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37・空戦なんて初めてだよ

 この国の造兵監と云うのはどういう職種なんだろうか?兵器の生産や開発を行う部署ではないのだろうか。


 いや、普通に考えたらそうなんだろう。だが、造兵監という職が軍司令官職と混ぜ合わされている気がしなくもない。


 俺たちはまず、フェヂケが安全に離着陸可能な場所を探す事から始めた。


 なんせ、ぺスタ近郊から飛び立ってブスタやカレイに向かったのでは帰りはどこか他に降りないといけない程度の航続力しかないんだ。


 その為、飛竜の出没地域の情報とこちらが利用可能な場所を見極めていく必要があった。


 ブスタ方面はそのままブスタの西方、シビンの東に場所を見付けて、そこを拠点とすることになった。


 カレイ方面では同様に少し西のアクシュの畑を滑走路として整備することになった。


 こうしてまず前進基地の選定と整備が行われる中で、バスト氏の悲痛な叫びと共に俺たちはシビンへと飛び立つことになった。


 フェヂケの量産は続いているので何とかモノになった普人族や後発のドワーフ操縦者による部隊がアクシュへと後を追う形で飛び立っていったという。


 何とか整備された?シビンの草原には俺が指示した急造の掩体が12基すでにその姿を見せており、弾丸を保管する築堤に囲まれた保管庫や魔力結晶を置いておく倉庫など、様々なものが作られつつあった。


「まさか、ブスタがただのがれきの山とはな・・・・・・」


 偵察で飛んだブスタの町は既に瓦礫だった。その周辺の村もあるのかないのか分からない。


「んじゃあ、魔力結晶をまずここで積み込む事。弾丸はその後に築堤前の指定場所で装填するように」


 基地に帰ると基地の運用についての説明が行われていた。


 この基地にも対空銃座と兵士が配属されている。特に気を遣うのがその弾丸の取り扱いだ。下手にどこにでも放り出しておけば魔力結晶と反応して相互反射を起こしかねない。魔導車が大量導入されていても同じことは起きたかもしれんが、飛行機の場合はよりシビアだ。なんせ、車に比べて燃費が悪いから大量の魔力結晶を必要とする。


「魔力効率の良い魔石鉱山が大山脈で発見されたんだがな、発見されてすぐコレだよ。飛竜をどうにかしなきゃ掘りにも行けねぇ」


 魔力結晶を扱う普人族の一人がそんな愚痴を言っていた。


 すでにこの国は色々と追い込まれているんだなとようやく気が付いた。



 次の日から2機でコンビを組んでの哨戒が始まった。12機なので4組が1時間程度の飛行を午前に一度、午後に一度行う。後続が来ないことにはこの体制が続くことになるが、大量の後続なんて数か月は無理だと思われる。


 翌日から哨戒が始まったが、偵察に出て来た飛竜を追いかけたという事例は何件も報告されたが、組織だって攻撃に来た飛竜は今のところ居ない。


 俺も哨戒中に一度偵察に来た飛竜に出くわしてぶっ放してみたが、爆裂結晶を携えていないとなかなか命中しないのか墜ちなかった。


「でも、あれは翼に当たってだだろ」


 帰って飛竜と遭遇したことを報告したのち、編隊を組んでいるドワーフからそう言われた。そうかな?まあ、貫通したかもしれんよな。


 アクシュでも状況は似たようなモノらしい。相手の飛竜の活動が低調。また何かやらかさなきゃ良いんだがな。



 そんな心配をよそに今日も飛ぶ。


 飛びながら、機体の改良や銃の改良について考えてしまうが、こんな所に居るんじゃそれも全く手を付ける事が出来ない。


 V字尾翼は運動性が悪いと言っていたが、案外そうでもなさそうだし、ダクテッドファンも調子が良い。

 ただ、単純な速度性能ならばプロペラ機が上かも知れんし、整備性はあちらの方が上だろう。


 と言っても、相手の飛竜の速度が分からないんじゃ、どちらが良いかという結論も出せないんだがな。


 そんな暢気な日々が10日ほど続いたある日、とうとう飛竜部隊のお出ましらしい。


「へヌリの編隊が飛竜の群体を見たそうだ、全員準備しろ!」


 弾丸も魔力結晶も積載している掩体の愛機へと走る。


 無線が無いからどこに来たのか、あるいはすでに去ったのかさえ分からない。本当に不便な状態だが、それも仕方がない。


 一番早いのが飛行機による連絡便なのだから。


 準備が出来た機から次々と離陸していく。何処が滑走路と云うのも無いから無秩序この上ない。ぶつからなければどうとでもなるという状態だ。


 空に上がって東へ向いて進む。


 しばらく進んで小さな瓦礫の村を越えた。


 居た。南方へ向かっているらしいな。一部はどこかの村を攻撃したのかもしれん。多分10も居ないだろう。



 そんな飛竜の群へと横から突っ込んで銃を乱射した。


 一度の操作では10発しか出ない仕様にしたので、集中して相手を狙う。味方と衝突しないように気を配るのも忘れない。


 3射目の曳光弾の一団が飛竜へと突き進んでいく。途中、ばらけてしまうが、ちょうどその網で飛竜を捉え、3発が爆発しさらに飛竜の持って居た爆裂結晶の爆発も起きた。俺は慌てて操縦桿を引いて退避する。


 一度上昇して上から見るとすでに飛竜は2頭にまで減っていた。


 見ているうちに横へ逃げようとしたた1頭が火網に飲まれて爆発した。


 もう1頭は急降下を選んだらしいが、フェヂケの方が速そうだ。すぐに追いついてそいつも爆発させる。


 しばらく周囲を飛んで他に居ないか確かめてみたが、それ以上の飛竜を見ることは無かった。

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