表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不承転生者の魔法学園生活  作者: ウバ クロネ
【第2章】目指せ! オフィーリア魔法学園本校
58/325

2−17 目標、捕捉したり

(ゔぅ……今日も色々とてんこ盛りだった気がするわー……)


 心迷宮の波及効果について、教えてもらえたまでは良かったが。先生達のご鞭撻と作戦会議に熱が入りすぎたあまり、すっかり遅くなってしまった。またしても、ミアレットの頭脳はキャパオーバーである。

 そんなミアレットが我が家でもある孤児院へ帰宅したのは、夕刻を迎えてから。ハーヴェンとマモンはミアレットを孤児院まで送り届けた後は、それぞれのご家庭へと帰って行ったが……明日からは通常業務に戻るため、深魔の発生調査や調伏等で各地を回る予定なのだとか。しかも、セドリックの行方を探しながらともなれば、彼らも相当に忙しくなりそうだ。


(次に会うのは、本校の入学式だろう……かぁ)


 しかしながら、既に本校へ登学するのも確実とされている以上に、特殊祓魔師の候補生として期待されている事が、ミアレットとしては非常に気分が重い。生前は特に期待もされない人生を送って来た手前、こうして期待されまくると……却って肩身が狭く感じるのだから、不思議なものだ。


「ただいま戻りました〜……」


 それでも、エルシャと一緒に頑張ると約束したし……と、ズシリとのしかかる先生達の期待も、ようよう受け流し。ミアレットが食堂に顔を出すと……そこにはアーニャとティデルだけではなく、懐かしい顔ぶれまで揃っていた。


「お帰りなさい、ミアちゃん」

「あっ! アレイル先生、お久しぶりです。今日はこっちに帰って来てたんですね」


 母親譲りの艶やかな金髪を揺らし、ミアレットに微笑むのはアレイル。悪魔と人間のハーフである。彼女は生まれも育ちもカーヴェラであったが、特殊祓魔師に認定されてからは諸事情により、クージェ分校の校長として派遣されている。そして、クージェ分校のお仕事がひと段落すると、こうしてカーヴェラに帰ってくるのだが……。


「と、言うことは……クージェ側は選考試験、終わったんですか?」

「えぇ、なんとかね。今年は18人を本校へ送り出せそうなんだけど……更に1人を特例措置で出すことになったから、ちょっと心配なのよねぇ……」

「特例措置……?」

「あー、さっきの面倒な坊ちゃんの話?」

「そうそう。それですわ、ティデル様」


 そんなことをアレイルと話していると、ティデルが人数分のお茶を運んできつつ、話に混ざってくる。困ったもんだと肩を竦めては、アレイルを労うのだから……「例の面倒な坊ちゃん」は相当の問題児のようだ。


「そいつもガルシェッド出身、だったっけ? 確か、アレイルが泣く泣くクージェへ行かされているのも、ガルシェッド家のせいだったわよね?」

「そうなのです……。クージェ出身なんだから、グロウルが向こうの校長をやってくれれば良かったのに。彼にはクージェの校長は務まらないという判断になったそうで……」


 アレイルの話を要約するに……グロウル校長先生は魔術師としてはそれなりに優秀でも、古来から実力至上主義社会を貫いてきたクージェ帝国の分校に据えるには、やや実力不足が目立つらしい。それでなくとも、クージェ分校に集まる生徒は他の拠点の生徒と比較しても、圧倒的に魔力適性が高い者が多いのが特徴で……先生より魔法を上手く扱えてしまう生徒もいたりする。そして、自分よりレベルの低い教師の言うことは聞かず、反抗的な行動に出る者も少なくないそうな。


(だからアレイル先生が遥々、帝国まで行っているのかぁ……)


 アレイルであれば、カーヴェラへ帰ってくるのも容易いだろう。しかしながら、クージェ分校は生徒の素質が高いばかりではなく、人数も多い。その上で、教師の数も多いので……校長であるアレイルは生徒の管理に加え、教師の統率までしなければいけないこともあり、なかなかに多忙を極めている。故に、彼女がこうしてカーヴェラに帰ってくるのは、数ヶ月に数日程度になってしまっている。


「とは言え、そのお坊っちゃまは養子なので、厳密にはガルシェッド家出身ではないのですけれど」

「あ、そうなの?」

「はい。神の御子として、ガルシェッド家に女神様から預けられた経緯があるそうでして。それで、彼も魔力適性だけは本当に高いんです。だけど、妙に自意識過剰と申しますか……変な妄想癖があるようで、女性に対する距離感が非常に近くて。ですから……私も含め、女生徒や教員達も色々と困惑しております……」

「……」


 なんだろう。何かが、ビビッと来たぞ?

 ミアレットはアレイルがため息と一緒に吐き出した、苦労話に耳を傾けるが……例のお坊っちゃまのディテールが、見ず知らずのとある知り合いに近しい気がすると、嫌な予感を募らせる。


(……もしかして、彼が……)


 マイを異世界転生に巻き込んだ元凶・ユウトだろうか?


「あの……アレイル先生。もしかして、その子……炎属性だったりします?」

「あら? よく知っていたわね、ミアちゃん。その通り、イグノ・ガルシェッド君は炎属性ですが……まぁ、縁組上はグロウル先生の甥っ子になりますからね。もしかして、カーヴェラでも噂になっていたかしら?」

「い、いえ……そういうワケじゃないんですけど……」


 今の彼はイグノ・ガルシェッドと言うらしい。しかも、アレイルの話を聞けば聞くほど、疑念が確信に変わっていくのに……ミアレットは俄かに頭痛を覚えた。

 初歩的な攻撃魔法しか使えないのに、根拠のない有り余りまくった自信。自分さえ良ければ他はどうでもいいと言う、自己中心的過ぎる思想。その上、例の視察でクージェを訪れていたハーヴェンにまで食ってかかっては……本校への登学を別方向からもぎ取ったと言うのだから、色々な意味で恐ろしい。

 ……目標、捕捉したり。彼こそがミアレット……こと、マイがぶっ飛ばすと心に決めた仇敵・ユウトに違いない。


(この恨み、晴らさでおくべきか……! ここで会ったが、12年目……!)


 こうなったら、何がなんでも本校に登学して、キャツにギャフンと言わさなければ。ライブをお預けにされたマイの恨みは、深淵のそれを思わせる程に深いのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ