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36・そりゃあ、大見栄切ってたらそうなるよな

 機体は次々と完成している。


 すでに操縦者が足らない状況だ。


 まずはドワーフ達で飛ばすしかなく、普人族の操縦者の育成は始まったばかり。パンノニア空軍の誕生はまだ先になるだろう。


 などと韜晦しているのは空中での命中率が異常に低いからだ。俺だけが当たらないならセンスの問題で済んだかもしれないが、他の連中も当たらない。


 かといって、地上で射線の確認をしても問題はない。


 これといった手の無い俺たちは実際に前線で対空戦闘を行う兵士から意見を聞くことにした。


「飛竜を撃つ時ですか?」


 いきなり訪ねてきて何を聞くのかと思ったらそれだったので呆気にとられたらしい。


「そうですね。ただ闇雲に撃つという場合もあるんですが、ここぞって瞬間を狙って撃ったりしてますね。ただ、出来ればその瞬間にもっと銃があれば当たる気がするんですけど・・・・・・」


 という回答が返ってきた。


 複数に聞いてだいたいその様な回答だった。


 結局、現状の3シリンダー毎分60発では瞬発火力に乏しいと。特に飛行機は本当に瞬間しか射撃タイミングが無いので余計に難しい。


 曳光弾が完成して更なる試験を行ってよりそれを痛感した。


「弾が曲がって行ってるんじゃないか?」


「ああ、弾が自ら的から逃げてやがる」


 そんな話になった。


 正確には標的も俺たちも動いているから射線が流れているのが原因なんだが、見た目上、弾が垂れ下がって的から逸れているようにしか見えなかった。


「聞き込み通りだよな。ここぞって時にもっと弾が撃てれば当たりそうな気はするぞ」


 そうなのだ。もっと撃てれば。


 しかし、2丁積むと重さは2倍になる。そう言えばあの7シリンダーはどうなっているだろうか。


 ふとそう思って例の7シリンダー銃の製作者を訪ねてみた。


「ん?ああ、アレか。弾の消費が早いってんでそのままだな。と言っても、軽量化策は講じてるからいつでも作る事は出来るぞ」


 まあ、ドワーフだもんな。諦めてはいなかったか。


 それは7シリンダーから5シリンダーに減らして軽量化したうえで、ラマーの信頼性を高めた代物だった。軽量化しながら剛性を引き上げているので毎分300発という性能は変わらない。


「既存の2割増しの重量でコレを仕上げたのか。フェヂケに積もうと思うが頼めるか?」


 そう尋ねると2つ返事だった。


 だが、弾丸部門からはクレームが付いた。


「兄貴さぁ、当たらないからって数撃とうとしてる?それだと弾がいくらあっても足りないんだけど?」


 マーヤがそう言ってニコヤカに俺を見る。非常に怖い。


「まて、マーヤ。誤解だから。確かに数撃とうとは思ってる。だがな。フェヂケには重量制限があるんだ。銃を変えたからって弾数を何倍にも増やせる訳じゃない」


 航空機銃にはその容積や重量から機体に積める弾数は決まってしまう。地上でならば隣に箱を積み上げればいくらでも撃てるのだが、航空機には決まりきった容積しかないので、搭載できる弾丸数は幾ら発射速度を上げても容易には増やせない。


 そのことを説明してみたが、マーヤの疑いが晴れることは無く、「増やすんじゃねぇぞ」という威圧を受けながらその場を後にした。


 実際、銃の重量増加でバランス調整が必要になるんだ。これで弾数まで増やせばちょっとバラスト積んだって程度では済まなくなる。根本の設計から変更とかになったらシャレにならん。


 それから3日で新型銃が届けられ、早速搭載して飛んでみた。


 うん、バラストのみで対応できる範囲だ。


 そして、実際に弾を積んで射撃試験である。


「うっし!当たった!」


 弾が逃げているという感じだったこれまでと違い、その弾と弾の間を弾で埋め尽くす事で命中率が跳ね上がった。


「なあ、弾数少なくしてんじゃないのか?当たるのは良いがあっという間に無くなるぞ」


 そんな声が聞こえて来たので、トリガーハッピー対策として一度の操作で撃ち続けられる時間を制限した。


「おい!何やった?撃つ時間が異常に短くなったぞ!!」


 そう言って迫って来るドワーフ。


「撃てる弾数は以前と同じなんだ。一瞬でこれまでの5倍も吐き出してるんだから、撃つ時間を短くした。それでも当たってるだろう?」


 何か言いたそうにしていたが、ちょうど弾を持ってきたマーヤの姿を見て口をつぐんだ。頭良いな、コイツ。


 新型銃は必要以上に届けられている。そろそろ止めた方が良いだろうか?


 とうとう機体は20機近くを数え、射撃まで出来る乗り手も12人を超えた。全員ドワーフだが。


「そろそろ造兵監の頭髪がヤヴァイらしいぞ?」


 そんな噂が広まりだしている。頭髪くらいどうでも良いだろうと思ったのだが、どうも、頭髪だけでは済まない事態になっていると知ったのはそのすぐ後だった。


「フェヂケ隊諸君、この飛行機と云うのはいつ使い物になるんだ?東部戦線の窮状は知っているか?南部もそろそろ抑えきれない状態なんだ」


 禿げるどころか目の下に隈も作って相当老け込んだバスト氏が俺たちに縋る様にやってきた。


「頼むよぅ、王宮に勢い込んで啖呵切ったからヤヴァイんだ。そろそろ飛竜を蹴散らしてもらわないと、造兵監の職じゃなくて物理的にクビが飛びそうなんだ」


 最終的には泣き落としである。コレがキョニュー氏であれば試作が数機出来た段階でさっさと飛竜と戦わせてただろうがな。 

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