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不承転生者の魔法学園生活  作者: ウバ クロネ
【第1.5章】イグノ君は問題児
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1.5−4 戦場では力こそが正義!

 卑怯な試験で、俺は見事に不合格を喰らってしまったが……そもそも、ハーヴェンとやらが俺を認めないのが悪い。……くぅぅ! 天才は時として、不遇な扱いを受けるものなのか……!


「いやいや。違うよ、イグノ君。俺達は別に、君を陥れようとした訳じゃなくて……。あと、アレイルとの恋路って何⁇」


 情けなく言い訳をするなんて、言語道断! それに……そんな事も分からないのか? 俺には将来、アレイル先生を囲う予定があるんだ。今からハーレムイベントを進めるつもりなんだから、邪魔しないでくれ。


(……な、なぁ、アレイル。もしかして、イグノ君って、ちょっと不思議な世界観をお持ちだったりする?)

(もしかしなくても、妄想が激しい部分があります。……時折、不穏な言葉を呟いていると、クラスメイト達からも気味悪がられていまして。……先日、彼のペアになってくれたラファール君だって、仕方なく彼と組んでくれていたのです……。因みに、イグノ君の言う恋路とやらは事実無根です。妄想の産物ですから)

(そ、そうか……。しかし、どうしたもんかなぁ……)


 くっ……! この期に及んで、まだ俺の心象を悪くしようと、裏工作をするつもりなのか⁉︎ アレイル先生もそんな奴の内緒話、聞く必要ないと言うのに!


「えっと……イグノ君」

「……なんですか?」

「一応、言い訳をしておくと……さっきの試験は、君達本来の判断傾向を知るために、敢えて細かい説明をしていないんだよ」

「それ、どういう意味ですか? ただの意地悪ですよね?」

「違う、違う。そうじゃない。実戦では敵か味方かなんて、色分けされていないからな。そんな戦場に行くかも知れない、みんなの判断能力も含めて……魔法の的確なコントロールができそうかどうかを確認するのが、この試験の狙いなんだ。もちろん、みんなはまだまだ駆け出しの魔法使い。最初から完璧にできる必要はない。みんながどう考えて、どう動くか。その傾向から、特殊祓魔師への適性を図るためのものだったんだよ」

「はぁッ? だから、なんだと言うんですか? 実戦で、そんな悠長なことを言ってられるとでも⁉︎ 攻撃魔法を避けられない方が悪い!」

「あっ、そうなるか……」


 はい、論破〜! 戦場では力こそが正義! 俺だけ活躍できれば、他のモブなんて関係ねぇ!


(これは……ちょっと、不味い傾向かもなぁ……)

(と、おっしゃると?)

(攻撃魔法を避けられない方が悪いだなんて、かなりの危険思想だ。きちんと見守っていないと、他の生徒に危害が及ぶかも知れない……)

(なるほど……。そういう見方も成り立つのですね……)

(悪いことに、彼の魔法は威力だけは冗談抜きで申し分ない。このまま暴発されて、変な魔法を拵えられて……分校ごと吹っ飛ばされても、敵わないぞ)


 いや、だから! いちいち、アレイル先生に助けを求めるなよ! みみっちぃ男だな!


「……よし、分かった。今回は特別に……特殊祓魔師権限で、君を本校に迎えることにするよ」

「フッ……最初から、そうすればいいんです! ようやく俺の実力を認める気になりましたか?」

「いいや。これまた、そうじゃない」

「へっ?」

「君をこのままにしておくワケにはいかないと、判断しただけだ。攻撃魔法を避けられない方が悪いだなんて、ただの思い上がりでしかない。魔法のコントロールができていない証拠でもあるだろうし……何より、他の生徒に危害が及ぶ可能性は潰しておかないと。だからこそ、君には本校に来てもらう。……招待じゃなく、監視する意味でな」


 それ、完全に犯罪者扱いじゃないか。俺は何も、間違った事は言っていないぞ⁉︎


「あぁ、そんなに怖い顔するなよ。別に、自由を制限するつもりはないし。純粋に、君を観察対象にするだけさ」


 ……なんだ、そういう事か。つまりこいつは……ストレートに俺の実力を認めたくないから、上から目線で「本校に迎える」なんて言ってくれちゃってるのか。つくづく、根性が腐ってやがる。これは……何がなんでも、俺が成敗しないといけないな!


「いいのですか、ハーヴェン様」

「うん、構わない。マナ様やシルヴィアも、変な噂を聞いているって、しこたま心配していたし……なんか、妙に責任を感じているみたいだったし。イグノ君は俺達で預かった方が、良さそうだ」

「承知しました。でしたら……彼の養家には、私から事情を説明しておきます。本当に何から何まで、ご迷惑をおかけ致しまして、申し訳ありません……」

「ハハ……それこそ、気にしないで。むしろ、俺の方こそ勝手な事をしてゴメンな」

「いいえ、滅相もございませんわ!」


 うぉぉぉぉ⁉︎ フルフルとお顔とお胸を揺らすアレイル先生、メッチャ萌ぇぇぇッ! クッ……相手が俺じゃないのが、本当に残念だ。それに……。


(このまま引き下がったら、俺のイメージはダウンしたままじゃないか! こうなったら……!)


 実力行使あるのみ。今すぐここで、不正魔術師を成敗仕る!


「ところで、ハーヴェン先生!」

「うん? 何かな、イグノ君」

「俺との勝負はしてもらえないんですか⁉︎」

「えっ……まだ、そんな事を言っているのか……? いや、レベルが違い過ぎるし……今は嫁さんもいないから、回復手段もないし……」


 やはり……こいつは弱いクセに、威張っているだけなんだな……! これは何が何でも、俺が懲らしめてやらねば!


「……そこまで言うのでしたら、いいではありませんか。実力の差を見せつけておいた方が、向こうでも言う事を聞くのでは?」


 流石はアレイル先生。分かっているじゃないか〜。フフッ、そんなに俺の実力を見たいのかい?


「う〜ん、それもそうかも知れないが……。生徒相手に魔法を使うのはちょっと、なぁ。……あっ、そうだ。そういう事だったら、俺は補助魔法のみでお相手しようかな」

「はぁっ?」


 何を言っているんだ、コイツ? まさか、舐めプのつもりか?


「フン……後悔しても知らないからな!」

「お、おぅ……」


 悠々と定位置に着く俺と、スゴスゴと定位置に着くハーヴェン。この時点で、決着は見えている気がするが。フッ……今一度、見せてやろうじゃないか! 俺の華麗な炎魔法を!


「先手必勝ッ! 紅蓮の炎を留め放たん、魔弾を解き放てッ! 喰らえ、ファイアボール……ありったけだッ!」

「清廉の流れを従え、我が手に集え。その身を封じん、アクアバインド!」

「なっ、なん……だと……?」


 ……これは、何の間違いだ……? たった1本の水柱で、俺の魔弾を全部(多分、5個くらいはあると思うんだが)受け止めただと……? しかも……包み込まれた俺の魔法は、その場でシュルシュルと消えていくんだが……?


「クッ……まだまだ! 紅蓮の炎を留め、放たんッ! 魔弾を解き放てッ‼︎ ファイアボール……全部乗せッ!」

「北風の息吹よ吹き荒れよ、白銀の大地に抱かれよ……フリージングダスト!」

「……⁉︎」


 ちょっと待て。こんな魔法……俺は知らないぞ⁉︎

 見れば、俺のファイアボールは奴の魔法で氷漬けにされているじゃないか。なんで、炎を氷漬けにできるんだよ⁉︎ ポケット的なモンスターの世界だったら、炎タイプは氷タイプに強いはずなのに!


「くぅぅぅ! 次こそはッ! 紅蓮の炎を留め! 放たんッ! 魔弾を解き放てッ、ファイアボール……あれっ?」

「魔力切れみたいだな。それ以上は無理しない方がいいと思うぞ。それで……うん。やっぱり、威力だけは文句なしに合格だろうなぁ。……ちょっと荒削り過ぎるけど」

「……クソ……ッ!」


 まさか……俺の攻撃魔法が補助魔法で完封されるなんて……!


(そ、そうか! こいつも、チート使いか⁉︎)


 そうだ、そうに違いない! この神に選ばれし俺を負かすなんて……同じチート使いにしかできないはずだ! だったら本校に行って、こいつのチートを横取りしてやる! それで……最強に上り詰め、夢のハーレムライフを満喫するのだ! デュフフフ……! こうなれば、本校でも大暴れするしかないな! やってやるぜ!

【登場人物紹介】

・ラファール・ストラート(地属性)

オフィーリア魔法学園・クージェ分校に通う生徒。18歳。

クージェ帝国の貴族・ストラート侯爵家の次男で、ややおっとりした優しい男子生徒。

防御魔法を得意としており、クージェ分校でも1・2を争う優等生でもある。

選考試験のペアがなかなか決まらないイグノの様子を見かねて、彼と組んでくれていた。


【魔法説明】

・フリージングダスト(水属性/中級・補助魔法)

「北風の息吹よ吹き荒れよ 白銀の大地に抱かれよ フリージングダスト」


空気中の水分を急激に冷やし、一定範囲の対象を凍結させる補助魔法。

相手を凍結させて動きを封じるだけの魔法ではあるが、付随効果として「凍傷」のステータス異常をもたらすことがある。

一口に凍らせると言っても、対象の質量に対する水分量、対象との距離や場の天気や気温などの影響も考慮しなければならず、錬成の段階でしっかりと状況判断ができなければ効果が発揮されない。

魔力消費量から中級魔法に属しているが、構築難易度は高めで、やや上級者向けの魔法である。


【補足】

・ステータス異常:「凍傷」

氷結系の魔法によって、身体機能が損なわれるバッドステータス。

皮膚が強い冷気に晒され、一時的に組織障害を起こした状態であり、行動速度の鈍化・命中率低下とスリップダメージが加わる。

アイテム「ホットペースト」を使う他、炎属性の魔法を受ける、温暖な環境へ移動する等で自然回復する。


・ムラサキダルマ

冷涼な湿地帯に群生する、魔法植物の一種。

雪が降る時期に開花し、紫色の花托を発熱させることで特有の匂いを拡散、冬に貴重な昆虫を独占し、受粉の可能性を高めていると考えられている。

座禅草が魔力を吸うことによって発生した亜種であり、非常に貴重な湿性植物。

開花と同時に悪臭を撒き散らすため、発見自体は比較的容易であるが……反面、採集はかなりの苦行でもある。


【道具紹介】

・ホットペースト

バッドステータス「凍傷」を回復するための、塗り薬。

熱を帯びる魔法植物・「ムラサキダルマ」を煮詰めたエキスを配合しており、植物特有の匂いを封じるために分厚いガラス瓶に詰められた状態で売られている。

紫色が濃い程効果が優れた高級品とされるが、ムラサキダルマ特有の悪臭も強くなるため、使う際にはちょっとした覚悟が必要。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんていうかダメダメな勘違い君なんだけど、セドリックに比べてユウトが憎めないのは「悪いやつじゃなさそう」だからなんだろうな。 あ、あと私が直接被害を受けてないから。(笑) キャラクターの対…
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