28・新たな武器を開発した
「へぇ~、こんなネジを使うのか。これだからあんなに素早くドンドン鳴ってたんだ」
と、その構造に驚いているらしい。
「だが、コレが常に飛竜を追いかけて動くから栓を開けて弾を込めて栓を絞めるという動作が素早くできなくなる。ギアやアームで全てを自動化するという方法も無いではないが、このままでは難しいんだよな」
アームやラマーを地面に書いてどうしたら出来るか説明してみると、やはりマーヤも唸っていた。
多少、装填を簡素化できる鎖栓式の説明もしてみたが、やはり、それだけでどうにかなるものではない事は理解しているらしい。
さらに、リボルバーにすれば薬室が回転して装填は何の障害も無く行えるが、非常に重量が重くなることを説明した。
「でも、それなら、らまあ?で押すだけで装填できて、穴あきロールが回転して銃身にセットされるんだから作れなくはないでしょ。出来そうならやってみれば良いじゃないか。ドワーフだもの」
まあ、そうなるわな。
リボルバーと言えば19世紀に生まれた拳銃を思い浮かべるだろう。西部劇のガンマンが使用し、アニメの泥棒や暗殺者も愛用している。
だが、その歴史はもっと古い。
16世紀には既に存在していたという。それも小銃として。
当然、16世紀の小銃と言えば火縄銃だが、先込め式で装填には時間がかかった。
それを解消するためにリボルバーの利用が考案されたらしい。
ただ、リボルバーには弾倉部であるシリンダーと銃身の間にどうしても隙間が出来てしまい、そこから火炎が吹き出してしまうので小銃として利用する場合、銃を支える手を火傷するリスクが存在した。
雷管開発後にも初期の連発銃として登場しているが、火炎が吹き出す事は改善されることなく他の方式が登場すると早々に姿を消してしまう事になった。
拳銃においては自動けん銃の登場が遅かったことや構造的な信頼性、シリンダーの口径と同じならば長さの違う弾も撃てる汎用性などが21世紀でも製造され続けている理由だったりする。
ただし、これらリボルバーというのは事前にシリンダーにセットされた弾薬を発射する構造であって、再装填は全てを撃ち終わったシリンダーに行う事になる。
それに対してリボルバーカノンと言われる航空機関砲は発射速度を上げるために薬室を増やすことを目的にしており、シリンダーに順次装填していく装弾機構や排莢機構が備え付けられている。
コイツをモデルにすれば連発式で課題となる装填問題は解消されるだろう。
さて、問題は至近で爆発が起こる事で弾頭部の爆裂結晶に影響が出る事だが、発射速度もそこまで求める必要はなく、排莢機構も必要ない事から3シリンダーにして間隔をあけることで影響を避ける。しかも前装式とすることで弾頭ではなく仮に影響が出ても装薬側になる様に配慮する。
ヴィゴやマーヤとあれこれ思案しながらその制作にあたったが、最大の問題は駆動に何を用いるかだった。
リボルバーカノンの場合、ガス圧や反動を駆動力としているのだが、この世界でそれを実現するのはいささか難しい。圧力が高い事で薬室の肉厚を上げ、銃身も相応に肉厚なのに、そこからガスを導いて駆動させる?冗談はよしてくれ。
反動利用とするなら後座させないといけないんじゃないのか?シリンダーと銃身の隙間にすら四苦八苦するのにそんな機構に出来るわけないだろ。
という事で、チェーンガンやガトリングガン同様に外部動力式にしようと思う。要するに手回しだ。
「ちょっと。それは僕らなら問題ないけど普人族にはキツイんじゃないかな?」
という疑問がマーヤから発せられたが、魔導機を使うには大げさすぎるのだから仕方が無いではないか。まさか、荷車用のデッカイ魔導機載せる訳にも行くまい?
「あ、魔導機って手があるね。なら、ロウカの毛を使えば良いよ。シッポの毛ならば魔物糸の10倍のは高効率になるから、コレを動かす程度の動力としてならかなり小型の魔導機が作れるよ」
と、筋肉の上に乗せられた形の良い胸を反らす。
魔物糸の10倍?相当な効率じゃないか。それを使えばかなり魔導機の小型化が出来るんじゃないか?
「あ、兄貴。ロウカを狩ること自体が難しいのは知ってるよね?その毛を使うとなるとそうとう高価な魔導機になるよ?これを動かす程度ならまだしも、荷車を動かすなんて馬に曳かせた方が絶対お得だよ」
それほどまでに高いのか?キツネの魔物って。
確かに知能が高くて狩人を避けるとは聞いたことがあるが、狩りに行った事が無いから良く知らないんだ。
「兄貴の作った弓なら何とかなるかもね。射程が長いから気付かれる前に狩れるかもしれない」
という事は三角ボウなりコンパウンドボウを拡める必要があるのか。それにしたって他にも需要があるだろうから魔導機ばかりには使えんだろう。やはり、ここぞってモノにしか使えないか。
結局、リボルバー結晶銃に使う魔導機はロウカの毛を編み込んだ魔物糸の使用で直径40cm程度のサイズに落ち着いた。ロウカの毛だけであれば自動車のセルモーター程度の大きさに出来るんだが、あまりにも高価すぎたので涙を呑んで諦めるしかなかった。