表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/55

48・どうやら攻撃は成功だったらしい

 俺たちは来た時とは真逆にダーナ川に沿って北上した。


 そして、友軍からの誤射を避けるようにある程度北まで飛行したのち、そこから東へと向かってアクシュを目指した。


 ヒニュー騎士には勝手知ったる地域だろう。俺も一度だけ飛んだ空だ。


 次第にヒニュー騎士が高度を下げていく。


 そして、完全に日の出から朝へと時間が変わる頃、俺たちはアクシュの基地へと滑り込むように着陸していく。


 見た事も無い機体が基地へと侵入してくることに驚く顔もあるが、朝早くなのでまだ対空陣地に人が入っている訳でもなく、慌てて陣地へ走る姿も見られた。


 全機着陸して建屋の前へと向かうと事態を理解できない人たちがどんどん集まって来る。


 上空からも見えていたが、掩体に入りきらない機体が赤白問わず建屋の周りに駐機されているのがさらに良く分かるようになる。


 建屋前で魔導機を止める俺たち。


 パンノニアの徽章を描いているので敵ではないと認識しているだろうが、見た事が無い機体に何が起きたのか分からない。そんな感じで皆がこちらを窺っている。


「ヒニューが帰って来たぞ!」


 ヒニュー騎士が操縦席から立ちあがり、そう叫ぶ声が聞こえた。


 それを聞いて事態を呑み込んだらしい者たちが機体へと寄ってきて梯子を掛ける。


 フェヂケ用の梯子ではまったく長さが足りないので作業用のモノを探しに行く者も居る。


 俺やヒニュー騎士は構わずに機体から飛び降りた。


「マーリン!本当に新型機を連れて来たのかよ。まさか、すでにドロベタへ一発カマしたとか言わないよな」


 といって笑うドワーフ。


 そして、俺を見付けたシビンからの派遣組が駆け寄って来た。


「マッツ、また来たのか?」


 そう言って俺と機体を交互に見る。


「しかし、何だコレ。よく飛んだな、こんな樽が」


 毎度の事ながら、コレが日常となっているのでもう慣れた。


「ああ、コイツは空を飛べる樽だ。そこら辺のただの樽とはわけが違う」


 俺も敢えて否定はせずそう応えた。


 すぐに幾人かのドワーフは機体へと張付いているので俺もそちらへ向かう。


「なんでプロペラが二重にあるんだ?コレ」


「というか、結晶銃が2丁だぜ」


「翼のアレはなんだ?」


 あちこち覗いたり触ったり思い思いに言い合っている。


 そこへ俺が機体の説明をすると食いついて来た。


 昨日、いきなり飛ぶことになったのでここには整備用の機材など何もない。精々魔力結晶の交換と弾丸の補充が出来るだけだ。


 それでもドワーフ達は機体をあちこち触って何だかんだと言い合っている。


「マッツは何処だ!」


 ヒニュー騎士が俺を呼んでいるので、そちらへと向かう。


 どうやら今朝の爆撃についてらしい。


「お前からも説明してくれ」


 そう言われたので未明に飛び立ちドロベタとかいう街を攻撃した事を告げた。


「飛竜だ!」


 誰かがそう叫び、シェレシュに集まっていた人だかりは蜘蛛の子を散らすように居なくなり、各所からフェヂケのファンの音が響き渡る。


 それらが次々飛び立つ中でシェレシュだけがポツンと残されているが仕方がない。なにせ、ほぼ魔力を使い果たしており、戦闘への参加など無理だからだ。


 そして空を見上げると疎らに、組織だった群というよりは個々にただ飛んでいるだけの飛竜が見えた。


「朝、拠点から逃げた奴がさまよっているのだとすれば、術者は乗っていないだろう」


 ヒニュー騎士が基地司令官にそう言う。それもかなり自信ありげにだ。


 その自信に満ちた顔に司令官も反論が出来ない。


 そして、舞い上がったフェヂケが飛竜に取り付いたが、術者が操るような動きはしていない。どれもこれもチグハグにただ逃げ惑っているように見える。


「どうだ、事実だっただろう?」


 どうやら、その通りだったらしい。


 しばらくして降りて来たフェヂケの操縦士たちも口々に術者が居なかったと言い出したので司令官も確信に変わったらしい。


「ヒニューたちが拠点を破壊したと。ならば、まずは確認せねばなるまい」


 司令官のその言葉で何機かのフェヂケが南方へと向かう。


 1時間も待つとフェヂケは帰還した。


「ドロベタの街があった辺りには瓦礫しかなかった。飛竜の肉片が散乱して走り回るダータ共の姿があっただけだ」


「はい、ドワーフの言う通りです。飛行中、一度も術者を乗せた飛竜に会いませんでした」


 ドワーフと普人がそれぞれそう報告する。


 それを聞いた司令官は飛竜の増援や東からの襲撃に備える体制を命じた。


「ヒニューたちは戦果報告をもって一度ぺスタに戻り給え。その後、戦況次第では再び声がかかるだろう」


 司令官はここに我々を留めておく気はないらしい。


 ま、たしかにその通りだ。ここに居ても整備用機材が一切ないのでシェレシュは役に立ちはしない。一度ぺスタに戻るのが最善だ。


 渋るヒニュー騎士を何とか説得して俺たちはぺスタへと向かう。


「マッツ、騙されてはいないか?我々はドロベタの拠点を破壊したんだぞ」


 そう言って納得していないらしい。


「だが、他に拠点が無いとも限らん。シビンへ来ていた奴らの拠点がもっと北方にあるだろうし、他にだってあるかもしれん」


 そう言うと、それらも潰しに行こうと言い出すが、場所を教えろと言うと、動きが止まった。


「なぜ私が知っていると?ドロベタの拠点以外知りはしないぞ?」


 そう自信を持っていうので、ならば潰すのは不可能だと言うとむくれていたが、ぺスタで情報取集だとすぐに気持を切り替えて帰る気になったようだった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] そのうちヒニューあたりが空中で魔力結晶を入れ替えて長距離爆撃を行うとか言い出しそう(・_・;)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ