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幻影道R 第七巻  作者: SAKI
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「普通の垣根を越えて」その3

「なんでアンタがここに!?」


 私を発見すると絶叫するような大声で肩を掴む、マズイ・・・私が行方不明なのは知られてるし何ならアスカちゃんが報告した可能性もある。だけど私はここにいる、ということはユイさんにあらぬ疑いが降りかかる!


 私は弁を述べようとしたが更に最悪な事態が襲った。


「アンタ邪魔よ」

  

 それは何といつも夜しか帰らないユイさんがお昼で帰って来てしまったのだ。もう話す云々の事じゃない、ここからどう発展するかによっては私達は詰むことになる。


「何よアンタ、何でユカリちゃんと一緒にいんのよ?」


 だが事態は最悪と言ってもいい修羅場と化していた。サナエちゃんはこの光星に務める検問所の所長であり此処ら一体を守る衛兵の隊長たま。


 この人達の厳しい取締のお陰で今日まで平和だと言っても過言じゃない。


「私はユカリちゃんの知り合いよ」


「ふーん、知り合いね・・・アンタみたいな女聞いたことないけど?」


「それはそうよ、最近知りあったんだから」


「ならどうしてこんな隠れ家的な場所でひっそり暮らしてんのよ?アスカが泣きながら探してたのよ?」


「そんなの個人の自由でしょ?アンタみたいなお偉方には分からないと思うけど」


「あ?」


 やばいやばい!完全にお二人共臨戦態勢だよ!?


 私はどう間に入ろうとおどおどしていると二人は喧嘩腰で激しい口論している。


「ったく減らず口が止まらないわね」


「ふん、用がないならとっとと出ていきなさいよ」


 ユイさんも妙にカリカリしてるのか眉間に皺が寄っている、それでも逃すまいと噛みつくように私の前に立ちはだかる。


「ワケを話しなさいよ、アンタ・・・もしかして例の【殺し屋】?」


 ピンク色の髪に鋭い目付き、今まさにその特徴に当てはまることを指されたがユイさんは無表情だ。


「何言ってんのよ、私は冒険者よ」


「そんなの嘘よ、アンタの服闇討ち武器しかないじゃない」


 鋭い観察眼でその言葉にユイさんは出会った頃の純白な服装ではなく黒ずくめの衣装だ、多少舌打ちをするもすぐに冷静になる。


「そうね、でもこれは化け物を一瞬で片付けるのに使うのよ」


 ユイさんはそう言って胸元から鋭利に尖った五センチくらいの針を取り出した。


「おっぱいに何仕込んでんのよ」


「女は色んな収納があるからね」


 誇らしげに語るけどこれって事態が悪化しそうな……


「ふ〜ん、なら全部調べればアンタじゃないって頷いてあげる」


 それはあまりにも良くない方向へ向かっている、詰問所に連れて行かれたら完全にバレてしまう、最悪の場合その場で処刑まで片道切符を手に入れてしまうのではないか!?


「あ、あのさ!」


 私はそうなることを予想して我慢できずユイさんを庇うように前に立つ。


「ユカリちゃん?」


 私の予期せぬ考えにユイさんは何かを訴えているような気がする。本来ならサナエちゃんに突き出すのが常なのだが助けてくれたりご飯や服を何不自由なく暮らさせてもらっているからか敵意はすっかり抜け落ちて見殺しになんか出来るはずない。


「私……ユイさんと一緒に“冒険者”をやることにしたの!このまま頑張っても落ちぶれていくだけだから普通じゃない事したくて近くにいた人に話しかけてみたらいつの間にか何日も経ってたみたいで」


 私は覚悟を決めて大胆に発言する、どうせこのまま空想の憧れを抱くより手に届く憧れを目指してみたい。偽物の笑顔が何処まで通用するか。


 だけどサナエちゃんはあまり納得してくれていないみたいで訝しげな表情でユイさんを怪しげに見つめていた。

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