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不承転生者の魔法学園生活  作者: ウバ クロネ
【第1.5章】イグノ君は問題児
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1.5−2 マジカル的なプレミアム感

 ムゥ……なんだか、おかしいぞ? この俺こそは……生まれながらにして、七色の才能を持つ天才ではなかったのか?


 帝王の親戚だという、ガルシェッド公爵家に預けられ。俺は「イグノ・ガルシェッド」として、異世界ライフを送ることになった。

 正直な話……今までの人生自体は、恐ろしい程に順風満帆。赤い髪に深い青の瞳で、見た目もラグジュアリィ・チャーミング。ハッキリ言って、俺史上最高にイケている! だが……しかし! 足りないのだよ、マジカル的なプレミアム感が! このままでは、ただ麗しいだけの貴公子になってしまう!


(嘘、だろう……? 魔法が冗談抜きで使えない……?)


 そのことに気づいたのは、こっちの世界で5歳になった時。俺には確かに、類稀なる才能と魔力が備わっているのは間違いない。そんでもって、引きこもってた間に培ったファンタジー知識だって、バッチリだ。なのに……本当に使えないんだ、この世界の魔法が。いくら「ファイア!」って叫んでも、火の粉1つ出ないんだよ。これじゃぁ、全属性どころか、炎属性さえまともに操れないじゃないか!


(クソゥ……もしかして、本当に……)


 努力しないと、いけないのか? チートを授かりし、選ばれた俺に? 努力をしろと……?

 そんなバカな! ここはテンプレファンタジーの世界のはずなのに! 俺のチート無双はどこにある⁉︎ 俺のハーレムライフはどこにあるんだ⁉︎ どこを探しても、そんなものは1つもないッ! なんなんだ、この転生者に全くもって優しくない世界は⁉︎ 転生者の俺だけにはちゃんと、楽させてくれよ!


 俺が暮らすことになった「クージェ」は、古くから実力至上主義の帝国だったらしい。いくら帝王の親戚と言えど、実力がなければ帝位を継承することはできないそうで……。しかも、場合によっては平民であっても実力があれば帝王にのし上がれるとかで、とってもロマン溢れるお国柄っぽんだが。……既に地位がある俺からすれば、これ程までに小癪な制度もない! クソッ! どこまで俺に都合が悪くできてるんだ、この世界は⁉︎


 ……だが、いつまでも「無能のまま」でいられる程、この世界はやっぱり甘くなかった。冗談抜きで「魔力だけじゃ魔法が使えない」と分かった以上、最低限の努力はしないと見限られてしまう。……努力と労働はしたら負けだと思ってたのに。このままじゃまずいと、俺は仕方なしにちょっとだけ努力をすることにした。


(デュフ! 心配して損したな! この世界では……想像力こそが、正義! チョロい、チョロい!)


 結果として、発動のコツさえ掴んでしまえば、意外とスムーズに攻撃魔法が使えることも分かった。魔法を使うには「構築概念」を知っている必要がある……なーんて、家庭教師にも言われてたけど。要は、その魔法が「どんな魔法か」をイメージできるかどうかが、キモだったようで。「ズバババッ!」と、俺が格好良く炎を出す姿を想像したら……展開と同時に、アッサリとデカい火の玉が飛び出したんだよ。いやぁ……最初は、マジでたまげたぜ。初っ端から、特大ファイアボールが出るんだもん。俺って……やっぱ、天才?


(ま、まぁ……呪文を唱えるのは、苦労するが……勢いでハマれば、何とかなるな!)


 やはり、俺は選ばれし勇者! 待ってろ、俺のハーレムライフ!


***

「……で、君が噂のイグノ君?」

「フッ……初にお目にかかります、ハーヴェン先生とやら!」

「あ、あぁ……うん。初めまして」


 そして……俺はその後も、攻撃魔法の才能をメキメキと伸ばし、今年13歳になった。そんな俺の前には、オフィーリア魔法学園から分校の視察にやってきたと言う、トップクラスの魔術師とやらが座っている。

 ……トップクラスだと言われたから、なんか、こう……いかにも大魔道士な感じのジジイが来るもんだとばかり、思ってたが。明らかに生前の俺よりも若そうな上に、奥さんまでいるなんて言われたら……悔しすぎるだろ。


「それで? えぇと……どうして、俺と勝負したいだなんて、言い出したのかな?」

「そりゃぁ、一刻も早く本校に登学するためです! 次の機会を待ってなんて、いられません!」

「残念ながら、君はこの間の選考試験をパスできなかったんだよな? 選考試験は1年に1回だ。だから、次の機会に……」

「だから! 先週の落選は、そちらのミスなんです! 魔力No.1の俺がどうして、落選なんですか⁉︎」

「あぁ〜……そう、言われましても……。俺は君の試験の様子、見ていた訳じゃないし……」


 クソっ……この、役立たずめ。素直に俺と勝負して、俺の実力を認めればいいものを。しかし……俺との勝負をここまで嫌がるなんて。もしや……こいつ、本当はメチャクチャ弱いんじゃないか? 実力もないクセに、トップクラスだなんて言われている上に……可愛い奥さんまでいるなんて。ますます、けしからん。


「それじゃぁ、来月に開催されるカーヴェラ側の選考試験に混ぜて下さい」

「いや、それは完璧に反則だから。君はクージェ分校の生徒なんだから、クージェでの選考試験に臨んでくれないかな……」

「だから! 俺の落選は……そっちの選考ミスなんです! 俺の実力を認めないなんて、あり得ない!」


 あぁ! 本当にもぅ! 埒が明かない! 俺がそこまで言い切っても、ハーヴェンは困ったように「落ち着いて」なんて言うばかり。そもそも……こいつ、本当に魔術師なのか……?


「はぁぁぁ……分かった、分かったよ。シルヴィアからも、様子を見てきて欲しいって頼まれていたし……そこまで言うのなら、君の実力を見せてもらおうかな?」

「よし! そうこなくっちゃ! でしたら、早速……」

「うん、魔法を使っての判断能力考査をさせてもらうよ。アレイル、急で悪いのだけど……模擬戦場をお借りしても?」


 そうそう、最初からそうすればいいんだよ。全く……そんなにも、俺に負けるのが怖いのか?


(しかも……臆病者のクセに、俺のアレイル先生に気安く話しかけるなんて! これは、みっちりお仕置きしなければいかんな!)


 さも親しげに、俺のハーレム要員を呼び捨てにして、ハーヴェンがアレイル先生に模擬戦場利用の許可を取っている。しかし……アレイル先生、今日も美しや! あぁぁ……! 母親のアーニャ先生も超絶美人のナイスバディだと聞いていたが! 親娘揃って、サキュバス系統の悪魔となれば……これは2人セットで、俺のハーレム入り間違いなしの布陣だろう! グフフ……母娘に挟まれて、いい夢を見るのもいい! 実にいい!


「えぇ、もちろん大丈夫ですわ、ハーヴェン様。……本校の生徒がご面倒をおかけしまして、申し訳ございません……」

「いやいや、大丈夫。アレイルのおかげで必要な話はスムーズに済んだし、クージェ分校は問題なさそうなことも分かったし。この位は問題ないさ。気にしないで」

「恐れ入ります……」


 フッ……俺のために頭を下げるのも、嫁の立派な務めだよな。うんうん、ますますいいなぁ、アレイル先生。デュフフ……君の胸元のメロンメロンにダイブする日が待ち遠しいぜ。

【登場人物紹介】

・イグノ・ガルシェッド(炎属性)

投身自殺で異世界転生を果たした、浅見勇人その人。

現在13歳。燃えるような赤毛に青い瞳の、そこそこの美少年。

女神・シルヴィアより遣わされた神の御子として、クージェ帝国でも指折りの大貴族・ガルシェッド家に預けられた。

非常に高い魔力適性はあるものの、今ひとつ魔法の概念を理解していないため、想像力で理解度不足をカバーできる攻撃魔法はともかく、魔法全般に対する応用力と知識には乏しい。

時折、意味不明な譫言を呟いていることがあり、養父一家を心配させている。


・アレイル・ジャーノン(炎属性/闇属性)

オフィーリア魔法学園・クージェ分校の校長を務める、特殊祓魔師。119歳。

アーニャと旧・ルルシアナ家に所属していた商人・アルス・ジャーノンとの間に生まれた、ハーフデビルでもある。

母親譲りの美貌と魔力、父親譲りの勤勉さと商才を持つ才媛。

クージェ分校は特に「格式高い貴族」=「魔力適性の高い人材」が集まる傾向が強く、平凡な魔術師では生徒に示しがつかないという理由から、実力派のアレイルが単身赴任している。

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[良い点] マジカル的なプレミアム感(笑) メロンメロン(笑)
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