「ユイとの出会い」その1
私は何処かへ連れ去られ建物の中に押し入る。部屋は暗くてこの女性のお家?なのかな?
「取り敢えず服は全部脱がすね」
だが私は重症だ、それなのに女性はお構いなく私の服を脱がし始める。
「あぐ………」
脱がさないでと言いたいが傷口が開きそうでもう息絶え絶えだ。手慣れた手つきであっという間に裸に晒される。
「ヒール」
痛みより羞恥心が勝り赤面してると女性はなんと致命傷にまで及んだ傷口を回復魔法で一瞬で治してしまった。
回復魔法は上級職の中でも更に上のランクじゃないと覚えることすら困難だと聞いたことあるがこの女性は一体何者なんだろうか?
「顔も治すから待ってて逃げたら殺す、喚いても殺す、動いたら殺す」
まさか先程まで殺される側の人間に助けられるなんて思わなかった。殺伐とした雰囲気から一気に親しみを感じる程だ。
私は苦痛に耐えながら気になって女性のフードを優しく触るとその顔の正体を知った。
雪のように白い肌に触れるとゼリーのようにプルプルだ。瞳は先程の殺意に満ちたものではなく愛らしい優しそうな瞳だ。
だがそれと同時に違和感を感じる。
美しい美貌と共に抱く胸のモヤモヤ、何処かで会ったように“既視感”とまるで“共に暮らしてきた”かのような不思議な安心感が脳内が一瞬世界が傾いたかのような揺れと雑音がする。
「っ、何勝手に触ってるの」
だがそれも束の間その瞳はまた殺意に満ちてしまった。私は殺されると思い顔面を覆うが暴力は振れられなかった。
「捕虜の癖にいい度胸ね?」
悪戯顔をしながら頬をツンツンされる、人殺しだからてっきり極悪人だと思っていたけど何だか少し違う気がする。
「はっ、騙されるところだった!!」
私は急に我に返り女性から少し距離を取る。この人は犯罪者で殺し屋だ、何をさせるか分からないのに迂闊だった。
「ちょっと傷痛むよ、座りなさいな」
だが女性は妙に落ち着いている、私は近くにある拳銃を取って構える。
これは地球から輸入品の一つでそれは法を掻い潜る独自のルートでしか手に入らない殺傷武器、授業でこれの強さに惹かれて人を殺める人を何度殺されてるか身に染みている。
この重量からしてオモチャじゃないのは分かる、ここで私が女性を取れば大出世するかもしれない。
だけど何故か撃てない、というより“撃つ気になれない”、この人を殺してはイケナイ気持ちが押し寄せて来る。
「子供には過ぎた玩具よ」
変な戸惑いをしているといつの間にか女性は私の武器を取り上げていた。この人の腹は見えない、まだ能力を隠し持っているのだろうか?
「わ、私をどうする気なの!?」
急接近され慌てるも抵抗出来ないことは一目瞭然だ、だがそれでも私は殺し屋なんかで人生終わるのは嫌なんだ。
私が警戒心を高めると女性は少し困っていた。
「さぁね、正直殺し損ねたのが汚点だけどアンタを返せば皆にバラすんでしょ?」
だがまたそれも束の間、女性の懐から飛んできた投げナイフが頬を掠めた、多分適当に投げたと思う。
「だから悪いんだけどもう少し寝てなさい」
ナイフに気を取られた私は目の前から女性が消えていることに気付かず背後を取られた私はまた気絶させられた。
私は一体どうなるんだろうか?奴隷にでもなるのだろうか、どうかこれ以上の不幸は起きないで欲しい私はただ“普通”から解き放たれたくて一生懸命生きているだけなんだ。
なのに・・・なんでこんなことになってしまったんだろう。