33・だいたいドワーフなんてそんなもんさ
見た目は21世紀地球の軽飛行機、素材はチュークをはじめとした鳥の魔物の骨をフレームとして木を翼の補助材として形を整えて、外板は魔物の革を利用している。
布や木で外板を作ったのでは補強にならないが魔物の革であれば強度もあるので十分補強としての役目もある。外板としてはうってつけだ。
「こんなものが飛ぶのか?羽が固定式だぞ。しかも頭のアレはなんだよ」
唯一困ったのが風防だったが、そこは素直にガラスを使う事にした。他の透明素材が無いもんな。
乗り組んで魔導機を始動させると唸り音とプロペラが空気を叩く音がしだす。外野は未だにコイツ何やってんの?といった状態だ。
魔導機の回転を上げて機体が動き出すと周りもびっくりしている。
まだこれからだよ。
平らな草原に繰り出して魔導機を全開にするとプロペラが空気を叩く音がひときわ大きくなって機体が前進を始める。
ラジコンと違って乗って操縦するのは初めてだ。多分何とかなるとは思うのだが。
少しの間滑走を続けていると機体が浮き上がろうとするのが分かった。ここで操縦桿を引いてみる。
機体はフワッと浮き上がり、脚からの振動が無くなる。どうやら離陸は成功したらしい。
そのまましばらく上昇を続けて辺りを見回してみる。
正直、まだ計器なんてものを作っていないから全く何も分からない状態だ。感覚だけで飛ぶ。
これが外からだったら慣れてるんだが、乗って操縦するのは感覚が違うんだな。
そんな事を想いながら水平飛行したり旋回したりして状態を確かめて着陸態勢に入る。
一度離陸した周辺を観察して着陸ポイントを見定めた後、着陸態勢に入っていく。
徐々に魔導機の回転を落して減速する。きっと魔導機を停止しても多少は滑空が可能だと思うが、慎重に回転と高度を落して着陸していく。
ラジコンと感覚が違うので緊張するが、やってできないことは無いだろうというドワーフ精神で心を落ち着かせてスッと若干失速させると、ドンと衝撃が来て着陸したのが分かったが、しばらくは飛んでいるのか滑走しているのか分からない状態でちょっと混乱してしまったのだが、思い切って魔導機を止めてみるとみるみるスピードが落ちてガタガタという地面の振動が伝わり、減速していくのが分かった。
初飛行は僅か10分程度ではあったが成功した。
ちゃんとした計器がある訳ではないが、前世の知識とドワーフの勘を総動員した結果、バランスも悪くなく、かなり安定した機体だと思う。
機体が止まってしばらくすると見物に来ていた連中がワラワラと寄って来る。
「兄貴!すごいじゃない!」
マーヤが驚いた顔でそんな事を言って走って来る。他の連中もそれに続いている。
「どうよ。こんなもんさ」
それからはドワーフの常でどうやって飛んだのか、どんな原理で飛ばしたのかと様々尋ねられることになった。
まずはちゃんと飛べることを実証するためにこの機体でテストを行う。
それから何度か俺は空を飛んだ。
だが、ふと他のパイロットも育てる必要があると気が付いたので複座型を作る事にした。
複座型の二号機は作ろうと思っていたところですでに飛行機に嵌った幾人かが製作を始めていたのでそれに乗っかり、アレコレ意見を出し合いながら製作していった。
まずは俺が操縦して飛ばし、後方のもう一人に操縦法を教えていく。
結局、我も我もと飛行機製作や操縦に志願して来るものが居たので試験どころではなく一月が過ぎ去ってしまう。
「魔力結晶の消費率から言って、イーダの魔導機が一番だ」
いつの間にやら飛行機部門となっていた俺たちグループの中で6機の飛行機が試作されて、この一月で操縦を覚えた4人が飛ばしていた。
幾人かは魔導機専門で参加し、幾人かは機体専門である。
こうしてグループで開発すればデータ集めも捗るし、計器開発まで行われて試験的に装備されている。
こうして出来上がった航空機をキョニュー氏の後任、バスト氏に見せて軍としての可否を聞いた。
「ドワーフ達の技術はキョニューからも聞いていたが、なかなかに凄いものがあるな。今度は空飛ぶ道具か」
実際に見ていたバスト氏はただただ感心してすぐに検討してくれることになった。
こうして後援が確実になると更に開発に熱が入っていく。
実際に飛竜と空中戦をやるために必要な強度がどれ程必要になるのか。速度はどれ程必要か。どこまで高度を得れば良いのか。
考えるべきことは多かったので様々な案を出しながら開発が進んでいく。
「そうだ。墜落に備えてパラシュートも造ろう」
三か月近く経ってようやくソコに行き着き、魔物糸を利用した強靭なパラシュートが開発される事になった。
パラシュートが開発されるとまずは低い場所から、そして次は尖塔から、最後には飛行機から飛び降りるというドワーフだからやっているような体当たり試験で完成させていった。
三か月もよく事故が起きなかったもんだと考えたのはずいぶん後の事になる。
そして、実際に飛竜と当たってみてはどうかと言い出したのは開発開始から半年後だった。
「よし、結晶銃を積もう!で、どこに積むんだ?コレ」
誰も武装については考えていなかった。




