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31・ダータって実は賢い奴らかもしれん

 ドワーフって奴は楽しい事を始めると時間を忘れて没頭する。10日くらいそんなことしてるのはザラだ。


 だからだろう。方針が決定してリボルバーカノンの量産に入って20丁完成させるまで一心不乱に作り続けていたんだ。


「ブスタが壊滅した」


 さて、これで飛竜どもを一掃できるかなどと思っていたところに入って来たのはそんな凶報だった。


「ブスタが壊滅?もしかして連中、山越えでもする気か?」


 誰ともなくそう言いだす。


 確かに、ブスタの位置から言えばその可能性もあるだろう。南方が膠着状態だから打開策として奇策に打って出るなんてことは。


 だが、大山脈を越えるのは至難だと思うがな。


 険しい山で道と呼べるものが無い。


 挙句に熊や狼の魔物が多数政生息しているのでまずはそいつらを排除しないといけない。

 確かに数を頼めば押し通る事は可能だろうが、果たして南方の友軍と再会する道はあるのだろうか?


「そんなことされたらこの国は終わりだぞ」


 そんな話でもちきりだった。


 しかし、それから数日後にはブスタより南方の交通の要衝カレイへ飛竜が現れたという。


 ブスタはレンジェレフから向かう街道の結節点にある。カレイはブスタやぺスタから南へ向かう結節点だ。


「連中、もしかして輸送路狙ってるんじゃないのか?」


 そんな声が上がるのも頷ける状態だ。


「王宮よりマッツ銃の大増産の依頼を受けて来たぞ。さあ、量産だ!」


 そんなところへキョニュー氏がリボルバーカノンの増産を取り付けて来たという知らせを持ってきた。


 すでに20丁ある。まずはそれを荷馬車隊が東部の町へと運ぶという。


「弾も銃もいくらあっても足りない。どんどん作ってくれ!」


 そう発破をかけられた俺たちは喜々として増産に取り組むことになった。


 だが、20日もすると大量の製品が出来たのだが、輸送が追い付いていない。こんなのでは前線で弾が足りなくなってんじゃないかと心配になるありさまだが、そんな話は聞こえてこなかった。


「弾なら南部でも作れるから大丈夫だよ。しかし、荷馬車隊ってのはのんびりしてるんだね」


 どこか呆れを含んでマーヤがそんな事を言う。本当にそう思う。


 そろそろ銃の製造だけじゃなく、魔導車の増産をキョニュー氏が言い出してもおかしくないだろう。


 というか、ただ在庫が増えるだけのリボルバーカノンの製造を鈍化させて手隙の者たちが魔導機製造を始めている。ロウカの毛を織り込んだ改良型でトルクが上がっているので荷車を走らせるにはうってつけだろうと言っている。


 それから5日たっても状況は改善しなかった。荷馬車隊は細々と輸送を行っている状態で全く役に立っていない。


「おい、そろそろ勝手に魔導車作り始めとこうや」


 親父や一部ドワーフがそんな事を言いだした。もう、それも仕方がない状況だ。


 ついでだからとブレーキや変速機の改良に手を出すものまで現れた。


 すでに弾も山積み、リボルバーカノンも倉庫に多量にならんだ状態だ。これ以上作っても運べなければ意味はない。


「おい、造兵監はなにやってんだ?」


 最近現れない造兵監に不信感すら募るありさまだ。


 だが、翌日に何が起きたかが判明した。


「魔導車でまた独断で出ていった造兵監が飛竜の攻撃でやられたらしい」


 未だ「らしい」という話しかつたわっていないあたりが上方の混乱を物語る状況だった。


 それぞれが伝手を頼って情報を集めた結果、とんでもない事が分かる。


「どうやら東部一帯で飛竜が飛び回ってるようだな」


 そんな状態だという。つまり、完全に制空権を取られたという奴だ。


「どうするよ。鉄は東の大山脈から来るんじゃないのか?」


「いや、北からの方が多いだろ」


 パンノニアの鉄山は東の大山脈にある。カレイは製鉄が主な産業の街だ。っておい・・・・・・


 そして、北からというのはブスタの北西からだが、当然、山を抜けた先の町というのがブスタで・・・・・・


「連中、狙ってやってるな」


 パンノニアにはもう一つの交易路が存在した。


 アバールというレンジェレフの南西に存在する国で、パンノニアの北西で国境を接している。そこも優良な鉄山が存在するが、当然ながら聖教の国であり、聖教会がパンノニアへ魔族認定を布告して以後、街道は閉鎖されている。


 聖教会はあろうことか魔族認定を堂々と布告したものだから当然の様にダータの知るところとなっている。

 結果がこれだ。


 聖教会による国境封鎖を知ったダータがパンノニアの資源地帯である大山脈山麗に飛竜を飛ばして活動を阻害する。

 何のことは無い。飛竜が居るんだから当然できる話だ。


 そして、わざわざ魔物が多い大山脈を猪突する必要などない。武器や防具の材料となる鉄や魔物の産地を潰してしまえばいずれは戦えなくなるのだから、焦る必要はないって寸法だな。


 本当に聖教会って処はロクな事をしないな。


「だったら材料があるうちに魔導車作ってあの銃を東に持ち込むしかねぇだろ」


 ドワーフの一人がそう言う。


「だが、飛竜が輸送中を狙って来るんだぞ?それで造兵監もやられたんだろ。銃がいくら強力でも撃てなきゃ飛竜は倒せねぇぞ」


  じゃあどうすりゃいいのか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです。 毎日21時の更新が楽しみ。 [一言] ドワーフが大量生産できる対空兵器に対して 敵の飛竜は育てて訓練して戦力化する時間、費用が大変そうで そのうち逆転できそうな気がしますがど…
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