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7・もちろん狩りも忘れちゃいないさ

 麦播きが終ると冬の気配がしてくる。


 ここはどうやら根雪になるほどは積もらない場所らしく、冬の野菜なども栽培されている。


 そして今年は魔物狩りもそこに加わっている事から、農閑期のこの時期には俄か狩人が増えることになりそうだ。


 素材が増えるので狩人が増えるのは良いのだが、それがベテランならともかく駆け出しとあっては色々考えなければいけない。

 当初から狩りに参加したメンバーは危なげなく狩りを行っているようだが、新人を指導できるほどの余裕がある訳も無く。ちょうど播種機の製作の大部分を大工に丸投げ出来た俺に声がかかるのは当然だった。


 また新人たちを連れて狩りに出る。


 冬の森には兎の姿はない。いや、実際には居るのだが、春から夏にかけては白い毛で活発に動くのに対し、冬は茶色い毛に生え変わるため見つけにくい。更にはあまり動かなくなる。

 肉としては今の時期が食べごろであり、巣穴を探したり動きが鈍い所を仕留める事になるが、新人を連れて巣穴に近づくのはあまりにも危険だろう。


 猪はどうかというと、季節に関係なく凶暴に動き回ることが多い。問題はそのもとから薄暗い色合いの毛におおわれた姿が冬の薄い日差しではさらに見えにくく、発見が遅れる事だ。


 出来る事なら威力のある弓でもって仕留めたいところだが、ドワーフの馬鹿力を持つならまだしも、この村の普人たちには強弓は引けない。そもそも、弓を扱えるモノ自体が少ないのだが。


 出来るだけよく当たる弓。そして威力も求めようとなるとコンパウンドボウになるだろう。


 普通の弓というのは弓の左右いずれかに矢を番えることになるが、大きくオフセットさせたものでない限り、長期間の修練を積まなければなかなか飛ばすことも難しく、的に当てるなどそれ以上に難しい。


 それを短期間でマスターするには、クロスボウ同様に安定した台を設けてまっすぐ飛ぶ位置、いわば弓のど真ん中に矢を番えるようにすればよい。


 それならクロスボウで良いではないかと思うだろうが、クロスボウは弦を引いて固定させたうえでボルト(矢)をつがえる必要がある。しかも、よほどうまく作らなければ弓ほどの長射程にはならない。


 そう言えば日本ではクロスボウによる殺傷事件が多発した頃があったか。


 なぜクロスボウが規制されないのか?不思議に思ったものだが、火薬や空気で銃弾を撃ち出すものではないから銃刀法の規制を受けず、かといって、そもそも狩猟での弓やクロスボウの使用が禁止されている事から競技以外での利用が無いという前提があったからのようだ。


 だが、実際には弓やクロスボウは普通にネットで販売されており誰でも購入可能だ。規制が必要ない理由などない。

 かと思ってみていくと、弓道やアーチェリーへの影響を懸念して規制に消極的な意見まである始末。


 だが、そもそもが狩猟が禁止である以上、日本で弓やクロスボウを量販する意味などない。競技があると言っても、そもそも弓やクロスボウにも専用のメンテナンスが必要な事を考えれば、専門店が店頭販売し登録管理すればそれで済む話ではなかろうか。


 競技があるというなら、いや、そもそも、競技の為には自治体や学校、企業の組織するクラブでの活動が主となるのだから、そういう組織への登録制にすれば何の問題も無い。包丁やのこぎりの様に規制が出来ないという話にはならないと思うが、何故出来ないのだろうか?


 そもそも、銃規制が厳しいと言うがそれも全く知らないモノによる勝手な偏見でしかない。猟友会や射撃クラブに問い合わせれば快く相談に乗って貰えるし、銃の所持も警察の面談をパスすればそれで良いわけだ。自動車免許ほどの費用も手間も必要ない。狩猟免許も2日程度の講習で取得できるし、銃の講習もそこで同時に行われる。


 単に知らないから手間だ、難しい。持てないと思っているに過ぎないのが現状だ。実は自動車免許より簡単だ。

 最初の取得だけが難しく、その後は重度の違反や重大事故でも起こさない限りどんな危なっかしい運転をしようと全く車の知識が無くエンジンを焼き付かせる様なドライバーでも平気で免許が更新可能な危ない制度より、健康診断や面談、銃弾の購入申請などその後の制約が厳しい方がマトモではないだろうか?


 閑話休題


 さて、そんなわけで作るのはコンパウンドボウでも比較的特殊な三角ボウというタイプだ。


 三角ボウは弓の真ん中に矢を番えるスペースを設けており、見るからに最も練習が必要なさそうである。

 と言っても、現代のアーチェリーに使われるボウ(弓)自体が軍用のそれではなく、狩猟や競技に特化した改良を施されており、伝統的な形状を前提とした和弓に比して当てやすくなっている。

 その為、コンパウンドボウに限らず、アーチェリーのボウ(弓)か矢を番える部分がオフセットされ、矢が弓の中心になる様になっているのだが。


 ただ、構造的に偏芯させるというのは作るうえで難度が上がる。それならば初めから二股のリムを持つ三角ボウの方が作りやすいだろう。

 

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