普洱茶
カラランと扉が音を立てて閉まる。
私はお辞儀をして丸めた背を戻して静寂に包まれた店内を見渡す。
1人ぽつんと、詰めの作業に戻る。
袋詰めの終わった茶葉を棚に置く、やっと今日の仕事がひと段落した…
小華は窓辺の椅子に座って目の前に急須を置く
カッパっと蓋を開けるとお茶の独特の渋い匂いがする
茶葉を少し取り、急須に入れ、熱湯を注ぐ
シンプルな作業だが、奥が深い
~~の道など云われるが、茶はまさにそれだ
東洋の抹茶だけが茶道では無いと私は思う
なんたって、温度、高さ、入れ方、全てで味が変わる
千変万化、こんなにこの言葉がふさわしいものが他の何にあるのだろうか
茶葉屋の私が言うのもおこがましいが、ないと思う
私は茶を愛してる
おっと、いけない
そろそろ飲んで、次の作業の準備をしないと……
一口、茶を含む
うん!いい香り、それにいい喉越し、
体が温まって、力が抜けていくようだ
それから、私はお茶を飲み終えると店の掃除を始めた。
(おや、外が暗くなってきたそろそろ閉店かな?)
カランカラン
と、店の鈴がなる、お客さんだ
「いらっしゃいませ、棚にある商品は自由に見てもらっていいですよ」
お客さんは軽く会釈をしてくれると、棚の方に向かってくれた。
(見たところ、茶色のコートに、帽子、老紳士のような方だ…今は、まだ秋にもなっていないのに少し厚手にも見える)
そんなことを思うと、私は掃除にもどる
お客さんの居る反対側の棚を拭き、ついでに、窓も拭く
かれこれ5分程度経つ頃に声をかけられた
「お嬢さん、すいません」
小華は布巾を急いでしまうと
「はい、なんでしょうか?」とお客さんの方へと向かう
老紳士は恥ずかしそうに
「あの、冷え性に効くのはどれになりますか?」
「あ、冷え性ですね、なら」
よっと、と小華は手を伸ばして、棚からひとつの袋を取り出した。
「これは、何茶ですか?」
老紳士は興味深そうに尋ねると
「普洱茶(プーアル茶)ですね、冷え性にはよく効くんですよ!あ、でも寝る前とかには控えてくださいね、覚醒作用があるので睡眠には良くはありませんので」
(やっぱり、説明用のポップは作った方がいいのか?そういうのは苦手なんだけどなぁ)
小華がそんなことを考えていると
老紳士が手渡された袋を何回か回して見て
「すいません、私こうゆうのには疎くて、、」
「いえいえ、説明も私の仕事ですので」
謙虚な人だなと思う…
その後、老紳士は会計を済まして、帰って行った
最後の最後まで、お礼を言って帰ったので、本当に人ができている。
「あー」と声を出して、小華は背伸びをすると
「あ、そろそろ閉店しないとな」
ドアを開けて、外の看板を一回転
“本日の営業は終了しました“
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第三話予告「白茶」
上げ直しました