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32・だったらこちらも飛竜を手に入れればいいんじゃない?

 この状況でいくら地上をはいずり回っても埒が明かないのは火を見るよりも明らかだ。対空火砲を備えたところで、移動中の車列を守れるわけではない。

 制空権を取られたならば取り返すしかないじゃないか。


「飛竜というのはこの辺りには居ないのか?」


 飛竜が居るならファンタジーによく出てくる竜騎士とか云うのが居るんじゃないのか?


「飛竜なぁ。この辺りには居ないな。西方のシュヴィーツ山脈には居るらしいが、飼い馴らしたって話は聞いたことが無いな」


 そうだった、そう言えばそんな話を聞いたとがあったかもしれん。そもそも、竜騎士が居るならすでに空で飛竜同士の空中戦やってるだろうな。前世知識を前面に出し過ぎるのも問題か。


「飛竜を飼い馴らしたのはダータくらいじゃないのか?連中の強さの秘密も、馬だけじゃなく飛竜使いが居るってのが大きいからな。空から見たら一目瞭然だしな」


 そう言ってお手上げのポーズをとるドワーフ。


 飛竜を飼い馴らしてるのはダータだけかよ。そりゃあ、一強過ぎるだろ。なんつう不公平なんだ。


 東方草原の蛮族って認識が一般的なダータ。しかし、彼らは大草原の東方にある山脈に住む飛竜を飼い馴らす事に成功した。

 その結果、草原に数多いる部族の一つに過ぎなかったダータは草原を統一し、更に豊かな大地を求めて西へと突き進んだようだ。


 それが、べルーシ崩壊へと繋がり、大森林と大山脈に突き当たった彼らは北と南へと別れて進撃した結果、うまみの無い北方ではなく、豊かそうな土地がある南方への侵攻に集中するようになったらしい。


 そして、ここ、パンノニアはまさに彼らにとって格好の草原地帯だろう。大山脈を越えて進めば大草原がある。しかもそこは資源も食料も豊富と来ている。草原とはいっても牧畜にしか使えない東の草原とは違い、ここなら畑にも適している。喉から手が出るほど欲しい場所ではなかろうか?


 問題となる大山脈も南では幾分低く、なだらかな地形もあるので突破も可能だったらしく、一挙にそこを突いて進撃してきたモノの、マーヤが開発した爆裂結晶を用いた矢によってその進撃は止まり押し戻される状況にある。


 そこに飛竜を集中すればよいと思ったのだが、熊や狼の居ない浅い森や山であっても飛竜から隠れるには十分で、飛竜の活動を封じながら進撃を阻止する事が出来ているのだという話だ。


 そして、その苦境の中で聖教会によるパンノニアの魔族認定という福音だったのだろう。そりゃあ、手詰まりの南方戦線以外に活路を見出そうとする罠。


 しかも、他にないアドバンテージがあるとなれば尚更だ。


 その優位性を生かしてパンノニアを兵糧攻めして屈服させようってんだから大したもんだ。


 こちらには飛竜を飼い馴らす術がないので対抗するには地上から戦う以外にない。


 ならば、飛行機を作れば良いじゃないか。


 俺の前世である農民は多趣味だったらしく、ラジコン飛行機の製作までやっている。


 すでにある設計図やパーツの組み立てなんてチャチなもんじゃない。アニメの登場機やモデル化されていない機体を自ら作り出していたってんだからすごいじゃないか。


 そう、俺には飛行機を作る知識が備わってるんだ。有難いことに。ならば使わない手はない。


「飛竜が飼い馴らせない?だったら魔導機で飛ばせばいいじゃねぇか」


 ワイワイ騒ぐ中で俺は不敵に笑いながらそう言った。


 一同唖然である。


「兄貴、何食ったんだ?さすがに夢を見るのは寝てからにしてもらいたいんだけど?」


 マーヤも呆れたようにそう言ってくる。


「夢でも妄想でもねぇ、出来るんだよ」


 自信を持ってそう言う。


 当然、ドワーフ達だ。じゃあやってみろという話になるまでにそう時間はかからない。普通なら呆れてバカにして、罵倒して、否定して終わるだろうが、ドワーフと云うのは好奇心の塊だ。目新しい発想に飛びついてくる。


「ならやってみな」


 母親がそう言って尻を叩いて来る。


「任せな」

 

 作るのは習作的な軽飛行機で良いだろう。そんなに高速である必要も無いだろうしな。


 そう思って材料集めを始めてみたモノの、鋼管パイプフレームってのは無理がありそうだった。


 そうなると、魔物素材や木材になる。


 魔物素材として有望なのは、鳥の魔物。だが、鳥の翼を再現しても飛べるわけではないので、フレーム材としての利用になるのだが。


「やはり、鳥の魔物を使うのか」


 そう、誰もが一度は通る道だ。


 ドワーフは好奇心の塊なので空を飛ぼうともしてきた。そして、鳥の魔物素材を利用して鳥を再現して飛ぼうという試みは昔からやっている。


 だが、当然の様に自由に空を飛べた事など一度もない。


 そりゃあそうだ。ドワーフは鳥じゃないからな。


 ラジコン飛行機から引き延ばした軽飛行機を設計していく。


「ん?何だコレ。鳥の骨格じゃないのか」


 実際の製作を始めるとそんな疑問の声がそこかしこから上がる。


 当然だな。鳥の様に自由に羽ばたける作りにはしていないのだから。


 飛行機の形が出来ると皆が首をひねる。


「おいおい、こんなのが飛ぶのか?」


 そりゃあそうだ。そこにあるのは21世紀地球にある軽飛行機と瓜二つのシルエットなんだから。エンジンが内燃機関から魔導機に替わった以外に何の違いも無い。

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