表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不承転生者の魔法学園生活  作者: ウバ クロネ
【第6章】囚われの王子様
231/326

6−17 本格的にダンジョンだわぁ

 初等魔法学講義、最終日。今日の授業はいつもの講堂……ではなく、予告通りに実践学習と洒落込むつもりと見えて、ミアレット達がマモンに連れられてやってきたのは「訓練場準備棟」と呼ばれる、各種訓練場への転移装置パネルを集約した施設だった。


「最終日もちゃんと全員、揃っているな。感心、感心。今回は魔力トレーニング塔の訓練場を使って、魔力の目覚めを体感してもらうからな〜」


 今日も今日とて、大悪魔様はご機嫌も姿も麗しいご様子。ニコニコと微笑む彼は仰々しい礼服ではなく、ピッタリ目の黒いハイネックのニットと、スキニーパンツの出立ちではあるが。……全身真っ黒なのに、首元にレース模様を重ねたようなネックレスがぶら下がっているせいか、不思議と品よく洒落ている。


(……これもリッテルさんのセンスなのかなぁ……?)


 舞台が訓練場ということもあり、動き易さを優先した服装だと思われるが。やはり、素材が良いせいか……シルエットだけでも女子生徒達を夢中にさせるのだから、なかなかにニクい演出である。


(って、いけない、いけない。……授業にリッテルさんのセンスは関係ないわ)


 いずれにしても、大悪魔様の衣装に気を取られている場合ではないだろう。ミアレットは妙なところに神経を持っていかれてしまったと、気を取り直すと……改めて、講義の内容に集中する。


「昨日紹介した仮想空間システムは、イメージトレーニング用の施設でな。仮想空間システムでも、魔法の習熟度を上げることはできるが……イメージ上でしか魔法を使わないもんだから、魔力因子の覚醒率を上げることはできなくて。一方、トレーニング塔はより生に近い魔力を感じられる分、魔力因子の目覚めを効率よく促すことができるのがウリだ」


 そうして続く、マモンの説明によると。「魔力トレーニング塔」はエリアごとに魔力濃度が調整されており、上の階に進めば進むほど、魔力濃度が高くなる設計になっているらしい。魔法の制限もされておらず、魔法道具の持ち込みも可能。実際に体を動かすこともあり、「リアルの体験ができる」施設なのだとか。


「んで、塔の高さは50階まで。擬似生成された魔物も出現するし、運が良ければちょっとした戦利品を落とすこともあるぞ。上に行けば行く程、難易度と一緒にドロップアイテムのレア度も上がるから、やり込み度と中毒性も高めだが……その分、危険度も高くなるもんだから。無理はせず、自分のペースで挑戦してみてくれ」


 マモンの何気ないご褒美情報に、にわかに興奮気味で沸き立つ生徒達。擬似的とは言え、本格的な魔物退治が体験できる上に、あわよくばアイテムまでゲットできるなんて。冒険に飢えている生徒達にしてみれば、これ程までに魅力的な「遊び場」もないだろう。


(塔の高さは50階かぁ……。うわぁ……本格的にダンジョンだわぁ。めっちゃ、異世界っぽいわぁ……)


 周囲の熱気とは裏腹に、ミアレットはいよいよラノベ染みてきたと、心の中でツッコんでしまう。

 この「魔力トレーニング塔」は擬似的とは言え、エリア2……つまり、ミアレット達がいる上の階から魔物が出現するし、ごくごく当たり前のように、痛い目に遭う可能性もある様子。それなりに、安全対策はされているようだが……当然ながら、事故やトラブルはゼロではなかった。


「因みに、どこまで登れるかは、魔力因子の覚醒率で制限されていてな。2%上がる毎に、上の階に進めるようになっていて……最上階に登るには、100%まで覚醒率を高める必要があるぞ。一応はみんなが危険な目に遭わないようになってはいるし、無理もできないように設計されているんだが。万が一があった場合は、すぐに撤退を。今まで死者こそ出していないが……おふざけ半分で、腕をちょん切られた奴はいるからな」


 回復魔法による修復が間に合ったので、腕は元通りにはなったそうだが。その際に受けた痛みと恐怖は生徒の中に残り、バッチリとトラウマになってしまったらしい。結局……彼は魔法を使うことができなくなってしまい、魔法学園を去ることになったそうだ。


「相手は擬似的に発生している魔物とは言え、不必要に挑発したり、油断したりしたら、痛い目を見るぞ。トレーニング塔では、油断と無理は禁物だ。……さて、と。とは言え、挑戦してもらわない事には、始まらないよな。今、みんなの魔術師帳に【魔力トレーニング塔戦績】のアプリケーションを送信したから、そこにあるガイドラインをしっかり読んで、準備ができた子から出発。あぁ、心配しなくても、大丈夫。俺もきちんとモニタリングしているから、何かあったらすぐに駆けつけるぞ。最初は慣れるつもりで、気楽にチャレンジしてみてくれ」


 気楽にチャレンジと、言われましても。明らかに物騒な具体例を聞かされたら、慎重にならざるを得ないというもので。そうして、真剣な眼差しでミアレットは元より、生徒達も魔術師帳に落とし始めるが……。


(どれどれ……? あっ、挑戦は単独プレイなのね?)


 魔力トレーニング塔では生徒間の覚醒率によるレベル差を鑑み、単独での挑戦に限定されている様子。心迷宮の攻略も含め、単独での挑戦はなかったため……急に不安になってしまうミアレット。考えてみれば、今までは何かにつけチームプレイが基本だったので、突然の1人きりはちょっぴり突き放された気分にさせられてしまう。


「デュフフ……! こうなったら、限界まで上り詰めるしかないな……! レアアイテム、ゲットだぜ……!」


 尚……イグノは隣で相変わらずの怪しい笑みをこぼしており、既に妄想の領域へトリップしている。安定の挙動不審である。


(イグノは幸せそうで、何よりだわぁ。……まぁ、いかにもゲームっぽいものね、これ。でも、あんまり無理はしないでほしいわぁ……)


 イグノはマモンの説明を聞いていなかったんだろうか? 最初から限界に挑めとまでは、言われていない気がするが。とりあえず、マモンのセーフティネットも張り巡らされているみたいだし……そこまで、心配しなくてもいいだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
お、本格トレーニング!(#^^#) ふざけて腕をちょん切られたってなかなか危険! がんばれミアレットさん! (そして相変わらずのイグノ君(笑))
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ