表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/55

23・トラックあるならトラクターも造りたいよな

 真試作車のあっけない完成で俺の仕事は無くなった。


 例のブラックボックスの量産は母親に任せておけば良いだろう。


 車体自体は造兵廠で作ってくれる。魔導機もドワーフであればだれでも作れる程度のシロモノだ。ここには両親以外のドワーフだって複数いるのでその辺り何の問題も無い。すでに俺の魔導機だって造兵廠内の動力源として他のドワーフが製造しているし、ヴィゴもブスタで生産に入っているんじゃないだろうか。


 魔導機の更なる高出力化や小型化に興味が無いではないが、母親が事も無げにブレーキ問題を解決した事で一つの考えが頭に浮かんだ。


 そもそも、荷車に魔導機を付けようとするから積載量が限られてしまう。いや、その発想自体が間違っているとは言わない。その方が量産性も利便性も良いんだ。何も問題はない。


 だが、アレが量産されれば荷馬車が余ってくることになる。それを棄ててしまうのはもったいなくないだろうか?


 荷馬車を曳くトラクターがあれば魔導車以上の物資を一度に運べる。


 ただし、魔導車で引っ張るならば停車時の制動に問題があるのでこれまで作ろうと思わなかったんだ。


 だが、銀糸を使って荷車のブレーキまで操作可能となれば話は違ってくる。


「何?4頭曳きの大型馬車を魔導車で引っ張る?」


 キョニュー氏もその提案に疑問符を浮かべてくる。


 それはそうだろう。今の魔導車はその半分の積載量でさえ四苦八苦してるんだ。4頭曳きの馬車を曳けるなどとは考えられないだろう。


「現在の魔導機は荷車の積載量を得る大きさで作っているからあの程度の力しか出せない。4頭の馬に替わるだけの力を出せる魔導機を引っ張るためだけ専用の魔導車に載せれば当然、馬に替わって荷車を曳けるようになる」


 そう言ってキョニュー氏に説明するが、イマイチ納得していない。


「それは廠内にある機械駆動用に設置したような大型魔導機を積んだ車というのかね?さすがに走る事が出来なそうだ」


 そう言って呆れた顔をする。


「いや、出力を2倍にするには今の1.5倍程度の大きさで十分だ。車自体も現在の荷車とは違う機構にしてしまう」


 そう言って現状作れるであろう青写真を示すと試作の許可だけは貰う事が出来た。


 許可が出たので制作に移る。


 まずは、ぶち上げたとおりの効率的な魔導機だが、実はそうなる当てがない。


 いや、何も無いではない。当初の3連式の様にコアを増やせば可能だ。それも、以前よりコンパクトにまとめることが可能になっているのだから


 そう、直径を増したコアに以前より長い魔物糸を巻いてそれを2つ繋げたコアにする。そのコアを収める外殻は言った通り1.5倍を少し超えたが許容範囲に収める事が出来た。


 それを載せるのは専用の車だ。強化した車体に車軸。大型のブレーキ。そして、変速機を組み込んだ駆動部。


 単体の試験は問題なく終える事が出来た。


 いざ牽引による試験へと駒を進めたのだが、想定しなかった問題が起きた。


 荷車にも魔力式ブレーキを取り付けているので牽引車側からブレーキを掛けることが可能だ。


 さらに、牽引に際して縄ではなくちゃんと牽引フレームとしているので荷車があらぬ方向に走り出す事も無い。


 のだが、所定の積み荷を載せての試験ではうまくいかなかった。


 ブレーキはまあ、良いだろう。


 連結部の強度はやってみて試すしかない。よほどの高級素材を使わない限り一発で問題解決が出来る訳が無いのだから。


 が、そもそも、発進する事に苦労した。


 魔導機が負荷に負けるならばまだ良い。変速機のおかげでそこは問題なくクリアしているのだが、車輪の摩擦力、或いは牽引車の車重が足りないのだと推測される。


 まず車重を増やしてみた。


 問題は解決である。


 が、それもつかの間。車重があって魔導機の力もあるので負荷以上の駆動力を見せつけるのだが、車輪が穴掘りしかしなくなった。


 分かっていた事ではあるが、車輪の幅を広げないといけないらしい。


 ここですんなりハイそうですかと広い車輪を用意できれば良いのだが、車輪は木製。ただ幅を広げてハイ完成というような簡単なものではない。太い木材を加工して太い車輪にしなければいけないんだよ。


 試しに作ってみたが、そんなもんは量産には向いていない。


「いっそ、普通の車輪を2つ合わせてそこに板を張り付けて誤魔化した方が良いんじゃないか?」


 などと親父が暴言を吐いて鉄鎚を放り投げる。


 何を言ってるんだと怒りたくなったが、よくよく考えてみるとトラックの後輪ってダブルタイヤだよな?

 親父の言う仕様で問題ないのかもしれない。


 という事で親父の言う通り、2つの車輪を合わせたモノを製作して取り付けてみた。


 そりゃあ、ゴムタイヤがある訳じゃないから少々問題は残っているものの、一応完成と言ってよさそうなものが出来上がった。


 キョニュー氏もその出来に満足してくれた様で正式に試験が始められるように取り計らってくれた。


 そんな南部で戦争しているとは思えない平和な日々を送ってはや半年。


 急転直下の情報がもたらされてきた。


「ブスタに飛竜が現れたらしいぞ」


 山脈によってダータなど来ないと思っていた。しかもブスタは山脈から100km程度は離れているはずだ。なぜやって来たのかよく分かっていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ハコシャからトレーラーに進化した!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ