表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

129/155

128. リーヤムさんの因子

 レースのことは一旦保留で、屋敷に戻ることにした。リーヤムさんも一緒だ。トビネズミレース開催にはリーヤムさんの協力が欠かせない。なので、因子操作について教えておこうと思ったんだ。


「ええと、ライナたちの“従魔応援”のことなんですが」


 話は食堂ですることにした。応接室でもいいけど、みんなで座るにはちょっと狭いからね。僕とリーヤムさんが対面に、ライネとレイネは僕の隣に座っている。ビネはテーブルの上だ。


「実は僕の付与の力って、付与術じゃないんです。因子操作という恩寵の力でして……」

「そうなんですか? でも、たしかにそう言われたほうが納得がいきますね」


 軽く説明すると、リーヤムさんは少し驚いた様子を見せたけど、すぐにそれを収めて頷いた。


「どんな恩寵なのか、もう少し詳しく聞いてもいいですか?」

「もちろんです」

「じゃあ、レイネが説明するー!」

「ライナも!」

「じゃあ、任せるよ」


 双子が説明役に立候補したので二人に任せてみることにした。身振り手振りを交えて、一生懸命説明してくれるので、リーヤムさんも微笑ましいという顔で聞いている。


「あのねー、因子をつけると、食べ物が美味しくなるんだよ」

「あまーくなるの!」


 因子に慣れ親しんでいるだけあって、双子の説明はわかりやすい。けど、食べ物に偏り過ぎじゃないかな? いや、一番実感しやすいと思うけどね。


 実際、リーヤムさんには思い当たることがあったみたい。説明を聞き終えると、大きなため息をついた。


「ロイさんのところで頂く食事がやけに美味しいと思ったら、そんなからくりが……」

「はは、そうですね。料理人のダバッグさんの腕がいいのもありますけど、因子を付与した食材も多く使ってます」

「商会で扱う商品も?」

「そうですね。そういう商品も多いです」

「なるほど……破格な力を持つ恩寵ですね」


 僕の説明に、リーヤムさんは何度も頷いている。とりあえず、因子付与については納得してもらえたみたいだ。


「因子は人にも付与できるんですね?」

「はい、人にも物にも付与できますよ。正しい対象に付与しないと効果を発揮しない因子もありますけどね」

「正しい対象……付与にも条件があるということですか?」


 リーヤムさんがそわそわしている。まぁ、聞きたいことはなんとなくわかるよ。


「条件というか……甘味アップみたいな味を変化させる因子は食べ物に付与しないと効果が出ないって程度ですね。リーヤムさんが聞きたいのは“従魔応援”のことですよね? 付与するにあたって制限は特にないと思いますよ」

「本当ですか!?」


 リーヤムさんがキラキラと目を輝かせている。なかなかの興奮ぶりだ。やはり、動物と関わる仕事をしているだけあって、従魔の能力向上には強い関心があるみたい。


「あの……もしよろしければ」


 リーヤムさんがおずおずと口を開く。控えめな言葉とは裏腹に目力が凄い。


「私にも、“従魔応援”を付与していただくことは可能でしょうか」


 やっぱり、そうくるよね。


 この展開は予想通り。彼女にはこれからトビネズミレースに協力してもらう予定だ。だったら、報酬として因子を付与するのは問題ないんじゃないかな。


「もちろんです。リーヤムさんにはお世話になってますから」


 僕の返答に、リーヤムさんの顔がぱあっと明るくなった。だけど、念のため釘は刺しておこう。


「でも、ひとつだけお願いが」

「なんでしょう?」

「因子操作のことは、他言無用でお願いします。強力な能力なので、よくない人たちに知られると面倒なことになりかねないので」

「ああ、そうですよね。わかりました。ロイさんの恩寵のことは、絶対に他言いたしません」


 リーヤムさんが真剣な顔で頷く。うん、これなら大丈夫だね。


「では、まずリーヤムさんの因子を見せてもらいますね」

「はぁ」


 早速、リーヤムさんの因子チェックをしてみよう。恩寵のウィンドウを開いて、っと。


---

リーヤム・エルフィリア

■固定因子■

・管理する者

■オリジナル因子■

・忍耐力(Lv4)

・従魔師の才能(Lv8)

■外部因子■

・なし

---


 おお、さすがサーカス団の調教師だ。高レベルの“従魔師の才能”を持っているね。動物たちが彼女に従うのも納得だ。


◆忍耐力◆

精神的な苦痛に対しての抵抗力が高まる

上昇率はレベルによる


◆従魔師の才能◆

従魔の使役・調教に対して適正を発揮する

レベルが高いほど適正が高まる


 固定因子の“管理する者”は、何かを管理する仕事に対して、有利に働くみたい。リーヤムさんはマネージャー適正も高いんだね。


「リーヤムさんの因子は、現状だとこんな感じですね」

「そうなんですか。良いのか悪いのか、わかりませんね」

「従魔師への適正は高いと思いますよ。今の仕事は天職かもしれませんね」

「そうですか」


 言葉は素っ気ないけど、リーヤムさんは少し照れたみたい。糸目なのはあいかわらずだけど、ほっぺがちょっぴり赤くなってる。


「じゃあ、今度は因子を付与しますね」

「お願いします!」


 リーヤムさんが気合十分という表情で頷く。まぁ、因子の付与に気合はいらないんだけどね。お願いは“従魔応援”だったけど、せっかくなので、おまけもつけてあげよう。


---

リーヤム・エルフィリア

■固定因子■

・管理する者

■オリジナル因子■

・忍耐力(Lv10)

・従魔師の才能(Lv10)

■外部因子■

・従魔応援(Lv10)

・溢れる生命力

・みなぎる活力

・器用な指先

・不運〈反転〉


---


 リーヤムさんは冒険者じゃないから、強さは必要ない。というわけで、日常生活で役立ちそうなものをセットしておいた。


「できましたよ」

「えぇ!? もうですか?」

「はい。因子を付与するだけなので」

「……本当にとんでもない力なんですね」


 呆れたように言うリーヤムさん。だけど、すぐに気持ちを切り替えた。というか、“従魔応援”を使いたくて、うずうずしてるみたい。


「ビネちゃん、応援してみてもいいですか?」

「チュウ? チュウ!」


 早速、ビネに応援の許可を取っている。ビネも来いとばかりに、胸を叩いた。


 部屋の中だと、土壁を壊すというわけにはいかないので、今回はジャンプ力の違いで検証してみる。


 結果――――


「チュウ?」

「うーん。効果は出てますが……ライナさんやレイネさんほどではないですね?」

「二人は一緒に応援したから二重にかかったのかな?」

「それにしても効果が弱いような……」


 リーヤムさんは間違いなく“従魔応援”を使えるようになった。けれど、効果はライナたちほど強くない。どうやら、“従魔応援”にはレベル以外にも効果に影響を与える何かがあるみたいだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ