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隣になった学年一の美少女はゲーム内では俺の部下だった。平穏に暮らしたいからバレない様にしているけど、会う度話し掛けられ困っています。  作者: サイトウ純蒼
第三章「君と一緒なら」

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18.神軍師、拓也。

 自信はあった。

 古今東西様々ないくさの資料を読み、その戦略、陣形、戦術をどん欲に学んだ。ゲームの中の戦いなので実際の戦術がどの程度役に立つかは未定だったが、それは確実に拓也の自信となって現れた。

 そしてSNS、ゲーム内で広げられる論戦に実際の戦い。それらを常に見ては頭の中で「自分ならば」とシミュレートし続けた。


 そして今、それらはすべて拓也の血となり骨となっていた。

 足らないのは実戦経験だけ。

 そんな不安も一緒に傍で戦ってくれる美穂ミホンのお陰で吹き飛んでいた。




「『強撃きょうげきの陣』で行きます。パテはミホンさんが……、ヨッシーさんが……」


 拓也は不思議なほど落ち着いて初陣を指揮した。

『ギルド大戦争』が開始されるのが午後12時半。それまでに隣に座る美穂と『デスコ』でしっかりと相談し、そして団員にパテや配置などの指示を送る。


 初めての軍師を仰いで臨む一戦。

 しかし『ピカピカ団』は先までの中級ギルドではなく、実績こそないが既に上級ギルドの仲間入りを果たしていた。

 初戦の相手は下級ギルド。指揮なしでも勝てる相手。でもただ勝つだけではいけない。どれだけ効率的に相手を倒し、より多くの点をもぎ取るかが今後の勝負の分け目となる。



『ヨッシーさん、敵12番、お願いします!』

『了解です!!』



 戦が始まると拓也は迷いなく団員に指示を出す。

 力が拮抗したギルド同士なら様子見を兼ねて夜に勝負をすることが多いのだが、力差のはっきりした敵を相手に、始まった瞬間拓也の頭に完勝への道がはっきりと浮かんだ。



『シンさん、敵6番、お願いします!』

『了解!!』


『hishiさんは、敵の……』


 開始直後に次々と団員に指示を送る拓也。昼食を食べながら隣に座っていた美穂が驚きと共に拓也に声を掛ける。



「ね、ねえ、大丈夫なの?」


 拓也は少しだけ美穂の方を向いて小さく『大丈夫』という意味の笑顔を向ける。美穂はそれを見てすぐにスマホをしまい、そして一緒にいた陽キャと笑いながらお昼を食べ始めた。




(凄い、団長って、もしかして神軍師……?)


 学校の授業が終わる夕方までにはほぼ決着がついていた。

 戦力差こそあったものの、冷静な分析、的確な指示、そしてほぼ事故ることなく大方の戦いを終え大勝モードとなっていた。残りは恐らく社会人プレイヤーであろう、夜のプレイ希望者が指示通り動いてくれれば完勝である。


 美穂はこれまで見たことがないほどの高得点のピカピカ団を見て体が震えた。

 外部連絡ツール『デスコ』でも初戦の戦いを絶賛する書き込みが埋め尽くす。



『すっげー、戦い!! 完勝だよ!!』

『団長、お見事!! 本当に初めての指揮?』

『これ上位も行けるんじゃねえ?』


 ミホンは夕方の放課後のクラスを見渡す。

 既に拓也は帰っていない。出来れば今日も拓也の部屋に行って一緒に戦いを楽しみたかった。



(でも今日はバイトなんだよね……)


 突然入った読モのバイト。課金する為には行かなければならない。美穂は『デスコ』の役職部屋に『今日はお任せします!』と書き込み、急ぎ学校を出た。






『凄いよ、団長っ!! 19位よ、19位っ!!!』


 翌朝、拓也は起きてからまず通知欄にあった美穂のメッセージを見た。



(19位か、そんなもんだろうな……)


 拓也は冷静に昨夜の戦いを分析する。

 戦力差はあった故か、少し指示が雑になった感は否めない。初めての指揮ではあったが、反省するところが多い。



『昨日はちょっと指揮が雑だったところもあるんで、今日はしっかり出すね』


 しばらくして美穂からのメッセージが届く。


『雑? どこが? 完璧だったよ!!』


 拓也はちょっと笑ってから感謝の言葉を美穂に書き込んでスマホを閉じた。




 この日以降も『ピカピカ団』の快進撃は続いた。

 新たに集まった団員達個々の力は高いとして、それを見事に引き出す団長タクの手腕が戦況を優位にしていった。所々で負けそうな戦いがあっても、終わってみれば大勝している。



『ピカピカ団、やばっ!!』

『何なん? あれ?』

『あのタクさんが軍師やってるんだってよ』


『ワンセカ』の一般掲示板には彗星の如く現れ快進撃を続ける『ピカピカ団』への驚きの書き込みで溢れた。





『今日は「強狭きょうさの陣」で行きます。パテ、配置の指示は午前中に出します。攻撃指示はいつも通り順次夕方までには出しておきます。今日勝てば予選突破、頑張りましょう!』


 予選も大詰め。

 ここまで全勝のピカピカ団は今日勝てば予選通過、ベスト8に入る。

 流石にここまで来ると対戦相手は強ギルドばかりになるが、拓也は自分を、団員を信じスマホとにらめっこする。



「団長。今日、勝てるかな……?」


 その夜、拓也の部屋にやって来ていた美穂が心配そうに言う。ここに来て初めての苦戦。まだ戦況は有利だが今後の戦いの結果によっては敗北する可能性もある。



「ここが勝負だな。よし、俺が大将を叩くっ!!!」


「うん、団長、頑張れっ!!」


 美穂も拓也を見つめて応援する。



 団長タク対敵大将の一騎打ち。

 後に予選突破の大きなポイントとなるこの一戦は、観戦していた団員達皆が忘れることができない戦いとなった。



「うそ、マジで……!?」


 隣でスマホを見ていた美穂が驚きの顔をして言う。

 勝負は最初のターンでついた。拓也のスマホの画面には相手の大将のパテが倒れている姿が映し出されている。終わって見ればタクの一方的な先制攻撃、圧勝。拓也が言う。



「敵大将は確かにSSRを並べ隙がなさそうなパテだけど、火力と素早さに全振りして上手くハマれば叩けるかなと思ったんだ」


 落ち着いて解説する拓也に美穂が驚いて言う。


「ハマらなかったら……?」



「負けてたよ、一方的にやられてたはず。だって紙防御だもん、俺のパテ」


(なんで、何でそんなに自信持って戦えるの……?)


 美穂は拓也から大丈夫と念を押された戦いですら毎回ボタンを押す指が震えるのに、団の運命を決めるような戦いでもさらっと勝ちを取る拓也が信じられなかった。

 そして大将を失った相手ギルドの崩壊が音を立てて始まった。




「か、勝ったあああああ!!!!」


 午後10時を過ぎた頃、ようやく『ピカピカ団』が勝利をおさめ、そして初めての予選通過が確定した。嬉しさ爆発の美穂が拓也の手を取って喜びを全身で表す。



「やったよお!! やった、やった、予選通過だあ! 凄いよ、団長っ!!!」


 拓也も初めて乗り切った予選の戦いを終え、これまで経験したことのない疲れとそして嬉しさを感じていた。



「ありがとう。涼風さんのお陰だよ。本当にここまでこれたのは」


「何言ってるの、みんなのお陰でしょ! ほら、『デスコ』も凄く盛り上がってるよ!!」


 美穂はそう言って拓也の部屋のPCに映る『デスコ』の画面を見る。そこには初めて予選を通過した団員達の喜びの書き込みで溢れていた。




「あれ、私、どうしちゃったんだろ……」


 その声に拓也が美穂を見ると、目から涙が流れていることに気付いた。


「お、おい、涼風さん!?」


 焦る拓也。美少女が隣に座って涙を流している。美穂はすぐに服で涙を拭くと立ち上がって言った。



「大丈夫、私、帰るね。もうこんな時間だし」


 時刻は午後10時を過ぎている。高校生が出歩く時間ではない。


「あ、ああ。送るよ」


「ううん、大丈夫。大丈夫だから。ありがと」


 美穂はそう言うと部屋に掛けてあったジャケットを着て玄関へと向かう。拓也は見送りながら言った。



「ありがとう、涼風さん。本当に一緒にいてくれて助かった」


 美穂は靴を履きながら答える。


「何言ってるのよ、団長。凄いのは団長だよ。それにまだ明日一戦残ってるから。気を抜かないでね!!」



「ああ、もちろん。明日からもまた頼む」


「オッケー!!」


 美穂はそう言うと手を振って帰って行った。




(本当に嬉しい。大変だったけど)


 拓也はひとりになって改めて予選通過を喜んだ。

 そして予想以上に指揮が疲れることも分かった。常に変化する戦況に合わせ指揮を変え、戦略を練る。事故に一喜一憂しここまで来た。




(疲れたけど、なんか眠れないな……)


 夜ベッドに入った拓也は興奮の為かなかなか寝付けなかった。

 時刻は午前2時。そして気になって手にしたスマホに団員からのメッセージが入っていた。



『明日の最終戦の相手、「竜神団」だって!!』


 それは『ピカピカ団』同様、今回のイベントで台風の目として話題になっていた強豪ギルドであった。

お読み頂きありがとうございます。

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