表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/55

2・とりあえず次の町へたどり着けそうだ

 気兼ねなく眠れたことで体は十分に回復したらしい。


 村人の言う行程二日、ならば俺たちには一日かかるかどうかってところだろうか。


 街道というには整備されていない獣道に毛が生えた程度の道を本当に飛ぶように進む。森の中と違って草原のため常に獣や魔物の襲撃を警戒する必要も無く進むのでふと考えてしまう。


 記憶の中の日本というのは非常に進んでいた。それに対してここは中世だろうか古代だろうか。人々の生活はそう言う時代のもので間違いはない。

 唯一、飛竜や魔物が居る様に魔法がある世界だ。剣と魔法の世界と言ったっけか。年甲斐もなくそんな物語を読んでいた気もする。


 ただ、人は何らかの触媒?ブースターが近いか?を用いなければ火の玉や電撃を飛ばせないし、再生魔法や治癒魔法は残念ながら存在しない。いや、医学的な知識があれば治癒魔法や医療魔法が発展するのかもしれないが、それこそ鶏と卵だろう。


 そんな世界のドワーフは前世で読んだ物語のドワーフとは少し違う。確かに生まれは山で間違いなく、鉄山を生かして製鉄や鍛冶の腕を磨いているのは事実だが、穴倉に住んでいる訳でもなければ髭もじゃでもない。筋肉質で身長は低めではあるが。


 そして、錬金が出来る。といっても、無から金を生むわけではなく魔法と化学のあいの子とでも言おうか、化学反応や精製を炉を使わずとも可能にする魔法があるんだ。


 鉄鉱石を炉に放り込むのは同じだが、そこから取り出した鉄に対して魔法を使って鋼を作る事が出来る。中には各種金属の合成、合金鋼を造れる錬金師も居る。師匠もその一人で俺も出来るようになった。


 そして、ドワーフは鍛冶だけでなく、魔物の爪や牙、革を使った武具、防具の製作にも長けた万能技能者でもある。


 とはいえ、年の半分近くを雪に閉ざされる地域で大勢を養うことなど出来るはずもなく、鍛冶や錬金という技能を持って各地へと散らばって行く事になった。

 散らばってなお、鍛冶や錬金の適性はやはりドワーフが一番高く、よほどでない限り、ドワーフ並みの事が出来る他民族は居ないと言われる。


 そんな事から鍛冶や錬金のために血が薄まるのを良しとせず、ドワーフ間での婚姻が奨励されているほどだ。

 外見はドワーフ同士が見れば一瞬で分かる。他民族とは言葉に言い表せないが確実に違う訳だ。


 当然、そんな技能集団だからあちこちで活躍しており、本来の故郷であるスカルドの事など忘れてしまった者も多いと師匠は嘆いていた。師匠はスカルドからべルーシにやってきたから余計そう思うんだろう。

 かく云う俺はべルーシ生まれのべルーシ育ちの為、師匠の言う事はイマイチよく分かっていないが。


 なにせ、ドワーフがスカルドから出て新しい土地へ旅をするのは今や普通の事であり、土地への執着が希薄だ。執着するなら土地よりも新しい技術や新しい鉱物、魔物素材ではないだろうか。

 そう言う俺自身、べルーシ生まれだからと言ってべルーシに執着しようとは思っていなかった。父や母も俺を師匠に預けて自分たちの興味のある魔物素材を追い求めて南の国へと旅立っているほどだからな。

 そう、別に両親がべルーシでダータの犠牲になった訳じゃない。


 そんな考え事をしているうちにどうやら着いてしまったらしい。村の人たちの言う二日とは一体・・・・・・


 そこは中世ふぁんたじぃ世界によくある壁で囲まれた町だった。


 獣だけならいざ知らず、魔法を使う魔物が出て来るんだ、こんな壁でも無きゃ防ぎようは無いだろう。


「次!」


 門番がそう声を上げる。


 門に並んだ入場者たちがそれぞれ何らかの証明書を見せている訳だ。


 俺たちはそんなものはないって?


 一応、べルーシの鍛冶ギルドの証明書はある。流れの鍛冶師ならそうやってどこかの国やギルドの証明書は持ち歩いているものだ。


「次は・・・・・・、ドワーフか。通って良いぞ」


 なんと、ドワーフと分かった時点で顔パスだよ。この町の領主はよほどドワーフに好待遇なんだろうか?


 ま、鍛冶師というのは何処でも引く手あまたではある。こうしたことも珍しくは無いわけだが、それでも何の確認もしないのは珍しい。


 町に入って分かった事だが、どうやらべルーシの話はここにも伝わっているらしい。

 それもそうか、べルーシと隣り合う国だ。大森林という境界線が無い地域もあるんだろう。


 そのため、べルーシから逃れて来た鍛冶師が訪れるのを織り込み済みだったとの事。身なりと持ち物で判断されたってところか。

 この国、レンジェレフという国にも当然ながらドワーフは流れてきている。そこに新たにダータの来襲したべルーシから逃れたドワーフが増えるのだから、彼らとしても歓迎するという事なのかもしれないな。


「とりあえず、この町で様子を見るか」


 師匠がそう言った。


 この町には大きなドワーフの工房というのは無いらしい。小さいのが幾つかあり、のぞかせてもらったが師匠の方が腕は上に見える。


 落ち着き先を見つけた事でまずは工房作りから始めることになりそうだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 地理の説明がもう少し欲しい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ