26・ドワーフ女性ってスタイル良いから大人気なんだよ
聖教会ってところが無能な事は分かった。それではもしもレンジェレフへ攻めて来られた場合に対処がより難しくなるが、神官にはそんな事は関係ないのだろう。
そんな経緯を聞いて唖然としたが、それはどうでも良い。
「これは今この4丁しかない。数日あれば数丁作れるがどうしようか?」
キョニュー氏はブスタの司令官でもないのに、即断で増産依頼を出してきた。
俺も久々にマトモに鍛冶が出来るのでその方がうれしいわけだが、2人の利害が一致した。
俺は喜々としてヴィゴの鍛冶場で鉄鎚を振るう。ヴィゴも一緒だ。
2人であれこれ言いながら6日で4丁を作る事が出来た。
これであと二ヶ所に配備できる。
この銃は連装で発射間隔を埋めるようにしている。そうすることで少しでも命中率を上げようって算段だ。
兵士たちも操作法を真剣に演練して随分手慣れて来た。当初は一発の装填に5秒以上要したが演練の成果だろう2秒も縮める事が出来ている。
これで1門毎分20発程度、2門で40発になる。これだけ撃てれば十分な弾幕だろう。相手の速度は目測で時速150kmちょっとではないかと思う。軽飛行機並みの速度だ。それならばこの程度の対空砲でも追随可能だろう。
実際のところ、どこまで速度を出せるのか分からないが、それを言っても仕方がない。
しかし、2週間も来ていないのは不気味で仕方がない。
他の町や村への飛来情報もあるようだが、今のところ攻撃を受けるようなことは起きていないという。
「誰?矢じりの爆裂結晶で玩具作って遊んでるの」
見た事のないドワーフがやってきた。
ドワーフの女性というのは貴族にもかなり人気だったりする。小柄だが筋肉質の上に装甲を装備しているので結構スタイルが良い。ガリガリに痩せているということは無く、貴族の奥方に多いオ・・・、まあ、そう言う体形になり難い。さらに言えば美女が多い。
まあ、問題があるとすれば普人族の男どもより大抵は膂力が上って事だろう。騎士だ何だと言っても、多くの場合が負ける程度には。
なので、見ている分には大人気だが、自ら率先して娶ろうとか妾になどという奇人はそうそう居ないが。
そんなドワーフがやってきた。
「あれ?マーヤじゃないか」
ヴィゴがそのドワーフに声を掛ける。
「これ作ったのヴィゴ?」
殺気のこもった視線でヴィゴを見るドワーフ。
「違う違う。コイツだ」
早速仲間を売りやがった。
「あんた、何やってんの?こんな玩具作って遊んでる場合じゃないでしょ?」
俺に威圧を向けてくる。
「いや、これはちゃんと使い物になるはずだ。飛竜にだって届くだろう」
そう弁解したがまるで納得していないどころか呆れている。
「爆裂結晶の何たるかを知らないんじゃない?こんな屑鉄飛ばしたって当たらないんだから、爆裂結晶を相互反射させるしかないでしょ?そんな事も知らない訳?」
と、更に凄まれてしまった。
相互反射って何?屑鉄でも音速の倍近い速度だから確実に倒せるはずだし?
「で、ヴィゴ。この新入り何なの?」
そのドワーフの矛先がまたヴィゴに向いた。
「師匠の息子だって話だが、え?マーヤは知らないのか?」
ドワーフがそれを聞いて俺をまじまじと見てくる。
「え?兄貴?うそ・・・・・・」
ん?いや、意味が分からん。
「俺にはこんな年の近い妹なんかいなかったはずだが。まさか・・・・・・」
まさか、そうなのだろうか?
「あ、親父にそんな度胸あるはずないし、オカンはそんなバカじゃないよ。大山脈越えしていた2人が熊の群に襲われている僕たち家族を助けてくれたんだけど、結局生き残れたのが僕だけだったんだ」
などと、壮絶な過去をケロッと話してくれた。
確かに、ドワーフには日常的な部分ではある。新しい技術、新しい素材を求めて旅をしている連中は多い。うちの親みたいにそこで新しい物を作って腰を落ち着けるというのも時折ある話だが。
「そうだったのか。驚く時じゃないか」
内容を聞いて安心した。家族崩壊はなさそうだ。
「で、相互反射も知らないって?」
本題に戻されたが、頷くしかできなかった。
爆裂結晶の相互反射。
爆裂結晶というのは同じ製法で作った場合、共鳴して安定するらしい。しかし、違う製法であった場合は近づけた場合に共鳴ではなく反発し合い暴走してしまう性質があるらしい。
その為、備蓄や使用に際しては製法を統一しないと暴走が起って勝手に爆発するという大惨事に至りやすいとの事だった。とんでもなく怖い話だな。
なので、攻撃に来た飛竜に対しては、直撃させずとも結晶が近くを通過さえすれば、飛竜側の結晶も誘爆を起こすことで撃墜可能なのだそうだ。
さらに怖いのは魔力結晶であっても相互反射は起こるそうなので、使用状態にある矢を魔力結晶に近づけることもNGらしい。って、魔導車から撃つのも問題アリじゃね?
まあ、そこは距離に問題で、直近でなければ問題ないそうだが。
「だから、こんな屑鉄を撃てるようにしたって意味ないの」
そう言って銃弾を手にした。
「ん?でもこれなら先端に付けて飛ばせばいけるかも」
と言っていきなり銃弾に穴をあけだす。
「おいおい、穴なんか開けてどうすんだよ」
俺がそう問うが答えずに作業を行い、弾頭にも結晶がはめ込まれた。
「爆裂結晶は衝撃で爆発するんじゃないし、ちゃんと魔力遮蔽したら近くで爆発があっても一度は耐えられるから」
「ま、魔力遮蔽思い付いたの僕なんだけどね。だから、ダータは知らない」
と仰せになられた。
そして、魔力遮蔽の方法を聞いて試しに一つ同じようにやってみた。
「へぇ~、さすが、ケネトって人の弟子になるだけあるね。オカンもその人を絶賛してたし、その弟子になった兄貴なら親父を超えるって言ってたけど、本当だったみたいだね」
そう言って驚いていた。ふとヴィゴを見ると開いた口が塞がらんといった状態で驚いている。
まて、魔物素材を扱おうと思えばこれ出来ないと魔力強化が出来ねえんじゃね?