44・新世代機は名前も新世代だ
ぺスタに帰った俺が見たのは、なぜそうなるのかという不思議な機体や見るからにアルミにしか見えない素材といった、非常に驚く光景だった。
そこにはフェヂケをベースに2基の魔導機を載せた機体があったが、V字尾翼のままでそれをやったら失敗するのは当然というシロモノだったり、速度を出したくて主翼を切り詰めて不安定化した機体であったり、33mm結晶銃弾多数を装弾しようと機首を延長してバランスを崩した機体だった。
どれもこれも聞いた以上に酷かった。
いちいち説明したくもない程だ。更に、頭でっかちの魔導機を備えた機体もある。アレが母親が開発した新型魔導機だろうか?
「帰って来たね。堕ちた気分はどうだい?」
第一声がそれかい、母よ。
「まさか、兄貴が墜とされるなんて」
義妹は心配してくれて居るらしいが、何か目がおかしいぞ?
「さ、コレが軽銀だよ。新しい魔導機かアレを早くどうにかしてほしいんだけど」
うん、労ったそのすぐ後に早速作業やれと言われた。
明らかに直径の大きなファンを載せたせいでバランスがおかしくなってそうなフェヂケがあった。主翼を延長して魔導機の位置もずらしてバランスを取ってはいるようだが、とりあえず飛ぶだけは出来るという性能らしい。
まあ、そうだろうな。
そこにある失敗作の群を見ながら、まず、今造兵廠が求めるモノを書き出すことにした。
・33mm結晶銃を積める機体
・同銃の装弾数を最低100発に増やす
・空戦飛竜と対戦できるような軽快な機体
・軽銀製魔導機を動力とする
・爆裂結晶(大)を積んで敵地攻撃が出来る機体
かなり欲張ってないか?33mm銃を積んで100発は装弾したいのは分かるよ?
敵が空戦という概念を得た以上、こちらも空戦を真剣に考える必要があるのは確かだ。フェヂケは爆裂結晶を抱えた飛竜を攻撃する事を前提に作ったからな。
で?どうして爆裂結晶(大)抱えて攻撃に出向かにゃならんのだい?
「おお!マッツ!無事であったか」
バスト氏がやってきた。つか、知ってたよな?
さっそくバスト氏に疑問をぶつけてみる。
「なに、すでにダータを押し戻してはいるが、あくまで砦のバリスタが届く範囲に限られておるからさ。その新型マッツ銃を単発式にしたバリスタ銃を砦に据えているが、それでも射程は2㎞といったところ。敵が諦めるほどの戦果は出とらんのだ。その上、一方的に空から爆裂結晶が降って来るのではどうしようもなかろう?」
どうしようもないのは分かるし、攻撃機が必要な事も理解した。
ただ、それならばフェヂケの後継機と攻撃機を別に作ればよいではないか。
「フェヂケはロウカの毛という出費がデカくてな。いや、それはまあ良い。現状、フェヂケの生産に全力を挙げても飛竜を追い払うほどの機数を揃えられる目処が立たん。そんな状態でフェヂケの新型に加えて攻撃機?だったか。を作る余裕はないぞ?」
まあ、言いたいことは分からんではないんだが、一機種で戦闘も攻撃もって、こんな第一次大戦頃の性能程度の機体に盛って良い条件じゃないんだがな。まあ、見た目だけで言えば第二次大戦後に近いが、それは外見だけだ。
といってもここの連中が知る由も無いだろうが。
もちろん、戦闘攻撃機も作ろうと思えば簡単さ、He162からA10へとクラスチェンジすればすぐさ。
ダクテッドファンをその軽銀製でフェヂケの8割程度の出力とするならばほぼ外径に違いはない。それを2基搭載してH尾翼に変更し、機首もバランスを取って延ばす。主翼も幅を広げて面積を得る。
そうだな。主翼強度も魔物革を二重にして主桁にも補強で巻けば上がる。そうすれば十分爆裂結晶(大)を翼下に左右1発搭載可能だろうさ。
そう青写真を述べてみたが、バスト氏の顔色は晴れない。
「魔導機2基・・・・・・、いや、それでは生産性が・・・・・・」
なるほど、生産性を落とさないように魔導機は1基と。
どこまで無理難題を押し付けて来るかね。
「さて、そうなると、魔導機の出力と効率を洗いなおす必要がある。そしてダクテッドファンの効率も」
そう言って母親を見る。
「出力を上げたかったらロウカの毛と併用だね」
そう言うと、バスト氏がハゲそうにしていた。
予算的にも抑えたいらしい。本当に無理難題だぞ。
俺は少し考えたいと結論を保留した。
現在の背負い式では双発化が一番手っ取り早いというか、他に手段はない。
前世地球にはダクテッドファンを備えた航空機が若干数存在するが、電動飛行機は小型ファンを二基備えているのに対し、エンジン機が大型ファン一基となっている。
単発にするなら軍用練習機と同じく胴体中央にドンとファンを置くか?
たしかに、大きなブレードならば石で壊れることは無いかもしれないが、不安が無いでもない。
あれこれ考えてみたが解決策が浮かんでこなかった。
いっそ、第一世代ジェット機みたいにインテークを胴体貫通にするか?機首に口開けて、機尾に排気口があるヤツ。
そう思ってあれこれ悩みながら、まずは母親に必要な出力の魔導機を作ってもらう事にした。
出来上がったものを使い、魔物素材でスキュードプロペラを作り、それを10枚配置したファンを製作した。
デカかった。
ただ、推力はフェヂケに搭載したものの3倍はあるだろう代物が出来上がった。これなら単発でも可能か。
機体もこれまで同様、魔物素材をふんだんに使う事で軽量化を図る。軽銀も使用してみるが、使えるのは排気ノズルやフラップ類、脚部くらいかな。
「おいおい、何だよその樽はよぉ」
出来上がったのはサーブ・29トゥンナンに近い丸い機体だ。主翼が後退翼でないこと以外に違いは無いな。
あまりに皆が樽だ樽だと言っているので、名前まで樽にちなんだものになった。
マッツ・シェレシュ
ビール職人だ?お前らが飲みたいだけだろう!!