ダージリン
西洋と東洋が混ざり合う街の表通りから一歩曲がりこんだ、裏通りに店はある。
カラン、カラン
と、来店を告げる鈴の音は店内に響く。小さな窓は植木に隠されていたが、隙間から陽光が差し込んでいる。
「いらっしゃいませ!」
店の奥から静寂を散らすように声が届く。どうやら店員のようだ。
僕はまっすぐ進み、左に曲がり、茶葉が何種も置かれているカウンターの前まで行くと店員に声をかけた。
「すいません、少し聞きたいことがあるのですが」
カコッ 店員は作業をする手を止めて顔を上げた。
「なんでしょうか?茶のことでしたら伺いますよ」
店員は続けて
「当店は店主の趣味で、世界中から集められた茶葉を取り揃えております。きっとご入用の品を提供できます」
先程の冷静な雰囲気とは少し変わり、店員は快活に話し始めた。
店員が次の言葉を発しそうな時、僕は続けさせれば終わりはないと考え、言葉を遮った。
「もし、紅茶を」
「すいません!えーと、あの、」
「あ、申し訳ございません。私、茶葉のことになるとついつい少し話しすぎてしまうのです。ご入用は、どちらの品ですか?」
(少しではないだろう)と内心ではツッコミを入れたいが、顔を出さないように注意しながら僕は店員に問う。
「最近疲れ気味でして、あまり夜も眠れずにいるのです、なのでそれに効くものを頂きたくて...」
店員は小さく頷くと「なるほど、わかりました。少しお待ちください」と言うとカウンターの奥にある棚から瓶を取り出した。そして、小袋に茶葉を詰めていく...詰め終わると封をして小袋を私の前に差し出した。
「こちらは、ダージリンになります。カフェインを含まず疲労改善やリラックス効果があります。現在、世界各地で栽培されておりますがこちらは正真正銘のインド、ダージリン地方で採れた品になります。」
エッヘンと胸を張るとまでは言わないが店員はどこか誇らしげそうにしていた。
会計を済ませ、背を向けると店員に声をかけられた。
「お茶は万能ではありませんから、改善しない場合は病院に行ってくださいね」
僕は軽く会釈だけすると店の外に出た。
いい店だったな
高い建物に遮られた陽の光は裏路地には当たらない、しかし、その店は決して暗くは見えなかった。
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