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115. リックの工房へ

 相談先として僕が思い浮かべたのはリックだ。異星の技術を持つ彼なら何かいいアイデアを持ってるんじゃないかなと思って。


 一応、午前中はお仕事なので、午後を待って会いに行く。まずは僕だけで……と思ったんだけど、キャルさんたちもついてくることになった。


 向かう先はリックのために用意した工房。まぁ、僕の屋敷の隣なんだけどね。


「こんにちは〜」

「きゅ」

「リックに会いに来たんだけど、いるかな?」

「きゅう!」


 門の前でアライグマ隊の一人が出迎えてくれる。青マフラーの警備隊の子だ。別にサボりというわけじゃないよ。ここには交代で誰かが詰めているんだよね。


 この工房には、異星の技術によって作られた道具が設置されてる。万一盗まれたら大変だから、警備は欠かせないってわけ。特区の住人に盗みを働くような人はいないと思うけど、ここ最近は外部から来る人も多いからね。念のために警備隊をつけているんだ。幸い、志願者に困ることはない。


 どうぞという仕草で奥を指す警備の子にありがとうと言って中に入る。工房と言っても、普通の家を転用しているだけだから、外観は一般住居そのものだ。だけど、中はリック好みに改装してあるから、ちょっぴり近未来的だったりする。


「おー! こんな風になってんたんだー!」

「床がテカテカしていますね。掃除はしやすそうですが」


 キャルさんは興奮気味にキョロキョロして、カトレアさんは興味深そうに床を見ている。壁も床もコーティング剤で覆ってあるから、この世界の標準的な内装とは大きく違うんだよね。前世の研究施設を彷彿とさせる感じに仕上がっている。


「きゅう?」

「ああ、うん。リックに会いに来たんだよ。今、時間は大丈夫かな?」

「きゅ!」


 またしても、アライグマ隊の子が現れた。この子はハウスキーパー隊の子だね。


 当然って顔をしてここにいるけど、工房の維持管理は彼女たちの仕事の範疇ではない。勝手にやってるんだよね。まぁ、本来の仕事を果たしている上でやってることだから別にいいんだけど。リックからの苦情もないようだし。


 ハウスキーパーの子の案内で、奥の部屋に進む。別に案内とかいらないんだけどね。まぁ、これも様式美みたいなものかな。


 進んだ先は、大きめの広間。ここがリックの研究室みたいになってる。最近はずっとここに籠もってるんだよね。


『あ、ロイ!』

「やぁ、リック。トールさんとキースさんも」


 何かの打ち合わせの最中だったのか、リックはトールさんやキースさんと頭を突き合わせていたところだった。もちろん、比喩だけど。身長が違いすぎるからね。実際には、テーブルの上に立つリックが二人を相手に何か話していたみたい。


「頼み事があって来たんだけど、出直したほうがいいかな?」

『大丈夫だよ! ちょうど話がまとまったところだから!』


 リックがニコニコ笑顔でパタパタ手を振る。トールさんも満足そうにしているから、その言葉に嘘はなさそうだ。


「もしかして、エネルギーシールドが完成したの?」

『試作品だけどね!』

「と言っても、ほぼ完成型だ。あとは細かい問題を洗い出そうって話になってる」

「へぇ」


 リックもトールさんも自信ありげだ。かなり良いものができたみたいだね。これで、滞っていた邪教徒討伐にも希望が持てるところかな。


「ところで、姫様方はどうしてこちらに?」


 やや緊張した面持ちで尋ねるのはキースさん。姫様と言うのはもちろんカトレアさんのことだ。


「キース様。何度も申し上げておりますが、私は家を捨てた身です。どうか、カトレアとお呼びください」


 当のカトレアさんはというと、塩対応だ。距離を感じさせる言葉に、キースさんが言葉を詰まらせる。


「……ぐ。いえ、そういうわけには参りません。こちらも何度も申し上げますが、姫様の籍は残されたまま。貴方は変わらず我が国の王女なのですよ」


 驚いたことに、そうらしい。本人は王家から抜けたみたいなことを言ってるけど、王様は認めていない。つまり、カトレアさんは王女様のままなんだって。トールさんやキースさんがこの街を中心に活動しているのも、それが理由みたい。いざというときの守りにってことらしいね。


「はぁ……国王陛下もいい加減に諦めればよろしいのに」

「いーじゃんいーじゃん。それでこそ、燃えるでしょー。いつか、パパリンも驚くような服を作って、カトリンが立派に服屋をやれるってことを認めさせよーよ!」

「そうですわね!」


 盛り上がるカトレアさんとキャルさん。僕としては応援したいところだけど……でも、王様も別に服屋の才能がないからって反対してるわけじゃないと思うなぁ。キースさんも渋い表情で額を押さえている。頭が痛いって顔だ。


「まぁ、それはともかく。ロイの用件はなんなんだ? 俺たちが聞いていい話か?」


 脱線した話をトールさんが戻す。おっと、そうだったそうだった。


「話を聞くのは構わないよ。ついでだから、相談に乗ってよ」


 布地の仕入れを増やしたいって話だから、別にトールさんに聞かれても構わない。三人寄れば文殊の知恵っていうくらいだし、相談先が増えるのは大歓迎だ。


 というわけで、改めて、相談内容を話したところ……


『布が欲しいの? だったら、マテリアル・ディプリケーターを使えばいいよ。あ、でも、魔石はそっちで用意してね』


 と、リックにあっさり告げられてしまった。


 マテリアルディプリケーター!

 それがあったんだった……!

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