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10. 混沌ってなんだ

 最初にGPが増えたのは、どのタイミングかいまいちわからない。前の日に見てからしばらく見てなかったからね。でも、二回目と今回は確実にルクスと話している間だ。


 共通点は……なんだろう?


 さっきは“弱視”を移し替えた直後、そして今は水の集め方を教えてあげたところだ。共通点、ある? 強いて挙げるなら、ルクスの利益になることをしたってことかな。


「ルクスルクス、肩を揉んであげようか?」

「は? なんだいきなり? 肩なんて揉んでどうするんだ?」


 おや、肩揉みをご存じない。まぁ、お子様だものね。それともこの世界にはそういう文化がないのかな?


「じゃ、何か困ってることはない?」

「特には……いや、手が痛いな。お前、なんか硬くない?」

「ああ、うん。それはごめん」


 お硬い人柄なのです。物理的に。


「結局どういうことなんだよ?」

「実はね――」


 面倒なので教えてしまおう。その方が、検証しやすいからね。


 僕の恩寵はGPというポイントで強化できること。GPの増やし方はよく分かっていないこと。ルクスとの会話で増えた可能性が高いこと。それらを説明していく。


「それで急に妙なこと言い出したのか」

「妙って……酷いな」

「でも、さすが違うんじゃないか。ロイの恩寵に俺個人が関与してるとも思えないけど」

「まぁ、そうかな……」


 ルクス個人にというよりは、他の人に何かしたらってことだとは思う。


「神様の恩寵なんだから、それに関わるものだろうな。そういえばロイは誰の恩寵を授かったんだ?」

「それは……」


 し、しまったぁ。そりゃそういう流れになるよね!


「ええと……」


 なんとか誤魔化したい……けどルクスの真剣な目を見ると、なんだかそれも悪い気がする。それに誰かに相談したい気持ちもないわけではないんだよね。


 ルクスなら受け止めてくれるんじゃないかって気持ちはある。僕の期待がそう思わせてるのか、それともルクスの人柄ゆえなのかは分からないけど……。


 ええい、言っちゃえ!

 大丈夫、ルクスは良いヤツだもの!


「……混沌神です」


 内心の勢いに反して、出てきた言葉は消え入りそうだった。それでも、しっかりとルクスには届いたみたい。その顔が豆鉄砲を食らったハトみたいになってて、なんか笑えた。


「あはは」

「笑うなよ。いや、ビックリしたぜ。もしかして、それでトンガさんに?」

「凄く殴られた。死ぬかと思った……」


 昨日のことをまだちゃんと話してなかったから、改めて話す。ルクスの眉がへにょりと下がった。


「よく生きてたな……」

「恩寵のおかげでなんとか、ね」

「へぇ。やっぱり、いい恩寵だな!」


 ルクスの顔に含むものはなさそうだ。混沌神の恩寵を授かったと聞いても僕から距離をとろうとする気配は感じられない。純粋にそう言ってくれるのが分かる。


 とても嬉しいことだけど、でも不思議だ。


「ルクスは混沌神、嫌じゃないの? なんか邪神だって言う人もいるみたいだけど……」

「いや、邪神ならさすがに神授の儀に参加はできないだろう」

「そうだけど……」

「まぁ、確かに良い噂は聞かないけどな。でも、ロイはロイだろ? お前がそいつらと同じようなことをするとは思ってないよ。さっきだって、俺のことを助けてくれた。そうだろ?」

「ルクス……」


 うぅ……なんて良いヤツなんだ!


 やっぱり世界に混沌をもたらすなんて間違ってる! ルクスがいる世界を滅茶苦茶にするなんて、許されない!


「だけど、それならなおさら分からないな。なんで、GPとかいうのが増えたんだ?」

「そうなんだよね。ウィンドウの説明によると、混沌神の使徒として相応しい働きをするとご褒美として貰えるみたいなんだけど……」

「そもそも、混沌ってなんだ……?」


 ルクスが首を傾げる。そう言えば、僕をよく考えたことなかったな。


「僕にとっては……そうだな、秩序の反対ってイメージかな。つまり、混沌神の使徒として働くというのは、秩序を破壊するってことだと思った」

「秩序……秩序か」


 ルクスが“秩序”という言葉を繰り返し呟く。そして僕を見て頷いた。


「そういうことなら、ロイは秩序を壊したのかもな」

「いつ!? 濡衣だよ!」

「落ち着けって。秩序って言うと大袈裟だな。壊したのは俺の常識だ」

「……常識かぁ」


 そう言われると、分からなくはないかな。“水霊の加護”で水を出すことはできないという常識。それを、空気中の水分を集めるという方法で打ち破ったってわけだ。


「目の方は?」

「知らないのか? 目の悪さって普通の治療魔法では治らないんだぜ」

「そうなの!?」

「そうだよ。だからほとんどの貴族だって眼鏡をかけるんだ」


 そうなんだ。いや、貴族の眼鏡事情なんて知らないよ。ルクスはよく知ってるよね。まぁ、自分の弱点を克服するために調べたのかな。


「あとは……例えば、本来は毒のないミルケ茸に毒があったりすると、常識が壊れるかもしれないな」


 ふぁ!?

 え、ちょっと待って? 僕、その話したっけ?


 ああ、でも因子のこととか全部話しちゃったもんね。そりゃ気づくか。まあ、しらばっくれるけど!


「な、なんのことかナー」

「ロイ……お前、もう少し……」


 ルクスが残念なものを見るような目を向けてくる。どうやら全然隠しきれてないみたい。自覚はあるけどね!


 でも、常識を破壊すればいいだけなら、悪いことしなくてもポイントはもらえそうだね。これなら、ちょっと希望が見えてきたかも。


 あ、もう毒は盛りませんよ。僕じゃ隠すの無理みたいだし。根本的に向いてないよね。

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