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不承転生者の魔法学園生活  作者: ウバ クロネ
【第4章】波乱含みの王都旅行
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4−20 鼻歌を漏らす不審者(もとい、大天使様)

「ふふっふふーん♪ ふふんふふーん♪」


 稼働率3割の大天使様に連れられて、ミアレットは暗くなりつつあるお空を彷徨うものの。大天使様のあまりの調子ハズレっぷりに、ウィンドブルームに跨ったまま呆れていた。ミアレットがジットリと見つめる先には……ペンデュラムらしき物をフリフリしながら、鼻歌を漏らす不審者(もとい、大天使様)が浮かんでいる。


「えっと……ミシェル様。それ、何ですか?」

「あっ、これ? これはね、ミアスマセンサー・改! 不穏な魔力波長……要するに、突発的に発生した瘴気を探るための魔法道具でね〜。そんでもって、主にイケメンの悪魔探しに使う道具なんだけど」

「……すみません、ミシェル様。不穏な魔力と、イケメンの悪魔がどう結びつくのか、私には分からないんですけど……」

「そっか。ミアちゃんには、分からないか〜。ま、それは仕方ないよね。ミアちゃんの周りには、善良な悪魔しかいなかったもんね〜。あっ、いや。そうじゃないね。……今のご時世、不良悪魔はいないんだった」


 それはそれで、どうなんだ。大天使様の口から「善良な悪魔」というキーワードが出る時点で、やっぱりこの世界はどこかおかしい。


「それはともかくとして。このミアスマセンサーは元々、強い闇属性の波動をキャッチするためのものでね。悪魔は基本的に、ハイエレメントとして闇属性を持ってるもんだから。人間界に出現した悪魔のレベルを、それとなーく振れ幅で教えてくれる物だったんだけど……」

「だったんだけど……?」

「ボクが持っているのは、改良版。サーチ対象は闇属性だけじゃなくて、深魔の大元……つまり、人間の強い悪意や不安なんかもある程度、拾えるようになっているよ。神界で観測値を眺めているだけじゃ、多少の発生エリアは特定できても、ピンポイントな位置は把握できないからね。現地調査しようってなった時に、無駄足を踏まないためにも、こうして振り子を垂らしてるってワケ」

「そ、そうだったんですね……」


 しかしながら、クラウディオが不安一杯かどうかは、定かではない。もしかしたら、どこかで迷子になって泣いているかもしれないけれど。前提条件にするには、適切ではない気がする。


(……この調子じゃ、クラウディオを探すのは無理かもぉ……)


 空を見上げれば、雲の向こうから三日月がニコリと顔を出し始めている。ここはいっその事、ミシェルとは別行動を取った方がいいかもしれない……と、ミアレットが思い始めた刹那。ミシェルのミアスマセンサーが激しい揺れと同時に、輝き始めた。


「ミシェル様……それ、光ってますけど。もしかして、何か見つかったんです?」

「……この揺れ方は、ヤバいかも。多分だけど……」

「多分だけど……?」

「すぐ近くで深魔が発生したっぽい」

「へっ……?」


 強い紫色の光を帯びたペンデュラムは、ぐいぐいとミシェルの腕さえも引っ張っては、急げと焦っているようにも見える。そんな探知機相手に……ミシェルは諦めたように、ため息を吐く。


「あぁ……仕方ないなぁ、もう。この状況だと、ボクが行くしかないか……」

「えっ? ミシェル様……深魔対応、できるんです?」

「一応ねー。大天使階級の天使はみんな、これ、持たされてるから」

「そ、それは、例の……」


 ミシェルがゴソゴソとポーチから取り出したるは、どう頑張っても見覚えしかない、華奢な腕輪。……間違いない。彼女の手にあるのは、特殊祓魔師ご用達の魔法道具・メモリーリアライズだ。


(ゔっ……超嫌な予感がする……!)


 ミアレットが荒事に巻き込まれる、その時は。いつもいつも、あるのはメモリーリアライズの影なるかな。面倒事の前触れで、必ずお目にかかる魔法道具ともなれば。もはや、メモリーリアライズはミアレットにとって、災難を呼ぶ呪具でしかない。


「えっと、ミアちゃんって確か、風属性だよね?」

「は、はひ……」

「だったら、ウィンドトーキングは使えるよね?」

「一応は……」


 聞けば、ミシェルのベースエレメントは地属性なのだと言う。そのため、探索に便利なウィンドトーキングを使うことができないそうな。


「ボク1人で、やってやれないこともないけど。単一エレメントでの突入は、色々と骨が折れるんだよねぇ」

「そ、そうですね……」

「近くに、イケメンもいないみたいだし。旨味が少ない任務はラクして終わらせるに、限るでしょ?」

「……え、えぇとぉ……? イケメンがいないって、どうして分かるんです?」

「うーん……乙女の勘ってヤツ?」


 何を馬鹿なことを言っているんだ、この不審者(大天使様)は。乙女の勘だけで、任務への温度感を柔軟に上げ下げしないで欲しい。

 ミシェルの発言に、嫌な予感を募らせつつ……ミアレットは戦々恐々と、ウィンドブルームの上で後退りしてしまう。しかし、やはりと言うか……ミシェルはミアレットの答えに満足げに頷くと、予想通りに有り難くない決定を下してきた。


「よっし、だったら決まりだねー。ミアちゃんがいた方が、絶対にラクできるし。ボクと一緒に深魔討伐、行ってみよー!」


 どうやらミシェルはウィンドトーキングを利用したいがために、ミアレットに同行を求める(強制する)つもりのようだが……。


(いっ、いやぁぁぁぁッ⁉︎ こんな所で、課外授業勃発ですかぁぁぁぁ⁉︎)


 ミアレットは理不尽極まりない展開に、お決まりのサイレント絶叫を内心で響かせていた。

【道具紹介】

・ミアスマセンサー・改

悪魔に対し強い反応を示す、雷鳴石を加工したペンデュラム。

元々は悪魔探知に利用される道具だったが、改良版であるこの道具は、闇属性の魔力や、瘴気を伴った負の感情を探り出すことができる。

大きな衝動を感知した場合は強く光り、ペンデュラムの先端が発信源のおおよその方向を示す。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「善良な悪魔」?笑 「イケメンもいないみたいだし。旨味が少ない任務」←いやいや、セドリックさんがいるじゃないですか!(笑)イケメン大悪魔はいなくとも、面白クズ男はいますよ! そして、巻…
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