120. 普通のガチャマシーンを作ろう
最近のGP収入を考えると、しばらくガチャをするのは難しそうだ。ルクスがあからさまに落ち込んでるのを見てると、なんとかしてあげたくなるけど……そうそう都合よくGPは手に入らないよね。
そんなことを考えながら夕食前に屋敷の食堂でぼんやり考えていると、ライナとレイネが話しかけてきた。その後ろから、ルクスもやってくる。
「「ねぇねぇ、ロイ」」
「ガチャ、おもしろいね〜」
「もっとやりたーい!」
「おいおい。ロイを困らせるんじゃないぞ」
はしゃぐ二人をルクスが窘める。けれど……
「「でも、ルクスもやりたいでしょ〜?」」
「それは……まぁ」
あっさり言い負かされてしまった。
「あはは。まぁ、楽しいもんね。とはいえ、GPがないとどうにもできないし……」
「「違うよ〜」」
僕の言葉に、ライナとレイネがふるふる首を振る。
「どういうこと?」
「GPがなくても、ガチャできるようにすればいいよ〜」
「ライナたちで作る〜」
どうやら、ライナたちは因子ガチャではなく、通常のガチャガチャを作って遊びたいみたい。たしかに、何が出るかわからないワクワクは因子ガチャでなくても、実現可能だ。二人やルクスにとって重要なのはそっちだろうしね。
「なるほど。それはいいな!」
やっぱりというか、何と言うか。ルクスはとても乗り気だ。目のキラキラがいつもの5割増しくらいになってる。
「たしかに、悪くないね」
前世にもあった、いわゆるカプセルトイってやつだ。娯楽の1つとして特区で導入するのは良いアイデアかも。
混沌神様のご機嫌を取るという意味でも悪くないね。ガチャは相当お気に入りみたいだし。
「問題はどういう形で作るか、だね」
箱にカプセルを入れて、代金と引き換えに1つ取り出してもらう形が一番簡単だ。ただ、そうなると誰か一人がずっと張り付いてないといけない。何より、自分でガチャっと回す楽しみがない。できれば、あのガチャマシーンを実現したいところだ。
『なんか楽しそうだね。どうしたの?』
「あ、リック。ちょうどいいところに」
タイミング良くリックが現れた。トールさんたちも一緒だ。
『どうしたの?』
「ガチャの機械って作れる?」
『ガチャ? 朝にロイたちがやってた、アレのことだよね?』
「そうだね。でも、今言ってるのは普通のやつだよ」
景品をカプセルに入れて、ランダムに排出する機械だと説明すると、リックはふんふんと頷く。
『まぁ、僕の星にも似たようなものはあったからだいたいわかるよ』
「リックなら筐体を作れるんじゃないかと思って」
『そりゃ、もちろんさ』
幸い、リックも興味を持ってくれたみたい。邪教徒対策も一段落したから、余裕もできたらしくて、早速取り掛かってくれるという話になった。
『あ、でも、景品はどうするの?』
「そうだね」
筐体も大事だけど、一番大事なのは景品だ。景品に魅力がなければ、誰もガチャを回そうとは思わない。いやまぁ、ルクスあたりはガチャ引くこと自体が目的化してそうだから、そうとも言い切れないけど。
あとは、魅力だけでなく用意のしやすさも重要だ。数が用意できないと、すぐ品切れになっちゃう。
けれど……そちらに関してはあっさりと問題解決した。
『それは別に大丈夫じゃない? デュプリケーターで複製すれば。筐体も1つ作れば増やせるよ』
「ああ、そうか」
あいかわらず、便利すぎるよね、マテリアルディプリケーター。魔石が無限に増やせるので、基本的には非生物なら増やしたい放題だ。
唯一の例外が貨幣やそれに類するもの。機械に貨幣判定されると増やせないんだ。まぁ、金とか銀とかの換金性の高いものは普通に増やせるから、この星だとあまり意味のない縛りだけどね……。
「じゃあ、それぞれが作って持ち寄るってことで」
「「わかったー!」」
結局、景品については、各々で用意してくることにした。お互いに何を用意するかは秘密だ。そのほうが、僕らも楽しめるからね。
「私も用意するのか?」
「まぁまぁ、いいじゃないか。難しく考える必要はないから」
景品の準備にはトールさんとキースさんにも協力してもらうことにした。キースさんは戸惑い気味だけど、トールさんは乗り気だ。せっかくだから、キャルさんたちにも声をかけてみようかな。
「何を入れようかな〜」
「楽しみー!」
「ああ、そうだな」
ルクスたちもニコニコで、とても楽しそうだ。もちろん、僕だって楽しい。評判がいいようなら、特区のあちこちに置いてみるものいいね。いや、どうせなら特区以外にも置かせてもらおうかな。
「ああ、そうだ。少額で楽しめるようにするつもりなら、あまりとんでもない物は入れるなよ?」
今後の展開を考えていると、キースさんがそう釘をさしてきた。みんなに対して言っている……と思うんだけど、なぜか僕をじっと見てるんだよね。なんでだろ?
「わかってます。みんなも、高価な物は入れないようにね?」
「「わかったー!」」
「ああ、わかった」
僕からも改めて伝えると、双子もルクスも元気よく返事をしてくれた。
これで、よしっと!
あとは景品を考えるだけだね。できるだけお金をかけないでとなると、やっぱり因子を使った何かがいいかな?
「本当にわかってるんだろうか……?」
「まぁ、そこまで無茶はしないだろ……たぶん」
トールさんたちが何か言ってる。無茶なんかしないよ、もちろんね。




