表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不承転生者の魔法学園生活  作者: ウバ クロネ
【第4.5章】イグノ君、副学園長に呆れられる
149/303

4.5−1 権力バリバリ

恒例のイグノ君の近日譚をつらつらと。

今回は、魔法学園の偉い人とお会いになるようですよ……?


なお、相変わらず後書きに色々と解説を入れていますが、作者の備忘録も兼ねていますので、ガッツリ読んでいただかなくても大丈夫です。

(くぅぅ〜! 実に刺激的だった……!)


 マモンに仮想空間システムを教えてもらってからというもの。俺は毎日訓練場に通っては、スコアを伸ばすのにのめり込んでいた。クラス鑑定とやらをしていないせいか、自分のクラスが何なのかは分からないままだが。とりあえずは漆黒ラットは倒せるようになったし、魔法の精度も上がった……と思う。


(新学期まで、あと1週間……。デュフフ……! 天才の俺が降臨したらば、きっと大騒ぎになるんだろうな……!)


 使える魔法はファイアボールだけだが、上級クラスになれば自然と使えるようになるんだろう。クラスチェンジで新しい魔法を習得するのは、RPGのオヤクソク。クラス鑑定をして、俺のクラスが判明すればバッチリ超強力な魔法も使えるに違いない!


(新学期が待ち遠しいぜ……って、うん? あれは何だ……?)


 馬……いや、ロバか?

 訓練場から伸びる、長い橋を渡り切ったところで……トコトコと中庭を歩く、ロバらしき動物に遭遇する。しかし……いかにも平和な様子でのんびりしているが、色が真っ黒なところを見るに……。


(ま、まさか……! こいつは例の魔物では……?)


 仮想空間システムのリストにも確か、(名前は忘れたが)馬形のモンスターがいた気がする。だとすると、あれはモノホンの魔物って事か……?


(はっ! もしかして……俺が仮想空間システムに通った影響で、イベントがアンロックされたのか……?)


 あり得る……あり得るぞ! 特定条件を満たせば、イベントが発生するのもRPGにはよくある事。これは多分、俺に与えられた特殊ミッションに違いない……!


「こうなれば、先手必勝! 紅蓮の炎を留め放たん! 魔弾を解き放てッ! ファイアボール!」


 一応言っておくが、不意打ちじゃないぞ? 第一、大物オーラ満載の俺に気づかない方が悪い。


「どうだ、醜いモンスターめ! 俺の華麗な魔法を食らったら、ひとたまりもあるまい!」

「……いきなり、何をするのです……。僕が誰だか知っての無礼ですか、それは」


 ……あれ? さっき、俺の魔法……直撃してたよな? でも、ファイアボールが芝生を焼き払った跡には、ロバの姿はなく。いつの間にか、隣にいるじゃないか。まさか、こいつ……かなりの上級モンスターなのか? しかも……。


「ウオッ⁉︎ ロ、ロバが喋った……?」

「まぁ、今の僕は確かにロバでしょうけれど……教員リストにも、それらしい紹介文を載せていたはずなんですけどねぇ……」

「へっ……?」


 教員リストに載っている……だって? だとすると、こいつはモンスターじゃなくて……魔法学園関係者って事か……?


「……って、言われてもなぁ。えーと、どの辺だ……?」

「全く……君は魔法学園の生徒なのに、教員リストに目を通していないのですか? ほら、リストの上の方ですよ。副学園長の紹介欄に、たまにロバの姿で学園内を散歩している事がある……と、書いてあるでしょうに」

「あっ、ホントだ」


 確かに書いてあるな。どうやら、このロバは「アケーディア」と言うらしい。そんでもって、ふーん……。固有魔法の修行のために、変身してるのか。しかし、固有魔法か。なんだか、格好いい響きだな。


(ま、いずれ俺にもそれらしい魔法が使えるようになるだろう。なんたって、神の御子だからな!)


 オリジナルの魔法で無双するのも、主人公特権の1つ! きっと、美少女達から「すごい魔法を使えるイグノ様、格好いい!」とか言われて、チヤホヤされちゃうんだろう! クククク……今から、とても楽しみだぜ……!


(それはそうと……こいつも悪魔なのか?)


 うん……紹介欄にしっかり書いてあるな。憂鬱の悪魔だって。


(憂鬱の悪魔、ねぇ……)


 そう言えば、この間のマモンも悪魔だったような。とは言え、あいつはあいつでナンチャッテ悪魔なもんで、大物感があるのは名前だけだったな。どうも魔法学園にいるのは、弱い悪魔だけっぽいし……だとすると、こいつも大した事なさそうか。


「……お前も悪魔なのか?」

「僕をお前呼ばわりとは……なかなかに、度胸があるようですね? 君は」

「フッ……それほどでもあるかな」

「……今のは、誉めていないんですけれど。まぁ、いいでしょう。制服を着ているからには、学園の生徒なのでしょうし。この場で無駄に事を荒げる必要もありません」


 偉そうな事を言ってくれちゃう、アケーディアだけど。……どこをどう見ても、見た目はロバなんだけどなぁ。どう頑張っても、無害そうなんだよなぁ。そんでもって、弱いのを自覚しているのか……上から目線の割には、襲いかかってこない。

 フン、なるほど。やっぱり、こいつも腑抜け悪魔みたいだな。どうせ、実力もないんだろう。


「僕はいわゆる真祖の悪魔でしてね。大悪魔の固有魔法・エンブレムフォースにてバーサークモードをいかに理性を保ちつつ、コントロールできるかについて、日々研究と研鑽を重ねているのです」

「へぇ〜、バーサークモードねぇ……。それって、あれか? 凶戦士ってヤツだよな?」

「うーん……凶戦士と言われると、若干意味が違う気がしますが……。言い得て妙ですね。普通の悪魔はこのモードに入ると、理性が吹き飛んでしまう傾向がありますから。僕は一応、制御できていますが……なにぶん、人間界の魔力が薄いもので。いつ暴発してもいいように、こうして閑散期にこっそり訓練しているのですよ。まぁ、今日は待ち合わせがてら、実験していただけですが」


 待ち合わせ? だとすると、こいつの他にも誰か来るってことか?

 俺がそんな事を考えていると、アケーディアの姿が変化し始める。……どうやら、変身を解いたみたいだが。イケすかない顔でこっちを見つめる奴は、憎っくきアイツにソックリで……?


「マ、マモン……?」

「おや。僕の事は知らないのに、マモンは知っているんですね。……それも仕方ありませんか? 弟はアレで、非常に目立つ上に優秀ですから。魔術師としても、悪魔としても、副学園長である僕も敵いません」

「弟……? という事は、何か? お前ら、兄弟なのか……?」

「先ほどから、口の利き方がなっていない気がしますが……それはさておき。人間の概念とはやや異なりますが、関係性としては兄弟で合っていると思いますよ。同じ親から生まれた事には、変わりませんからね」


 肩を竦めつつ、小馬鹿にした表情でこっちを見てくるアケーディア。……さっきから妙に偉そうなのが気に入らないし、リッテルさんを横取りしたアイツとソックリなのも、なんかムカつく。でも、その前に……。


(……そう言や、さっきから副学園長とかって言ってるが……。えっと、まさか……?)


 どこの副学園長なんだ……は聞かなくても分かる事、だよな……。だって、魔術師帳をよくよく見てみれば、しっかりと「副学園長」って書いてあるんだもん。もしかしなくても、コイツは偉い奴……!


(だったらば、利用しない手はないな! 実力は大した事なさそうだし、舎弟にしてやるのも悪くない)


 うん、いいじゃないか。副学園長を従える俺なんてのも、権力バリバリでイケてる気がする。それに……神の御子が取り立ててやろうって言うんだから、こいつとしても僥倖だろう。


「デュフフ……! まずは従者をゲット……! 悪魔と契約も悪くないな」

「従者に契約……ですか? よく分かりませんが、生憎と僕は大天使・オーディエルと契約済みですよ」

「はぁ⁉︎ 悪魔が天使と契約だなんて、あり得ないだろ⁉︎」

「それがあり得るんですけどねぇ。君は先ほどから、人の話を聞かない子なのですね」


 なんなんだ、こいつ……! 折角、俺が舎弟にしてやろうって言ってるのに、ハナから拒否ってきやがった。しかも、小馬鹿にしたようにお手上げポーズをとりやがって……!


(許せん……! 実力もない、小物のクセに……!)


 いつか、ギャフンと言わせてやるんだからな。今に見ていろ!


「それはそうと……あぁ、来ましたか。彼女はやはり、時間にも正確だから素晴らしいですね」

「彼女……?」


 アケーディアが気になる事を言い出したので、釣られて振り向けば。そこには、キリッとした感じのお姉さんが立っていた。さっきまで、誰もいなかったよな? いつの間に……?


(いや……それ以前に、誰だ、このクールビューティは⁉︎)


 クラシックなメイド服に身を包んだ、それはそれは見目麗しいお姉さん。黒髪はきっちりまとめ上げられていて、瞳は綺麗な空色をしている。しかも……。


(くぅッ! これまた、ナイスバディ! ボン・キュッ・ボンッ加減もパーフェクトッ!)


 やっぱり、異世界転生はこうでなくっちゃ。女性キャラはみんな美人or美少女で、プロポーションもバッチリ。ロリも悪くないが、男は基本的に包まれたい生き物なもので。包容力は正義だよ、正義。デュフフ……この美女とも、是非にお近づきにならなければいかんな!

【魔法説明】

・エンブレムフォース(闇属性/上級・紋章魔法)

「刻まれし力を解放せん 我が根源の名に於いて 汝の定めを覆さん エンチャントエンブレムフォース」

「刻まれし名を棄却せん 我が根源の名に於いて 汝の縁しを奪わん ブロークンエンブレムフォース」


魔界の大悪魔階級の固有魔法であり、配下に対する祝詞を付与・剥奪するための魔法。

同じ魔法名で構成・効果が2種類(厳密には3種類)存在する、かなり特殊な魔法である。

真祖の悪魔による配下への絶対的な支配を決定づける魔法であり、自らの領分の根源をデザインとして落とし込んだ「紋章」の力によって、配下へ祝詞を授けたり、逆に取り上げる事ができる。

なお、真祖によって本性の姿(動物の姿)が異なるため、実際には紋章は8種類存在しており、エンブレムフォースも各真祖によって構築情報が微妙に違う。


→エンチャントエンブレムフォース

祝詞の「付与」の効果を持つ魔法だが、最大錬成度で用いた場合は絶対服従を強いる「隷属」の構築情報をも内包する魔法。

錬成度を高めれば高める程、祝詞に付随する「バフ効果」も大きくなる反面、配下側は祝詞なしで実力を発揮できなくなるために、真祖の言いなりにならざるを得なくなる。

その「言いなりにならざるを得ない状況」が「隷属」であり、最大錬成時には祝詞だけではなく、紋章による「マーキング」が施され、配下側は多大な能力向上効果を得られる代わりに、自由を真祖へと差し出さなければならない。

エンチャントエンブレムフォースの「バフ効果」は「強化」の側面もある一方で、真祖の好みによって「都合よく作り替える」ことも罷り通るため、祝詞の付与が配下にとって恩恵になるか、束縛になるかは真祖の裁量次第。


なお、エンチャント側の紋章魔法は真祖が自分への「バフ効果」を得るために使うこともでき、「理性込みのバーサークモード」の発動を可能にする裏効果がある。


→ブロークンエンブレムフォース

同じ領分の配下から「祝詞」を剥奪するための魔法。

エンチャント側とは異なり、効果は1種類しかないが、祝詞を剥奪されることは存在意義を失うことに等しく、この魔法を使われると元の姿で存在できなくなる。

祝詞を分解する魔法のため、エンチャント側よりも非常に構築情報が難解で、魔力消費量も多い。

また、祝詞を奪うことは自動的に配下を失うことにも繋がるので、真祖にとってもブロークン側の行使は最終手段である。


【補足】

・悪魔の「バーサーク状態」

理性が熱暴走を起こしている状態の事。

理性を捨てる代わりに、行使可能な魔法を詠唱なしで乱発する事が可能になる。

発動される魔法を選ぶ事はできないが、基本的に対象の悪魔が使える最大限の攻撃が発動されるため、バーサーク状態下の上級悪魔は上級天使の軍勢さえも退ける程の脅威になり得る。


なお、発動できるのは祝詞を元から保持している上級階級以上の悪魔のみとなる。

理性を捨て、魔力を本性に紐づく祝詞に全部載せ換えることで、限界突破を意図的に発動する事はできるが、限界突破は自身でも制御できない状況になるため、制御できずに無理した分だけ、「生前の記憶」が消費されるリスクが伴う。

悪魔にとって「生前の記憶」は自らの欲望と存在意義を肯定する要素でもあるため、これを消費すると言うことは、悪魔としての意義を消費することに等しい。

上級悪魔の限界突破は言わば「諸刃の剣」であり、限界突破のまま振り切れてしまうと、理性を取り戻せなくなる。


一方、大悪魔は自身の存在が欲望の根源でもあるため、「記憶」を消費せずともバーサーク状態を発動できる上に、理性をある程度保つ事が可能。

その反面、バーサーク状態発動中はそれだけで魔力を消費し続けるため、この形態での長期戦は無謀である。


因みに、悪魔のバーサーク状態は意訳を含めれば「発狂した状態」と解されるが、本来の意義としては「異形を顕した者」とする方が正しい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
わ~い、究極の脇役イグノくんの回(笑) 次々大悪魔さまと出会える才能はすごいけど、学ばないヤツ……(笑)まあ、イグノくんが謙虚になるなんて、反動でミアレットさんが悪い子になりそうなくらいあり得ないので…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ