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150. ルクスたちもやってきた

 領主代行を引き受けることになったけど、正式な任命はもう少し先になるらしい。先日の面談はあくまで打診だったんだ。これからラウル様が王家の使者と話を詰めるんだって。


 さらに話がまとまったあとも、即座に任命とはならない。そもそもラウル様がラーベルラの領主になることも仮決定の段階みたい。なので、王家の使者が王都に戻って報告をし、王様が正式に認めるって手続きが必要だ。だから、もうしばらくはかかるんじゃないかって話だった。


 とはいえ、別段僕がやらなくちゃならないことはない。領主になるのはあくまでラウル様だからね。代官の任命はラウル様が比較的自由にできる。面倒な手続きとか、手配とかは全部お任せだ。基本的に僕に求められているのは住民の慰撫と邪教徒の発見だけ。それ以外の余計な負担はかけないように気遣ってくれているみたい。


 というわけで、領主代行になるための準備とかは特にない。ここ数日と同じように、ラーベルラの住人の支援と街の見回りをやっておけばいいんだって。


 できれば、一度ブルスデンに戻りたかったんだけどね。まだしばらくは街にとどまって欲しいと言われている。僕が思っている以上に、住民の不安は大きいらしい。僕が見回りしているときはそんな風に見えないけどね。でも、僕やアライグマ隊を拝んだりする人もいるから、やっぱり不安は抱えているのかも?


 一応、ルクスたちには戻るのが遅くなるって伝言は届けてもらった。オードさんたちに頼んだから間違いないと思う。順調にいけば、ブルスデンにはとっくについてるはずだし、もうそろそろ戻ってきてもいいはずだけど。


「ロイ!」


 そんなことを考えながら、ビネと一緒に街を回っていると、僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。オードさんではない。けど、とても慣れ親しんだ声だ。驚いて振り向くと、声から予想した通りの姿があった。


「ルクス!? それに、ライナとレイネも!」

「ああ、久しぶりだな。元気そうで良かった」


 ルクスはニコっと笑って、驚く僕の肩を叩く。


 たしかに久しぶりだ。と言っても、まだ一ヶ月は経ってないけどね。ただ、当初の予定からすると、かなり長引いている。これまで、ほとんど一緒に過ごしていた僕らからすると、久しぶりと言っても大袈裟じゃない。


「帰って来るの、遅いよー!」

「だから、ライナたちも来たよー!」


 双子が駆け寄ってきた。僕の服の裾を引っ張りながら、ぷくっと頬を膨らませている。でも、すぐに笑って僕の周りを楽し気にぐるぐると回りだした。


「あー、ごめんね。いろいろあって……」

「ああ、ある程度の事情は聞いてる。こっちで仕事があるんだろ? だから、みんなで引っ越すかって話になったんだ」

「えぇ、引っ越すの!?」


 ルクスが事も無げに言ったのでびっくりした。どうやら、僕が領主代行になることも聞いてるみたい。とはいえ、いきなり引っ越してくるとは思わなかったよ。


「なんだ、不満なのか?」


 そう言うルクスが不満そうに言った。もちろん、そんなことはない。だって、僕らは家族だもの。できれば、一緒に過ごしたいよ。


「そんなことはないって。でも、こっちはまだ住む場所もないんだ。不安じゃないのかなって」


 僕はまだ宿暮らしだ。生活環境も整っていない。領主代行になるんだし、住む場所くらいは用意してくれると思うけど、今のところはどうなるかもわからない。ブルスデンなら用意してもらった屋敷もあって、快適に暮らせるのに。


 でも、そんなことは些細なことだったみたい。ルクスは笑いながら言った。


「何言ってるんだよ。家があったって家族が揃ってないと意味がないだろ」

「「そうだよー」」


 ちょっと怒った様子で言うルクスたち。でも、その言葉にはじんわりと心があったかくなる。単身赴任するつもりだったけど、みんなで一緒にいられるのは素直に嬉しい。ルクスたちも同じ気持ちみたいだ。


 そうだよね。そもそも、僕らはスラムの粗末な家で過ごしていたんだし。それと比べれば安宿暮らしでも十分快適だ。それに今なら恩寵のおかげで、どうとでもなりそうだ。


「うん、そうだね。みんな、来てくれてありがとう」

「別にロイのためってわけじゃないよ。私たちみんなのためだ」

「うんうん」

「みんな一緒!」


 ライナとレイネが抱きついてきた。ルクスも巻き込んでわちゃわちゃにされる。そんな状態でもしっかり頭にしがみついていたビネが、急にぴょんと飛び降りた。


「チュウ!」

「「「チュウ!」」」


 あ、トビネズミ隊だ。ビネが隊長として挨拶してる。


「トビネズミ隊も連れて来たんだね」

「ああ。半分くらいは向こうに残ってるけどな。ネズミレースもあるし」

「あ、そうだった……」


 ルクスの言葉を聞いて、少し焦る。そういえば、ネズミレースに関してはリーヤムさんに投げっぱなしだ。やっぱり、近い内にブルスデンに戻らないと。ある程度落ち着いたら、戻ろう。


「よう、ロイ。愛されてるな」

「あ、オードさん!」


 続いてオードさんが声をかけてきた。どうやら、ルクスたちはオードさんたちと一緒にラーベルラまで来たみたい。魔法の腕前はそこらの冒険者にも負けない3人だけど、旅慣れているわけじゃないし、見た目から侮られることが多い。オードさんと一緒なら安心だ。


 オードさんにはルクスたちへの連絡と一緒に頼み事をしていたんだよね。


「例のものは運べた?」

「ああ、もちろんだ。どこに出す?」

「領主館の敷地を借りるつもりだけど……もう少し預かっといてもらえる?」

「ああ、構わないぞ」


 良かった。それなら、街の復旧も何とかなるかな。

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