家づくりも簡単だよね。


『ええと、まずはルーナの翻訳機を作っていいかな?』

「もちろんだよ」


 喋れないのは不便だからね。ただ翻訳機はデュプリケーターでも作るのは時間がかかるみたい。外側作るのはコピーでポンとできるけど、個人用にカスタマイズするのが大変なんだって。


 それでも翻訳機は重要だ。家は宿暮らしでもどうにかなるから、優先度はこちらが上だね。


 それにしても、本当にデュプリケーターって便利だよね。それに匹敵するのがマジックバッグだ。これがないとUFOを運んでくることもできなかったし。


 デュプリケーターはともかく、マジックバッグはどうにか手に入れられないかな。デュプリケーターで複製は……あれ、そういえば因子のチェックってしたことあったけ? ないよね?


 もし、マジックバッグの機能が因子によって再現できるなら、すごく便利だ。是非、確認しておきたい。


「あの」

「あら、どうしましたの?」


 おずおず声をかけると、エリザさんが不思議そうな顔で尋ねてきた。思い切って、マジックバッグの因子を見せて欲しいというと、オードさんたちが困惑した顔で顔を見合わせた。


「おいおい。まさか、な」

「い、いやいや、さすがに無理……だよね?」

「コピーできたら大事(おおごと)ですわよ」


 オードさんはのけぞり、イリスさんは上擦った声で僕を見た。エリザさんは息を吐きながら首を振っている。


「ま、まぁ見せるだけなら、なんてことはありませんよ」


 恐々といった表情で、ルーグさんがマジックバッグを差し出してくる。そのせいで、僕も緊張してきた。


 ど、どうなのかな。それらしい因子はあると嬉しいけど……


 ドキドキしながら因子を確認する。そして――――


■取り込み可能な因子■

・亜空間収納(Lv5)


 あ、これっぽい……!

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