Interlude-1:とある春の日の地研部室
『入部したい.........え、うちに?』
煌々と眩しい西日が差し込む古びた一教室で、女子生徒から一枚の紙を受け取った男子生徒がその内容を一瞥すると、その部屋の入り口付近に立つ女子生徒に向かって、明らかに困惑した様子でそう問いかけた。
『はい! 入部希望です。.........あ、もしかしてもう締め切ってたりしますか?』
『いやいや! そういう訳じゃあないんだけどね。むしろここが賑やかになるならいつでも大歓迎! って感じなんだけど.........』
男子生徒はそう言いながらも、懐疑的な眼を消すことはしなかった。数秒後、再び口を開く。
『......他の部活の見学とかは行ったの?』
『行きました。ソフトテニス部、茶道部、漫研、軽音部。そして、ここです』
彼女は視線をやや上に向け、何かを思い出すようにしながら答えた。その返答によって、男子生徒の頭上に浮かぶ疑問符はさらに増える。
『それでうちに?』
『はい、そうです』
『へえ、変り者もいたもんだ。......あの、答えにくかったら別にいいんだけどさ、その、地研に入ろうと思った理由とかを聞いてもいいかな?』
『あー......そうですね、例えば——』
そう女子生徒が何かを言いかけた瞬間、先ほどまでぴっちりと閉じられていた戸が、木と木が擦れ合う音を立てながら大胆に開いた。それとほぼ同時に、限りなく黒に近い焦げ茶色の長髪を有したほわほわとした女子高生が、あまりその容姿には似つかわしくない教室へと慣れた足取りで入り込んでくる。
そして、戸の前に立っている女子生徒を発見するや否や、ぱあっと笑顔を咲かせながらその生徒に声を掛けた。
『あっ、蘭ちゃんだ。また来てくれたの? 嬉しいっ!』
それを受け彼女は、ほわほわとした女子生徒の言葉に返答する前に、先ほどから溜めていた言葉を男子生徒に向かって告げる。
『——例えば、このような楽し気な雰囲気に惹かれたのかもしれません』
その際に彼女が浮かべた笑みは、今日一番に柔らかな笑みであった。
『......そっか。それなら君は、確かにうちが合っているかもしれないね』
男子生徒はどこか納得したような風に言う。
『そう、ですかね? それじゃあそれは......』
彼女は、入室すると同時に手渡した入部届けを指さす。
『ああ、勿論受理するよ。......ええと、それじゃあ紫水さん。これからよろしくね』
『......はいっ』




