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不承転生者の魔法学園生活  作者: ウバ クロネ
【第1章】ややこしい魔法世界の隅っこで
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1−12 旦那はモテる方が、嫁冥利に尽きる

 やっぱり、こうなったか。「素敵なスーツ姿」のマモンにご引率いただいて、カーヴェラ分校へと登校するものの……どこもかしこもピシッと決まりに決まった大悪魔様は、とにかく目立つ、目立つ。到着と同時に、すぐさま校長室へと向かおうとするマモンの行く手は、既に大勢の女子生徒の「黄色い声」で埋め尽くされていた。


(マモン先生のお洋服って、妙にフリフリしているんだよなぁ……。似合っているから、まだ良いんだけど……)


 女子の歓声を一身に受け続ける、マモンではあったが。そんな彼の「素敵な衣装」はどうも、お嫁さんチョイスによるものらしい。

 同じ立ち位置であろうハーヴェンの着衣と比較しても、マモンのスーツはやや正装寄りであることが多い。普段からハーヴェンがオーソドックスな「ビジネススーツ」を着こなしている一方で、マモンは常々「礼服」を着込んでいたりする。……特に今朝は、瞳の色に合わせたのだろう。ピコレースで縁取られた首元は深いパープルのアスコット・タイで彩られており、必要以上に洒脱な雰囲気を醸し出していた。


(……これ、平均顔がやったら、間違いなく浮くヤツだわー……)


 ここまでの仰々しい格好は、美男子だからこそ許される姿である。華々しい衣装を普段着にするなんて、庶民的な平均女子であるミアレットには真似できない。


「はーい、皆様、おはようごぜーまーす! 生徒諸君、ちゃんと勉強してるか〜」


 しかし、本人は「こういう光景」にも慣れてしまっているのか、女子の波の分厚さも物ともせず、気さくに挨拶をし始める。彼がサービス精神も旺盛とばかりに、手を振りつつニッコリと微笑むと……一層、けたたましく甲高い声が上がった。


「つーことで、ミアちゃんとはこの辺で別れとくか。……何か、変な動きがあったら教えてくれよな」

「は、はい……それは構わないんですけど。それはそうと、マモン先生」

「うん?」

「……この状況、リッテルさん的には大丈夫なんですか?」


 旦那様がここまでモテにモテているともなれば、お嫁さん側は気分も良くないだろう。しかも、マモンは既婚者である以上に、完全なる恐妻家である。……これで、変なお仕置きをされなければいいのだが。


「おっ。流石、大人なミアちゃんはそこも心配してくれるか」

「えぇ、まぁ。だって……これ、普通に考えたら、お嫁さんはヤキモキしますよね⁇」

「フツーはそうだよな。でも、嫁さんが言うには……旦那はモテる方が、嫁冥利に尽きるんだと」

「……あ、そういう感じなんですね」


 要するに、だ。旦那様がモテるのは、リッテルにとっても鼻が高いという事になるらしい。しかしながら、旦那様がモテるという事は、浮気や「誰かに取られちゃうかも」という不安も付き纏う事にもなりかねないが……。


(……リッテルさん、自分にも相当な自信があるんだろうなぁ。あれだけ美人だったら、当然と言えば、当然か……)


 「傾国の美女」とはきっと、彼女のために存在する言葉なのだろう。彼女程の美貌があれば大物悪魔も陥落するし、ややもすると国の1つや2つ、冗談抜きに傾くかもしれない。


「とにかく、ミアちゃんも頑張れよ。そんじゃ、俺はこの辺でドロンしまーす」

「はっ、はい……」


 最初から最後まで気取らない様子のマモンが手を振りつつ、その場を離れていく。そうして、彼がミアレットとは別方向……職員室などが集まっている中央練へと向かい出すと、彼の進路を開けつつも、一定距離を保ちながら女子生徒達もピタリと付いていく。彼女達の浮足立った様子に、そろそろ授業が始まるのになぁ……とミアレットは別方向の心配をしてしまうが。


(勉強の邪魔はしないって、言ってたけど……。それって、私の邪魔はしない、って意味だったのかなぁ……)


 マモンのご降臨があまりに鮮烈過ぎたのか、彼が離れていくと同時に、注目の的からも外れたのにこれ幸いと、いそいそと教室へ向かうミアレット。そう言えば、まだ姿を見ていないが……エルシャはもう、教室にいるだろうか。


(うん、私も頑張らなくちゃ。エルシャと一緒に、選考試験を突破して……何がなんでも本校へ通えるようにならなきゃ、始まらないわ)


 全ては元の世界に帰るため……延いては、大好きなアーティストのライブに参加するため。だけど、ただただ頑張るだけではつまらない。ついでに「友達」を作って学園生活も謳歌した方が、何かとお得だし、手っ取り早いし……ちょっとは楽しいはず。

 まさか、いじめっ子ときちんとお友達になれるなんて、思いもしなかったけれど。異世界にいる間はそれなりにこちらの生活にも馴染んでみるのも、悪くない。

【補足】

・魔力の器

血液中に含まれる、魔力適性を担保する魔力因子(魔力に反応・収集できる要素)の集合体のこと。

魔力因子を「より大量に連結できる・できない」の差で「器のサイズ」が決まってくる。


「器」と呼称されてはいるが、目に見えるような決まった形はなく、肉体に紐づく形而上の概念。

天使と悪魔、精霊は「魔法ありき」の存在であるため、階級の高低に関わらず「魔力の器」を持ち得ているが、人間の「魔力の器」の獲得は血統に左右され、基本的には貴族階級にしか魔法が使えないことになっている。

後付けで「魔力の器」を獲得する手段も、あるにはあるが……普及には至っていないのが、現状である。

また、先天的に魔力の器を持つ人間は「ホルダーキャリア」と呼ばれる。


・祝詞

霊樹の祝福を受けた証であり、魔法生命体(天使・上級悪魔以上を含む)の魂に刻まれた「存在意義」のこと。

霊樹をもたらした神界の眷属(天使)は、祝詞を持つ相手と契約を結ぶことができ、彼らに協力を要請できる。

また、精霊側も天使に祝詞を預け、契約をすることで、潜在能力の大幅な向上を図ることが可能となる。


天使・精霊は霊樹の祝福を受けた際に必ず「祝詞」を授かることができるが、中級悪魔以下は自身が所属する領分の真祖に刻んでもらわない限り、「祝詞」を持つことはできない。

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