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隣になった学年一の美少女はゲーム内では俺の部下だった。平穏に暮らしたいからバレない様にしているけど、会う度話し掛けられ困っています。  作者: サイトウ純蒼
第九章「二連覇を目指して!!」

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71.俺、勝つよ。

(やはり相手は『竜神団』か……)


 拓也は朝起きてすぐに確認した『ワンセカ』を見て思った。

 お互い全勝。前回の大会を再現したかのような最終戦。ただ違うのは前回よりもさらに強力になった『竜神団』に対し、『ピカピカ団』は様々な点において不安要素を抱えていた。


 そのひとつ目の不安要素に拓也が気付く。



(あれ? 見えない……?)


 毎回、昨日まですべての戦いの状況を頭に入れると、強弱はあるにせよ必ずと言っていいほど浮かんでいた『勝利への道』。しかし何故かこの大切な最終戦になってそれが浮かばない。



(どうした落ち着け、落ち着いて考えるんだ)


 拓也は机に置いたアイスコーヒーを一口飲み、大きく息を吐いてから再びスマホを見つめる。



(分からない……)


 まったく何も浮かんでこなかった。

 感じるのは敵の強力なメンバー。最新のキャラで固められた無駄のない陣。ランカーも多く所属する最強のギルドが、まるで分厚い壁のように拓也の前にそびえたつ。



(どうして、どうしてなんだよ!! ここに来て!!!)


 拓也は一度スマホとPCの電源を切り、床に座り込んで大きく叩く。絶対に負けられないと臨んだ最終戦で指揮がとれなければ団長として、いやひとりの人間としてそのすべてが無駄になる。

 結局拓也はいつもの『勝利への道のり』が閃かないまま、必死に考えて何とか時間までに指示を出した。



 そして運命の最終戦が始まった。


『竜神団』団長の龍二ジリュウは、開始と同時に本アカの『デスコ』に敵大将と副将の番号を書き込む。そして軍師のアッシに対して指示を出す。



『敵の役職持ちは以上ですべてだ。まずここを徹底的に潰す指揮を頼む』


 黙り込む『デスコ』。

 アッシは言われた通りに『ピカピカ団』副将に向けて相性のいい味方へ攻撃の指示を出した。



(ほんとだ。すべて役持ちじゃん……)


 そして開戦早々、団長ジリュウが指定した敵はすべて役職持ちであることが判明した。


『やったぞ、やったぞ!! 軍師アッシ、このまま徹底的に潰してくれ!!!』



 ひとり喜ぶ団長をよそに、団の間には微妙な空気が流れていた。



 ――どうしてこんなにピンポイントで役持ちを引けるんだ?


 誰もが思い、そして誰もが口にしないこと。


(スパイ? それとも何か不正行為とか?)


 団の皆が不安に思い始める中、ジリュウの指示で次々と『ピカピカ団』への攻撃が続く。




 対する『ピカピカ団』でも動揺が広がっていた。


『いきなり役持ち当てられたぞ!?』

『めっちゃ引きいいじゃん、相手!!』


 開始早々、役職がバレた『ピカピカ団』は敵の猛攻撃に苦しんでいた。

 スコア的にはいきなり一方的な展開。まだ攻撃をしていなことを考慮しても、開きすぎたポイントが『ピカピカ団』の空気を不安の色に染める。

 そしてそれ以上に団長タクの双肩には鉛のような重いプレッシャーが圧し掛かっていた。



(何も思いつかない。何も浮かばない……)


 戦闘が開始されても、いつものような采配が浮かばない拓也。

 絶対に負けないと気合を入れて臨んだ最終戦に、全くと言っていいほど何もできない。自分自身が情けなくなる。苦し紛れに思い付きで数名に指示を出してみるが、予想通りの敗北。


『ピカピカ団』では初手から猛攻撃を仕掛けることもあるタクの敗北に、更に動揺が広がる。拓也は悩んだ末、皆にメッセージを送った。



『指示を待てる人は待ってください。時間がない人は自分の判断で行って貰っても結構です!』


 一気に静まり返る『デスコ』。ここからしばらく『ピカピカ団』の動きが止まることとなる。





(どうした? 全く仕掛けて来ない?)


『竜神団』軍師のアッシは、あまりにも静かな敵を見ながら不気味に思った。

 自軍がいきなり役職を引き当てると言う運の良さや、敵の初撃を防衛したことなどもあるがこの静寂は却って不気味にすら感じる。

 ただ団長のジリュウは全くそんなことを気にせず『デスコ』に書き込みを続ける。



『いいぞ、いいぞ!! 俺達の勝ちだ!! もう優勝間違いなし!!!』


 龍二は『ピカピカ団』に潜らせてある『どらごん』を使って敵の内情も把握している。


(何故かあの拓也が采配がとれなくなっている!! やはり最後になってこの俺の強さに気付き怖気づいたか!? くくくっ、俺は王者のライオン。弱ったウサギも全力で狩る!!!)


 龍二ジリュウ軍師アッシに対して猛攻撃を指示した。





 夕方。ほとんど動かない『ピカピカ団』。スコアだけ見れば『竜神団』の圧勝である。


 拓也は朝からずっとスマホとPCを眺め続けているが、依然何も変わらなかった。

 全くと言っていいほど閃かない采配に、すぐにバレる役職。そして懸念していた『どらごん』と言う団員もログインはしているものの全く反応が無い。絶対に勝たなきゃならない勝負に何故か歯車が合わない。


 ドンドンドン!!


 拓也は床に頭を何度も叩きつけて自分の不甲斐なさを責める。



(俺はやはりダメ人間なのか……)


 そう拓也がほんの少し諦めかけた時、持っていたスマホに一通のメールが届いた。






「涼風さん、良かったですね。成功です」


 夕方過ぎ、病院の個室で待ちくたびれて眠ってしまっていた美穂に、先のベテラン看護婦が笑顔で言った。

 長い手術。緊張と恐怖で昨夜はほとんど眠れなかった美穂。皆の願いが届いたのか、無事弟の手術が終わったようだ。


 思わず赤くなる目。同じ部屋にいた美穂の両親などの家族も喜びの表情を見せている。



「ちょっと、ごめん……」


 弟の手術が成功だと分かった美穂は、すぐに開始されている『ギルド大戦争』最終戦の途中経過が心配になった。拓也が指揮をとっているから大丈夫だとは思うが、副団長である自分が全く何もしないと言うのも悔しい。


 美穂はスマホをそっとポケットに入れ、携帯の使用が認められている病院の休憩室へと向かった。



「うそ、何これ!?」


 思わず口に出てしまった。

 拓也が指揮する『ピカピカ団』は圧倒的大差をつけられて負けていた。


(負けている!? 木下君が、どうして……?)


 既に夕方過ぎ。まだ多くの団員が行動していないとはいえ、このままでは負けてしまう可能性もある。美穂はすぐに戻らなければならない。思いを込めてひと言だけ拓也にメッセージを送った。




 ひとり重圧に潰されそうになりながら孤独に戦っていた拓也。

 その彼のスマホに不意に副団長の美穂からのメッセージが表示された。



『頑張って、木下君。私がついてるよ!!』




(涼風、さん……)


 それを見た瞬間から涙がボロボロと溢れ出る。



(涼風さん達が、文字通り命を懸けて戦っているのに、俺は、俺が彼女に心配かけて……、何やってるんだよ、俺はっ!!!)



 その一言でまるでいつもみたいに美穂が隣にいてくれているような気持ちになる。いつもの様に明るい笑顔で隣にいる。

 拓也の涙がぽとぽとと机に落ちる。Tシャツの袖ももう拭く場所がないほど涙で濡れている。


 美穂が応援してくれている。

 彼女が傍にいてくれている。


 拓也は天井を向き、両手で何度も顔を叩くと気合を込めて言った。



「俺、勝つよ」


 ふたたびスマホを見つめた拓也の脳裏に、今日初めて『勝利への道筋』がはっきりと浮かんだ。

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