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外伝5 吾は蒼空の魔王ヒニューである!

 私の事を魔王などと失礼な呼び方をする者が多数出現してしまった。


 魔族ならまだしも魔王である。どうしてそんなことが言えるのか私には理解できない。私は魔王などと呼ばれる謂れはない、れっきとしたパンノニアの騎士である!!


 だが、そんなことは良い。


 ここ最近はダルが10機に増えた事で、ドワーフだけでなく普人にも偵察の任に当たってもらおうと思ったのだが、誰もやろうとはしなかった。

 その事を制作者であるマッツにも相談したのだが、私の運用に呆れているらしい。


「大山脈の3倍の高さで飛ぶことを要求したのか?あんな極寒で空気の薄い世界を飛ぶようなモノ好きは早々居ねぇだろ。まあ、2倍までは想定の範囲だったが」


 と、呆れたように言われてしまったが、そうか?私にとっては普通の事だが。

 確かに、ドワーフの中にも厚着をして飛ぶ変わった奴がいるとは思っていた。

 そんな高空において普人を飛ばすために様々なのもが用意された。何かよく分からん筒や冬でも汗をかきそうな服まである。あんなものを着てどうしようというのか理解できないが、ドワーフの中にも厚着を求める者がいる始末だった。どれだけ虚弱体質なのかと呆れるしかない!


 だが、そうした重装備を施せば普人でもあの高さを飛べるようになった。そもそもマッツによると、高空を飛ぶために厚着をすることを考慮して、良好な操縦性を実現したそうだが、良好な操縦性にそんな目的があったとはな。

 そのおかげもあって、東方の大河や南方の港の偵察は常時可能となったが、私のようにしばらく上空に留まって観察するのはドワーフでも尻込みしている。そんなに大変か?

 


 広域にわたる監視体制が整った事でダータの動きも予測しやすくなった。そのおかげもあって前線ではフェヂケやシェレシュにラックを取り付け、小型爆裂結晶で騎馬軍団の隊列を薙ぎ払う事も容易である。

 なにせ、ダータの連中が動く前に後方での物資搬入や飛竜や馬の移動があるのだから、それさえ分かればこちらは事前に準備してダータが動くのを待てば良いだけだ。これまでとは準備に割ける時間が違う。


 そして、ダルでの偵察だけでなく、私自らシャシュを駆って後方かく乱を行っている。


 シャシュはとても良い機体だ。外見以上に機体容積が確保されている上、新開発の圧縮魔力結晶を用いることでこれまで以上の長時間を飛ぶことが出来るようになった。

 だが、この圧縮結晶にも欠点がある。

 あくまで決まった形にしか成形できないとかで、シェレシュは機体の真ん中をダクトが通り、魔力結晶の収納スペースがイビツなため、大型の圧縮結晶が積み込めず、これまでの魔力結晶と大差ない飛行時間となる。

 では、胴体にダクトのないフェヂケならばたくさん積めるだろうって?


 そうなってくれればよかったのだが、フェヂケは軽量な機体であるがために搭載許容量の限界も低い。そうなると、いくら空間が多かろうとも積み込める量には限りがある。結果的に、圧縮した分重くなった圧縮結晶を積むと、ただ余剰空間が増えるだけという締まらない結果になる。

 そのため、フェヂケに代わる圧縮結晶に対応した新型機を画策していると聞いたが、それはシャシュの様な平べったい機体に魔導機一基を内蔵したものになるという話だ。


 圧縮結晶の開発自体が私の熱い要望に応えるために生み出されたに等しく、今のところシャシュの為にある魔石と言って良い。

 それを使うために、シャシュに似た外観を持つフェヂケの後継機を模索しているのだろう。私好みであると嬉しい。


 さて、そんなシャシュについてだが、魔力効率の高いフェヂケ2の魔導機を二基搭載することで、シェレシュよりも高い推力を有する。総重量はシェレシュを越えるので、結局相殺されて同等の速度となっているが、魔力消費の少ない魔導機なので、二基合わせてもその魔力消費はシェレシュより若干少なく、搭載する圧縮魔石の多さもあって、最大7時間の飛行に対応している。

 

 この7時間の飛行を達成するのは銃弾を自衛用の100発程度に抑え、胴体内に小型爆裂結晶を詰め込んだ最低限の武装状態である。マッツ曰くの「クリーンな状態」というらしい。


 それでも、この武装でもって悠々と大河周辺の拠点や南方の港を攻撃できる利点は大きい。


 時にはその飛行時間を生かしてフェヂケに混ざって長時間戦場上空を飛び続けて飛竜やダータの騎馬に対する攻撃を行うのもなかなかに面白い。


 何といってもこちらは余裕をもって飛竜を追いかけ回せるので、敢えて射撃せずに飛竜に取り付けた結晶銃を撃ち尽くさせたり、術者や時には飛竜が疲弊するまでイタブル事も可能だ。本当に何でもできる機体性能には満足しかない!!


 そんな機体性能を生かして夏場などは夜明けから昼までは東方でちょっかいをかけ、基地に帰還後、今度は夕暮れまで南方へと飛ぶと言った、なかなか楽しい時間を過ごす事が出来る。


 そんな事から、私の戦果報告を疑う声も多く聞かれ、虚弱な連中は昼頃にはダウンし、午後の飛行について来ない事もザラだ。ついて来れる普人が居ないのは残念ながら仕方が無いとして、ドワーフですら大半が数日でダウンしてしまう。虚弱体質な連中しか我が飛行団には居ないのか?


 そんな不満をシャシュのデータ取りに来たマッツにぶつけてみると、なぜかミルクを飲むことを勧められた、全く意味が分からん!!


 だが、それでも私は毎日ミルクを飲みながら敵を求めて飛んでいる。そこに敵が居るのだから、騎士としては戦いを挑み続けることが使命である!!

当初の外伝3として構想していたのは、レンジェレフに展開した飛行隊にあこがれた少年が飛行士を目指す話であった。


ただ、あまりに普通で本編との関係も薄い事から沙汰止みとなっていたのだけど、感想欄にあったヒニューなら空中で魔力結晶を交換して飛びそうというアレが引っ掛かっていた。


さすがにそんな離れ業は無理があるので、新型機の登場と相成った訳だが、その新型魔力結晶を標準化するためのフェヂケ2の後継機という話まで出来上がってしまった。書かないんだけどね?


シャシュがテキストロン・スコーピオンをモデルにした機体。なのでフェヂケ2の後継機には、T-X(米次期練習機計画)を勝ち取ったT-7Aかな?単発だし、あれ。名前はパチルタ。ハンガリー語でヒバリ。

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