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39・不幸中の幸いだったが、負担が増えるばかりってどうよ

 見つけた飛竜をすべて撃ち落とした俺たちは黒煙立ち上るシビンへと向かった。


 黒煙のもとは俺たちが使っている宿舎の建物だった。


 飛竜部隊はフェヂケの掩体壕や弾丸掩体に全く興味を示すことなく建物だけを狙ったらしい。それが幸いだったが、ここにも現れたというのは色々問題だった。


「連中がどこまで西進できるのか考えないとぺスタも危ないんじゃないか?」


 そんな話になるのも当然だ。


 ここは大山脈から150kmほどの所にある。ぺスタまではあと100kmほどだろうか。正直、ダータがどれ程の飛竜を飼い馴らしているのか。それすらわからない俺たちにとっては脅威以外に何者でもない。


 今のところ、俺たちやアクシュの連中が墜とした飛竜だけでも30頭は居るはずだ。ん?もっと多いだろうって?

 得てして戦場での撃墜確認は誤認や重複が積み重なる事になる。撃墜報告数を素直に積み上げると67頭らしいが、それはさすがに盛りすぎていると思うんだ。

 そして、そこまで落とされたならば、飼い馴らした飛竜が200頭未満ならばすでに行動できなくなっていても不思議ではないが、今日まさに二正面同時攻撃をされてしまった。もっと多いと見て良いだろう。


 それに対してこちらは未だに34機だ。これではどうしようもない。


 今この瞬間もぺスタでは新たな操縦者養成が続いているだろうが、どう考えても今年中にモノになるのが50人程度。機体が120機。


 機体も無尽蔵に生産できるかというと、ロウカの毛というのがネックであってそう簡単ではない。本当に、機体だけでファンが作れなければ飛べないんだ。


 相手の数が分からない中でこれはキツイというしかない。


 と言っても、やるしかない事に変わりはない。


 本来、ドワーフならばさっさと次の土地を探せばよいのだが、パンノニアは魔族認定を受けた事で西方との交通を遮断されているため、どこかへ移動するという事が出来ない。


 ダータ?


 それは無い。


 なにせ、連中にとってドワーフも西方の普人族も関係なく敵でしかない。東方に山脈があるという事は、ドワーフみたいな奴らも居る訳で、実際、墜とした飛竜の術者が身に着けていた物を回収して調べてみると、スカルドのドワーフ同様、間違いなく鍛冶や錬金に優れた奴がダータにも居る事が分かった。


 その為、連中にとってドワーフも略奪や虐殺の対象であって、ドワーフのウデには一切興味が無い。そんなところに行ってどうするって?


 そんな訳で、俺たちもここで戦うしかない訳だ。


 とにかく、掩体は無事だったので機体を掩体へと滑り込ませる。


「これからは全機での出撃は無しだな。少なくとも4機は基地の防護に残した方が良い」


 今後の話についてその様に提案した。当然、反対なんか起きない。


 4機戦力が増強されたと思ったら基地の防護が必要になったので結局負担が増えただけとか、どんだけ負のループしてんだよコレ。


 そんな事を想いながら機体の点検をしておく。


 翌日も通常通りの哨戒飛行が行われたがさすがに何も起きることなく一日を終えた。


 それからしばらくそんな日が続き、新たに新人が2人やってきた。


 また編隊の入れ替えが行われたが、さすがに俺のところは変わりなくそのままだ。


 

 それからまた数日は何もなかったが、とうとうやって来たという知らせが入った。


「よし行くぞ!」


 気合を入れて空へと舞い上がり、知らせて来た編隊の後を追う。


 すると6頭ほどの飛竜の群が見えて来た。


 こちらも以前の失敗から全力出撃とはせずに8機でやって来ている。


「ん?あいつ、魔法使ってやがる」


 1頭の飛竜の背から火球がフワリと飛んだ。それ自体は脅威ではないが、近づき過ぎれば墜とされるかもしれない。


 さすがに飛竜の背で雷撃を使うアホは居ないらしい。


 雷撃であれば避けられないかもしれないが、そもそも、そんな事をしたらまず飛竜の翼や尻尾が被雷してしまうのは間違いない。


 一瞬ためらった俺たちだったが、様子を見ながら近づいて、銃撃に移る。


「弓だと?」


 攻撃のために接近した時、飛竜の背で弓を構える術者の姿を見た。


 機体を左右に振って狙いを定まらせないように飛びながらこちらは狙いを付ける。


 一連射お見舞いすると弓を引くどころではなくなったらしく、飛竜の操縦に専念するが、こちらはそれが狙いだった。

 妨害を受けなくなった事で更に飛竜に近づき、確実な一連射を浴びせると、尻尾の中ほどに弾が命中し、尻尾を半分失った飛竜が暴れて術者が投げ出された。飛竜もバランスを失いまともに飛べる状態ではない。


 それを見届けて次の目標を見定めたが、そこには新人が食らいついていた。


 すでにかなり弾を浪費したんだろう。飛竜はどこか余裕で飛んでいる。


 そして、新人がまた射撃した。


 あれ?発射速度が少し遅い?


 そんな事を思案ていると、曳光弾が飛竜の頭に命中して吹き飛ばしてしまった。


「いやいや。オカシイだろその威力」


 そんな事を叫んで辺りを見回すと、すでに飛竜6頭を撃墜し終えたらしい。


 しばらく哨戒してから基地へと帰り、新人に威力の秘密を聞いてみた。


「この機体には新しく開発した銃が積んであるらしいので、弾もこれまでの機体とは違うそうですよ」


 と言われた。


 実際に機体の銃口を見てみると、大口径化してないか?30mmとか35mmじゃね?まさか、バリスタ用爆裂結晶仕込んじゃったの?  

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[一言] 巨砲搭載航空機?! 某帝国のエースパイロットの生まれ変わり?
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