「私達の運命的な出会い?」その2
エーリューズニル商業区・酒場にて
「ぷはー美味しかったぁー」
憂さ晴らしも兼ねて酒場で沢山食べてしまった。アスカちゃんは程よく酔っているが私の方がベロンベロンに仕上がっている。
「ユカリちゃん、今日は私が払うね」
会計を頼もうとしたらなんとアスカちゃんの方から奢ってくれるみたいだ。
「いいの〜?」
私は暗い気持ちを払拭しアスカちゃんに問うと笑顔で頷いてくれた、やっぱり持つべきものは友だ。
「うへへ〜アスカちゃん♪」
支払いを済ませると私はアスカちゃんに抱き付く、ずっと一緒にいてくれた唯一無二の親友。私自身色んな人から冷たい視線を送られがちだがアスカちゃんだけはずっと傍で笑ってくれた。
こんな私でも何かの役に立ちたいと奮闘しているがアスカちゃんは“いつも通り”の私でいて欲しいらしい。
「おや、ユカリちゃん?」
仕上がった私を背負いながら苦笑するアスカちゃんは酒場を後にすると声を掛けてくれる男性がいた。
カイト君だ、衛兵騎士の上級職に就く検問所兼用所長サナエちゃんの右腕的存在だ。
身長は私より二周りくらい大きく髪色は紫色の中髪で大きな剣を刀身が違う二振りの刃を背負っているのが特徴的かな?
「どうかしたの?」
いつも温和な彼だか今回は少し険しい表情をしている。私は少し酔いを冷まそうと声を掛ける。
すると返ってきた言葉に私は絶句した。
「いや、最近この時間帯に何人も死体が出てきてね、僕達はこの人が犯人だと思ってるんだけど目撃情報が一切無くてさ」
そう言うとカイト君はとある指名手配を見せてくる。
真っ黒なフードを被った口を覆った服装、そこからはみ出る桃色の髪の女性だった。
「この人見つけたらすぐに逃げるように言ってるから大丈夫だと思ったんだけど…」
その死体な日に日に増えてるらしい、だがそれとは別に気になる発言を聴いた。
「何故か騎士団の連中だったり、犯罪グレーゾーンばかりの人が多いんだ、だけど目撃者はゼロなんだ」
つまりは見た人も“殺す”ということか、このご時世にしては随分物騒な話だ。ここは発展途上で近未来区から催促されてるけどお偉い方が首を縦に振らずバチバチに睨み合ってるだったかな?
「分かりました、私達も早く帰りますね」
酔が増してダラダラになる口元を察してアスカちゃんが返事をしてくれる。
「そうしてくれると助かるな、もし何処かで出会ったら全力で逃げてね?絶対に戦うとかしないように」
カイト君の忠告に互いに頷くとそのまま見回りをしに去っていった。
「人殺しのお姉さんか、怖いね」
アスカちゃんの発言に私はそうだねと適当に答えた。
平凡な私には関係なさそうだな〜と少しばかり軽い気持ちで考えていた。そんな遭遇あるワケが無いとその時の私は甘く見ていた。
だがそんなある日、アスカちゃんと遊んでから数日、私はつまらない魔法学校の勉強を終えてから帰るまでにまた私は呑んでいた。
一人ぼっちがとても寂しいからという理由で商業区にある酒場で一杯呑む。
私のお母さんは頭が良くて研究員として働き詰めでお父さんは優秀な建築家で深めた家族とも呼べる存在の仲間達の仕事場で帰る日は殆ど無い。
そんな中で産まれた私は非凡で底辺の女、スタイルも中途半端で家事もロクにこなせない癖に自分が嫌いで勝手に酒浸りの生活を送る十七歳だ。
ニ歳の頃からサナエちゃんというお姉さんをアスカちゃんの両親が独り立ちを目指す為に家庭教師として私はアスカちゃんに無理矢理誘われて三人で生活することになった。
だがその日から両親は一度も会うこと無く寧ろ邪魔だったのか二人楽しく旅行に行ったきりで音信不通となり捨てられたんだと気が付いたのはその後だった。
私はそれを思い出して嫌気が差すと呑むのを止めて会計を済ませていると外はもう既に真っ暗になっていた。
「またね、バイバイ♪」
私達は学生だから同じ寮なんだけどアスカちゃんはシスターズだからこれからお仕事らしい。
本当にいつも迷惑掛けてごめんと言うと家族でしょ〜?と笑い飛ばしてくれた。
去り際に頬にキスもしてくれてきっと素敵な男の人と巡り会えるだろうな、私と違ってね?