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35・それは思った以上に難しかった

 ダクテッドファンを採用したザラマンダーみたいなナニカが完成した。


 これまではプロペラ機であり、牽引機だったので重心の関係もあって主翼は随分前方に取り付けられていたが、取り付け位置はダクテッドファンを胴体後部に積む関係で胴体中央から少し後ろになっている。

 そして、引き込み脚であるとともに、高翼式としたので胴体へ収納される構造だ。


 ただ、主翼は戦闘機の様に翼幅の狭いモノではなく、直線翼で幅の広い形状をしている。だって速度が出ないのだから、後退翼などが必要ない代わりに飛ぶための翼面積が優先されるからだ。


 そして、材料が乏しいので風防はあるがキャノピーではなく、頭の後ろは細く背びれが付いているのみ。まあ、速度が速度だからそんなもんだ。


 操縦桿とフットバーを動かしてフラップ類の動きを確認する。問題ないらしい。


 フラップを確認したら魔導機を始動させる。ブゥンとファンがうなり始める。ファンの駆動に利用しているのはロウカの毛を束ねたコアを用いたモノで、マーヤの言う通り、出力10倍の優れモノだ。ただ、コストは魔力糸の15倍するので荷車に使えるようなシロモノでは断じてない。

 ダクテッドファンは筒長を長く取って空気を圧縮することでより大きな効率を得ることを狙っている。


 狙い通りの事は出来ている様で、魔導機の回転を上げていくと機体が押され出す。


 草原をスルスルと前進して一度停止、吹き流しを見て滑走すべき方向を決める。



 魔導機の回転を全開にするとファンの音と頭の上を後方に気流が流れているのが分かる。コレが機体下方に空気取り入れ口がある場合どうなるかはもはや自明だろう。


 機体が滑走を始める。推力が上がると一気に加速しだして機首が浮こうとしているので操縦桿を引いて離陸した。


 プロペラ機とは感覚が違うので操縦の勘を掴むまで少しかかったが問題ない。


 上昇、旋回、水平飛行をやってみてバランスが悪くない事を確かめる。


 V字尾翼は運動性はよろしくないというが、そんなに悪くも無いように感じるな。


 速度計や高度計らしきものを装備しているので確認してみるが、高度は大山脈に近い。多分3000mくらいか。速度は本当にあってるのだろうか?300kmほど出ているらしい。


 初飛行はこの程度で良いだろう。


 着陸速度も翼幅と翼面積には気を付けているので問題ない。フワッと着陸できる。ただ、牽引式に比べれば離着陸共に距離が伸びる傾向にあるようだな。


 こうして初飛行を終えると皆が驚きと喜びで迎えてくれた。


 だが、喜んでいる暇はない。本来ならすでに武装型が完成して前線に向かっていないといけなかったからだ。


 グループの皆も初飛行の感想といくつかの改善点を伝えるとそそくさと修正や追加の機体の作業へと戻っていく。


 翌日にも飛んで、修正点の確認を行う。


 問題なくクリアしたので今度は結晶銃を積んでの射撃へと移る。


 当然ながら、燃料となる魔力結晶と弾丸に使われる爆裂結晶が反応してはいけないので、弾丸積み込みと魔力結晶の積み込みは別の場所で行う事になったのは当然だ。


 射撃試験は、まずはただ撃つだけの試験が行われる。


 そもそも、空でちゃんと作動しないと意味が無いのだからその確認は大事だ。


 旋回中でも撃てることを確認してその日の試験が終わる。


 さらに翌日は早くも完成した2号機の飛行が行われた。


 操縦するのは俺ではない、すでに指導役となった「初めの4人」の中の一人だ。


 その機体が飛ぶさまを外から始めてみたが、プロペラ機とは違うその姿に感動してしまった。


「飛び方が綺麗で俊敏だね。フェヂケみたいだから、名前をフェヂケにしようよ」


 銃器担当としてこの場にやってきたマーヤがそんな提案をしてくる。というか。決定した。


 マッツ・フェヂケ


 それがこの機体の名前だ。フェヂケとは燕のパンノニア語名だそうだ。


 2号機が飛んだ翌日。とうとう射撃試験も2度目。今度は空中の目標を狙うという。


 プロペラ機がけん引するグライダーを射撃するのだと言うが、いきなり危なくないか?


 この辺り、ドワーフの考え方というのは体当たりなんだ。


「大丈夫だろ。機体に当たらなければどうということは無いさ」


 まあ、プロペラ機側のパイロットがそう言うんだからそうなんだろう。


 ファンと銃を確認して機体に乗り込む俺。


 機体には一応、照準器が取り付けられている。


 地上で射撃位置を割り出して作った円環と照星だ。多分何とかなるだろう。


 まずプロペラ機が空へと舞い上がり、グライダーも空へ浮く。


 それを追いかける様に俺も離陸して目標を狙おうとするが、相手が遅すぎるのかこっちが速すぎるのか、真後ろから狙うのが難しく、一度追い越して旋回しながら斜めから狙いを付けて撃ってみた。


 曳光弾ではないのでどこに飛んでいるか分からない。グライダーには爆裂結晶がぶら下がっているはずだから、至近を通ればそれが爆発することで分かるはずなのだが、10発撃ってもまるで爆発しなかった。


 位置を変えて仕切り直して射撃をすると、ようやくグライダーの下方で爆発が起きて命中を確かめる事が出来た。


 航空機の射撃って結構難しいな、コレ。映画やアニメの空戦シーンを疑ってたが、アレでさえ当たりすぎだと思うよ。


 そのくらい当たらなかった。


「なあ、マーヤ。弾丸の尻を光らせる事ってできないか?」


 まず必要なのは曳光弾だろうと相談したのは悪い事ではないと思うんだ。

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