「普通の垣根を越えて」その2
数日後、私はユイさんから支給された物で何とか生きている。ユイさんは見かけによらず面倒見が良くて家事も全部こなす完璧なお姉さんだった。
一緒にお風呂に入ってわざわざ私の髪や身体を洗ってくれるなんて本当は優しい人なのかもしれない。
でもそれでも私を殺そうとした事がトラウマでまだ少し怯える部分もあるがユイさんの身体は抱き着くと暖かくて両親に貰えなかった愛情のようなものを感じてしまい胸が痛む。
外を見るも誰も私を探そうとしていない、私は皆の汚点で汚物のような人間なんだろうか。
取り残されたような気持ちで胸が苦しい。
「あのさ……ずっと暗い顔してるけど迷惑って思わないの?」
不甲斐なくて項垂れているとついに冷めた目でユイさんから後ろ指を指されてしまった。
「ごめんなさい」
私はすぐに感傷から立ち直ることが出来ず謝ると何故かユイさんは私を抱きしめて頭を撫でてくれる。
「もう、出来損ないめ」
「ごめんなさい、私……こんなに他人に優しくされたの初めてで」
両親から白い目で見られ、頭も悪いし運動苦手だし成績だって下から数えた方が早い。
だからか親の行方も知らず私が知らない所で私がいた時は見せなかった夫婦仲良くしているのを偶然見つけた時は感情を失ってしまいそうになった。家族と呼んでる二人は実は私だけで手間のかかる人間としか思われてないかもしれない。
「ふーんならいっそ私と冒険者になれば?」
ユイさんは再び催促してくれるがアスカちゃんとの約束を思い出すとその気持ちが揺らぐ、私は本当にヘタレだ。
だがそんな日は長く続かなかった。
ユイさんが何処かへ行っているとコンコンと扉を叩く音が聴こえた。
おかしい、ユイさんのお家は基本誰も来ない筈、それなのにまるで急かすようにノックの数が多い。
あれ、確かこのお家鍵しまってて鍵が無いと開かない仕組みじゃあ……
私はその事を確認する為に木のドアを押すと“鍵が掛かっていなかった”、だがそれにより見知った顔を見ることになってしまった。
「えっ?・・・ユカリちゃん?」
そう、この人は大人として私を優しくしてくれる人の一人で私の一番母親と呼べる女性でありこの星を取り締まる検問所所長であるサナエ・アポカリプスだった。