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幻影道R 第七巻  作者: SAKI
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「私達の運命的な出会い?」その3

 飲みすぎたので酔いを覚まさせるために外に出た私は外の空気を吸うと風に乗って何やら変な匂いが鼻を付く。


 折角気分転換に夜風に当たろうとしたが気分が悪くなって誰も通らない裏路地の壁で嘔吐しそうになるのを抑えていると遠くから悲鳴が聴こえた。

 

「きゃあぁぁぁ助けて!!誰か助け――――― !?」

  

 音のする方に誘われるとその声は悲鳴から断末魔に変わり鮮血が飛ぶような血しぶきが壁に滴る。


 頭がポワポワしてて何があったのかと歩いて確認するとそこには悍ましい光景が広がっていた。


 大量の絵の具が壁や地面に流れ、女性だったモノは首を切り落とされて腹を裂かれドロドロと内蔵が出てきている。


 血液だと判断した私はまじまじと見つめるとぐちゃぐちゃにされた頭はもう人の顔とは思えない。私は死体を見て酔いが一気に覚めたが更に最悪なのは目の前に殺した犯人が佇んでいることだった。


「あっ、あぁ………」


 “私には関係ない”そう決め込んでいた。


 だが――――― 他人事ではなかった。


「見たのね?」


 その女性はまさにこの前見せてもらった指名手配と同じ服装、風でフードが外れると桃色の髪をしていたのだ。


 人を殺す躊躇の無い刀身のような鋭い眼、闇に落ちたような暗く重く腐った瞳、切断した時に血を浴びた姿は最早化け物にしか思えなかった。


 逃げろと言われたのに私はまるで蛇に睨まれた蛙のように棒立ちでいるに眼球だけは彼女を捉えていた。


「ひっ、あ、あの………私………」


 フードを被り直す彼女の垣間見える紫の瞳は眼力だけで失神してしまいそうだ。


「死にたいのね」


 私は顔面蒼白で頭の中が真っ白になる頃、女性は冷徹な殺意を向けて突進してくる。吐き気が込み上げて地面に嘔吐すると既に目の前まで来ていた。


 戦闘なら私だって多少頑張れる、だが女性の突進は今まで見てきた中で異次元に速く、戦闘を教えてくれる先生なんかより何倍も速い。


 私はいつの間にか壁に吹き飛んで腹の中に風穴が空きそうな程凹んている。

 

 そこから胃の中が逆流するようにその場で私は嘔吐した。


「死んでよ」


 だが女性はそんな事お構い無しに死んだ声で次の攻撃に出る。鋭い膝蹴りは喉元を突刺し、回し蹴りが顔面に飛ぶと頭が外れるような衝撃音と共に近くの廃墟の壁まで吹き飛ぶ。


「ごほ…………げほ…」


 一撃の威力が桁外れ、有り得ない威力と部位が陥没し、吐気と吐血が止まらない、私はこのまま呆気なく殺されるのだろうか?女性はついに剣を取り出してそれを振りかざそうとしている。


「?」


 殺される恐怖と絶望、辛苦に後悔が混じり私は穴という穴から漏れ出る。


「はぁ………女なのにはしたないのね」


 羞恥心とか罪悪感なんか今はどうでも良く助かりたいという命乞いをするしか私には出来なかった。


「お願いします、殺さない―――― 」


「駄目よ、死になさい」


 だがその言葉は甘かった、死ぬ気で頼めばと軽い気持ちで神に祈ってしまった。女性の冷酷無比な振り翳す剣は下がることなく袈裟斬りされる。


 大量の血液が噴水のように流れ、ドクドクと脈を打つ回数が早くなる。


「あが………ぐぅぅ!!」


 無感情に切り裂かれて明らかに致命傷だ、剣は私の体内を切り裂き内蔵を切断されている。手で押さえても無駄、ドクドクと流れる血液に私の視界は少しずつ薄れていく。


「あそこから悲鳴が聴こえたぞ!?」


「まさか例の奴か!?」

 

 だがそれと同時に近くにいた衛兵が騒ぎを聞きつけこちらに向かっている騒がしい足音が聴こえる。


「ちっ」


 予想外の展開に女性も舌打ちを鳴らし何故か私を軽々しく抱き抱える。


「アンタは逃さない、一緒に来てもらうわ」


 そう言って女性は私を連れ去り見たことのない脚力で移動し、それはまるで風のようだった。

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