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50・物語は終り、それが日常となる

 すでに量産体制は敷かれたとはいえ、シェレシュの生産数は少ない。派遣されるのもヒニュー騎士がどうしても離さない4機を除けば18機しか無く、南部にも必要な事から派遣数は僅か6機へと減少した。

 代わりに改良型のフェヂケ2が6機加わることになった。


 フェヂケ2は魔導機を変更した結果、原形のフェヂケをベースにしながら機体を延長して33mm結晶銃の装弾数を100発に増やしただけでなく、魔力結晶の搭載量も増えた。更に軽銀魔導機の出力が低くなった分をファンの改良で何とかした結果、効率はロウカの毛より高くなるという恩恵まで受けた事から、フェヂケが1時間半しか飛べなかったところ、2時間半近く飛べるようになった。ギリギリ騎士団領近辺まで行動範囲に収めるという事で、シェレシュの不足を補う代打として選ばれた。


 そして、シェレシュ6機とフェヂケ2を6機引き連れて飛ぶことになったが、まずは整備機材を送らなければならず、国境を越えての輸送という事で色々大変だろうと、先に下見と輸送手順の確認のためにレンジェレフへと赴いた。


「何じゃこりゃぁ!」


 国境を越えてヤスオへ向かうと、昭和30年代の日本な光景があった。


 テーラーが荷車曳いてやがるぞ!


「おお?どこから来たんだ?ああ、魔導車か。驚くのも無理はない。馬なしで動くんだからな」


 そう言ってヤスオの警備兵が俺に自慢する。


 いや、俺はもっと大型のトラックやらトラクターを製作したが、結局飛行機の製造に造兵廠が集中したために生産数は極僅かだ。現在は軍の輸送が膨大な事もあってぺスタと前線や航空基地の間を結ぶ軍用連絡線以外では使用されていない。


 だが、目の前を走り抜けたアレならどうだ?牛や馬一頭で曳く小型の荷車を引いて走るそれならば、量産性はものすごく高いし、整備の行き届かない国境の道でも通れるだろう。


 ヤスオにて領主家や軍関係の面々と話し合った結果、アレをパンノニアまで乗り付けて機材の輸送を行う事になった。

 俺がレンジェレフを出て2年、この国では何があったんだろうな。


 そんな事を想いながら、こうも容易く難問が解決するとは思わなかったが、簡単に輸送問題が片付いた事で、2か月後にはシツィナへと12機を率いて飛ぶ事が出来た。


 シツィナへ飛んですぐ、師匠を訪ねてみた。


「おお、マッツじゃないか。元気してたか?見ろよこれ。ランペルというんだ。お前がパンノニアへ行った後な、エッペとケビが魔導機を使いながら、魔族認定を逃れる術を模索してできたのさ」


 と、教えてくれた。


 例の絶叫神官はともかく、冷静な神官をはじめとするシツィナの神官たちは魔導機を傀儡術と決めることに内心では反対していた様だ。

 そして、魔導機を荷車に載せるのではなく、テーラーの様に扱う。いわば手綱を握る事で魔物として解釈することで傀儡術ではなくテイム(飼い馴らし)であると定義したそうだ。

 当然、聖教会内で大きな問題となり、レンジェレフの教会は分裂。力を持った魔導機容認派の神官たちが東方聖教を立ち上げて聖教を追い出すという政変が起きていたんだそうだ。


 その為、車両は作れないが単軸の魔導車、テーラーならば作れることになり、牛馬に替わって荷車を引くために活躍しているらしい。確かに、魔導車を作るよりも簡便だし小型に出来るから費用も掛からないだろう。考えたもんだ。


 コウチンでまず普及し、今ではシツィナが魔導機生産の拠点となり、頑迷に魔導機を認めない西方聖教会地域からドワーフがこぞってやってくるようになったという。


 そして、魔導機を手に入れて各々がテーラーを作り販売しだしたところ、爆発的に売れて今の状況が出来たそうだ。


 基地整備の合間にコウチンへも顔を出したが、そこでは牛馬に替わってテーラーがプラウやハロー、播種機を曳いていた。あの二階建てだった脱穀機と唐箕が魔導機で駆動するハーベスターに進化していた。

 もちろん、単独で魔導機を取り付ける訳にはいかないが、テーラーによるベルト駆動ならば問題ないという。


「マッツはすげぇな。空飛ぶ機械作ったんだろう?」


 ケビにそう聞かれてどんなものか説明した。


「樽かよ。良く飛ばそうと思ったな」


 などと笑い話で盛り上がった。


 ちなみに、飛行機は飛竜のテイムという解釈になるらしい。爆裂結晶?飛竜が魔法を吐くなら問題ないそうだ。銃や鏃も魔法の一種として認められるだろうという話だった。


 そんなレンジェレフの変化を目にして基地へと戻り、せっせと基地を稼働させるように動いた。


「はぁ?ダータが内紛?」


 その話はまた急だった。


 何でも、ダータは内紛を繰り広げているという。


 南部で有力な飛竜の拠点を破壊された結果、東方諸勢力を力で統制していたダータではあったが、その力の源泉が崩壊した事で力の均衡が崩れたらしく、バラバラに動き始めた結果、騎士団領からレンジェレフを侵す状態が現出したらしい。


 実際、俺もシェレシュで飛んでその北方の状態を確認したが、散発的な迎撃はあったものの、大きな組織だった群に出会うことは無かった。


 地上でもすでにレンジェレフが優勢で騎士団領の取り込みまで目論んでいるとの事だった。


 だが、ダータがいつまた勢力を盛り返すかもわからず、レンジェレフも独自の竜騎士(操縦士)を有する必要があるとして、練習機のヴェレーブまでシツィナへ展開させて操縦士養成が始まる事になる。


「なあ、俺、農具づくりに戻っていいか?」


 練習機と共にやってきた義妹に聞いてみた。


「ダメに決まってるでしょ。レンジェレフでも作れる新しいフェヂケの開発やシェレシュの更なる改良、やること盛りだくさんだよ」


 俺はとんでもない事に頭突っ込んでしまったようだ。


 前世知識を生かして鍛冶師ライフが出来ると思ったら、いつのまにやらラジコン知識を生かした戦闘機開発を行っていた。


 ダータがいつ攻めて来るかもわからんからノンビリする暇もなさそうだ。


 ああ、コンバインを作りたいなぁ~

本編はこれにて完結になります。


10万字チャレンジ作品として始めたこの作品。何とか書ききる事が出来ました。


 最初に10万字という目標を設定した事で最初はダラダラと農具づくりをやって、負け組モドキな作品と化してましたが、10万字のための字数稼ぎと20年以上前の2クールアニメ時代のやり方をやってみたからです。


 ノンビリ始まって、次第に物語が加速していくやり方。出来ていたんだろうか?


 今回のテーマは飛行機。前作が空気銃だったのでいきなりぶっ飛んだ感はあるし、今から思えば車(戦車)や銃(魔導砲)を別にやるのもアリだったのかな?とは思うけれど、それは考えていくうちに、飛行機のための動力と武装を先に創り出さんと意味が無いという事になって、車や銃器をテーマにするならまた今度でも良いかと納得した結果です。


 内燃機関が無ければ、機関銃が無ければ戦闘機は作れないのだから、それらから手当てするのはまあ当然。


 ただ、まず飛行機とテーマを決めて初めて「あ、動力と武装どうしよう?」となったのは仕方のない事だった。


 ザラマンダ―にしたのは、テーマを飛行機にすると決めたのがようつべでラジコン飛行機の動画を見たからw

 プロペラ機では面白くないからダクテッドファンにしよう。でも、A10じゃあ2基もファンが必要だから何かないかな?と。

 トゥンナンに進化したのは単なる趣味。セイバーやファゴットは当たり前すぎて嫌だった。


 さて、明日明後日と昭和レトロなランベルがどうやってできたのか。教会ってどうなったの?をサラッと流して今回は完結となります。


 

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