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100. 宣伝活動

 ルクスに言われた通り、ゴードンさんにサーカスの公演の誘致をしたと伝え、担当者が来たら良いように取り計らって欲しいとお願いしておいた。僕が対応してもいいんだけど、具体的な手続きとかはよくわからないから、それなら最初から任せたほうがいいかなと思って丸投げだ。


 リーヤムさんは日を置かず、行政府に興行の申請をしにきたみたいで、数日後にはサーカス開催の予定が組まれた。あまりの早さに驚いたんだけど、「トップが積極的で準備もほぼ終わってるような状況だったんだから当たり前だろ」とルクスには呆れられてしまった。それでも実務とかいろいろあると思ったんだけどね。区長の権限ってやっぱり大きいんだなぁと自覚させられたよ。


 というわけで、従魔隊とデルグサーカス団の共同公演は開発特区で初公演をやることになった。せっかくだから、たくさんの人に来て欲しいよね。特区の住人は無料で入れるようにするつもりだ。正確には、ロルレビラ商会が肩代わりする形。彼らにはまだ自由に使えるお金がないからね。そろそろ住人にも給料を支給しないとなぁ。


 おっとと。考えることがたくさんあるけど、今はサーカスの成功を目指して頑張らないと。というわけで、今日は宣伝活動をやるつもり。開催まで日がないから周知が行き届かないかもしれないけど、やらないよりはマシだからね。


「じゃあ、出発だよ!」

「「「チュウ!」」」

「「「きゅう!」」」


 急遽結成されたサーカス宣伝隊。僕らの家から出発して特区を中心に、それ以外の区にも足を伸ばす予定だ。メンバーは僕とルクス、ライナとレイネにビネ、あとはサーカス隊を中心とした従魔たち。結構な大所帯だから目を引くのは間違いない。


「みんなー、特区でサーカスをやるよー!」

「特区の住人は無料だ! ぜひ、見に来てくれ!」


 声を出してお知らせするのが僕とルクスの役割。本当はちらしでも作って配りたかったんだけど、紙は高級品だからさすがに無理だった。それに文字を読めない住人が多いから、内容もどうするかって問題もある。そんなわけで断念したんだよね。


 うーん、紙か。本を作るにも必要だし、ぜひ欲しいよね。次はその方向で考えてみるのもいいかも。


 ライナとレイネはギタラの演奏で人々の注意を引く係だ。因子のおかげもあるけど、練習にも積極的だからかなり上達している。


 従魔隊はビネの合図で、あっちに手を振りこっちに手を振りで愛嬌を振りまく。今日はあくまで宣伝だから派手な曲芸は見せないけど、ときどきサービスで宙返りを見せたりとアピールに余念がない。こんなの絶対に本番も見たくなっちゃうよ。


「区長、面白そうだな!」


 多くの人は遠巻きに見てるだけなんだけど、一人の少年が近づいて声をかけてくれた。楽隊を率いているリーダーのグレンだ。


「そうでしょ。従魔たちも張り切ってるからきっと凄いサーカスになると思うよ。グレンもぜひ見に来てよね」

「そりゃ、もちろん行くさ! サーカスが無料で見れる機会なんて普通はないからな。みんな楽しみにしてると思うぞ」


 グレンがニコニコ笑顔で頷いてくれる。


「ただ、俺が言いたいことはそうじゃないんだ。面白そうだって思ったのは、このパレードだよ」


 そう言うと、グレンは僕らの先頭の僕から後方の従魔隊まで視線を移動させる。


 なるほどね。パレードというほど大規模ではないけど、ちょっとした行進にはなってるかも。


 そこまで考えて気がついた。グレンの目が楽しそうに輝いていることに。ひょっとして、混ざりたいのかな?


「グレンもやるー?」

「みんなで弾こうよー!」


 僕が何か言う前に、ライナとレイネが声をかけた。楽隊と一緒に練習をするから、二人はグレンと親しいからね。


 声をかけられたグレンも一層笑顔を深めて頷いた。


「ああ、俺もやる! というか、他のヤツらも連れてきてもいいか? せっかく練習してきたからな。どこかで披露する機会が欲しいんだ」

 

 双子に返事をしたあと、グレンは僕に許可を求める。楽隊として、この宣伝隊に加わりたいってことかな?


 現在、ロルレビラ商会の楽隊として活動しているのは子どもたちが30人くらい。ときどき冒険者ギルドからの依頼を受けて演奏会をしているけど、全員が参加するわけじゃないものね。これも良い機会なのかも。


「でも、行進ながらの演奏になるよ。演奏会をするなら、また後日、どこかの建物を借りてもいいけど」


 今日の目的はあくまでサーカスの周知だ。多くの人に知ってもらうために、移動しながら宣伝することになる。立ち止まって演奏するのとはまた違った難しさがあるんじゃないかなと思ったけど――――


「ははは、任せろよ。こんなこともあろうかと、行進の練習もしてるぜ!」


 いつの間にか行進の練習もしていたみたい。それなら、問題ないかな。


「じゃあ、どこかで合流しようか」

「いや、適当に進んでてくれ。各々楽器を持って集合するように言っとくから」

「そう? そういうことならわかったよ」

「おう! じゃあ、声をかけてくるぜ!」


 そう言うとグレンはタタタと駆けていった。


 それから僕らは特区も抜けて、ブルスデンの街を練り歩いた。少しずつ合流していく楽隊のメンバー。それに触発されたのか、呼び込みを手伝ってくれる区民も現れた。サーカス隊以外の従魔たちもほぼ全員が合流して、いつの前にか結構大規模なパレードになっちゃった。


 見ている人たちも大興奮だ。道行く人たちが足を止めて声援をくれるものだから、大通りが大渋滞になって結構な大騒ぎになった。こういうことをするなら事前に知らせておいてくださいと衛兵さんに怒られちゃったよ。でも、その衛兵さんも去り際に“楽しみにしてます”って言ってくれたけどね。


 いろいろ想定外だったけど、宣伝効果はばっちりだ。サーカスはきっと盛り上がるぞ!

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