Interlude-2:とある新緑の季節の地研部室
『紫水、ちょっといいか? ............おーい、紫水ー?』
僅か数十センチの距離にもかかわらず呼びかけに応答しない女子生徒に対して、男子生徒は呆れ顔を浮かべながら再び呼びかける。......しかし、彼女はやはりどこ吹く風という顔をしながら■を読み続けた。
仕方がないといった様子で、男子生徒は彼女と■の間で手を広げ、ぶんぶんと振る。そこまですると、ようやく女子生徒は男子生徒の呼びかけに気が付いた。
『......はっ、すみません先輩。何かご用でしたか?』
『いや、今度地研のメンバーで飯に行こうって要さんが言うから、紫水はどこがいいかなあって』
『私は......どこでもいいですよ。先輩たちとのご飯なら』
『そう言ってもらえるのはとても嬉しいんだが、今回のは紫水の歓迎会も含めてって感じだからな。.........まあ、別に急ぎってわけでもないから、ゆっくり考えてもらったらいいよ』
『え、そうだったんですか? とても嬉しいです。また考えておきますね』
そう言いながら、女子生徒は仄かに笑みを浮かべた。
『......それにしても、お前って本当に■が好きだよなあ』
男子生徒が呆れ半分にそう告げると、彼女は意外そうな顔を浮かべた。どうやら自覚は無いようだ。特に嫌な顔をするわけではないが、どこか引っかかることがあるのか、彼女はそれに対して反論する。
『普通の趣味の範疇だと思いますけど』
『え、あれでか?』
男子生徒は先ほどの光景を思い出しながら苦笑する。
彼女はそこから■が『本当に好き』と言われている由縁を察し、少し言葉を付け加える。
『.........多分、それは■に限らないと思います。私、何かに集中すると周りが見えなくなっちゃうきらいがあるので。中学生の時も部活に熱中してはよく言われてました』
『へえ、そうだったのか。.........そういえば、紫水は中学の頃何の部活に入ってたんだ?』
『何だと思います?』
『ううむ、聞いておいてなんだが、まったく想像がつかないな.........何かヒントはないか?』
『ヒントですか? そうですね......じゃあ、『校内では行わない部活』です』
『ほう、ということは文化部ではないんだな?』
『さあ、どうでしょう? ふふ』
諸事情により二人のみが着席する部室。そのような他愛もない会話をしているうちに、やがて日は暮れていった。




