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悪魔の住む森  作者: 織風 羊
10/21

10 黒い霧 4

よろしくお願いします。



 霜降り肉は、事務デスクを挟んで向かいにあるパイプ椅子に私を座らせた。

酒を飲んでいるからであろう。

霜降り肉はいつもより上機嫌に見えた。

そして彼は、私に話しかけてきた。

信じられないほどの砕けた喋り方で。


「よう、お若いの、調子はどうかな? 勿論、不調とは言わせないぞ。何と言っても世界で最高の規則でお前達は守られているのだから。それにもかかわらず、お前は此処から出ていきたいと思っている。どうかな?」


 その時、私は思わず頷いてしまった。


「なるほど、素直で宜しい。然し、お若いの、考え違いをしてもらっちゃ困る。どれだけお前が出て行きたいと思っても、それを決めるのは私達なんだ。お前達に判断をする権利は規則で禁じられているからな。簡単に言えば、お前達は考えてはいけない。と言うことだ。分かるかな、お若いの?」


 今度は、私はしっかりと頷いた。


「そうだな、お前は、ここの規則を理解し始めている。全く良いことだ。いや、全くではない。お前の目を見ていると完全に理解できているとは思えんな。お若いの、不満があるなら言ってみればどうだ?」


 私は何も言えず、足元を見つめながら、きつく唇を結んだ。

すると霜降り肉は大声で笑い出した。


「あははははは、何も言えないのか? 子羊にでもなったつもりか? まさか神様が助けに来てくれるとでも思っているんじゃないだろうな。残念だが、この世界に神なんて存在しないんだ。これは規則ではないが、それを教えるのは私達の役目でね。言わば職員の規則なんだよ」


 そう言うと霜降り肉は、さらに大声で笑った。


「ひとつ、良いことを教えてやろう、お若いの。今日は特別にな。しかも私から教えられることは、もう無いだろう。いいか、良く耳をかっぽじって聞きやがれ。ここは、外から隔絶された世界だ。そして、外の世界は憎しみに満ちている。良いじゃないか、そう思わないか、お若いの?俺達は、その憎しみからお前ら馬鹿を守ってやろうとしてるだけさ、分かったら、さっさと出て行きやがれ、この小賢しい悪ガキが!」


 私は恐怖のあまり、立つだけでも精一杯の足に、ありったけの勇気を注ぎ込んで歩き、所長室の扉を開けた。

その時、後ろからまた、恐ろしいほどの大きな笑い声が聞こえ、霜降り肉の怒鳴り声が聞こえた。


「このクソガキが、お前はこの施設そのもが地獄だと言いたいんだろうが! 良いじゃないか、やってみやがれ! 然し、できると思うなよ! お前みたいな脳なしが大人に説教できないようにしてやろうじゃないか! さぁ、これでどうだ」


 再び笑い声が聞こえたかと思うと爆音が聞こえた。


 私は恐怖を感じながらも、その音の主を確かめたく、振り向いた。

彼は頭を事務机の上に置いて、その脳天からはどくどくと血が流れていた。

この国の何処で見つけ、どうやって手に入れたのであろう、施設長の手には拳銃が握られていた。

そして、彼を包んでいる黒い霧から、小さな白い雲が、静かに空へ登って行った。


 彼もまた、操られた魂であったのかもしれない。

とてもではないが、立っていられないくらいの震える膝を両手で押さえながら、そう思ったんだ。

そして、もしもそうであったのなら、今やっと、彼も自由を手に入れることができたのだと私は確信した。

ありがとうございました。

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