物仏交換
未来、人類はワームホールを用いて無数に存在する並行世界にアクセスし、情報や物質をやりとりすることが可能となった。
無数の並行世界の中には酸素ではなく塩素を吸う世界、石と鉄の代わりに水とガスで文明を作った世界、体を持たず精神だけの生命が存在する世界、など奇妙奇天烈な世界が存在した。
人類の誰かがあることを思いついた。「これほどまでに奇妙な世界がたくさんあるなら、こちらの世界で貴重な物質も向こうでは無尽蔵にあるのかもしれない。並行世界から資源をいただこう。」
人類はワープホールを繋ぎ、一瞬にして並行世界から大量の石油やウラニウムを得た。向こう側の平行世界には次のような文面を送った。
「我々は燃料として石油やウラニウムが必要な種族です。幸いにもそちらにはそれら貴重な資源が無尽蔵に存在しているようなので、少々お裾分けしてもらいました。ありがとうございました。」
それからしばらくのことだった。世界中で奇病が蔓延したのだ。老若男女問わず、昨日まで元気だった人間が突然死んでしまう。誰も彼も体には異常はなく、命だけが抜けているようだった。医者や科学者は頭を抱えた。
そんなある日、ワームホールの先の世界から手紙が来た。
「我々は食料として人の精神体、魂が必要な種族です。幸いにもそちらには貴重な魂が無尽蔵に存在しているようなので、少々お裾分けしてもらいました。ごちそうさまでした。」