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17・見つけた魔導はデカかった

 例の冷静な神官はシツィナに以前からいた人物で、絶叫神官は最近赴任して来たばかりなんだそうだ。

 その為、得体のしれない乗り物を見て絶叫したらしい。

 たいしてもう片方は型破りなドワーフが居ることを知っていたのでそこまで驚いていなかったのだという。

 

 そもそも西方の選民思想の入った絶叫神官にとってはドワーフというだけで毛嫌いする存在であり、得体のしれない乗り物を見て即座に魔族認定を叫んだのだという。


 アレが高位神官であるため、叫んだ言葉は取り消せない。事を治めるには被害を俺ひとりという事にしてしまう必要があったそうだ。


 なんで知ってるかって?


 当の神官から詫び状らしきものが送られたからだ。


 そこにはパンノニアが魔族認定された理由も書かれていた。


 魔導が原因ではなく、爆裂結晶という矢じりが原因らしい。それ自体はダータに対抗するために生まれたのだそうだが、聖教の厳格な神官たちは爆裂結晶がお気に召さなかったらしい。魔族認定はつい最近の事だという。


「抗議の審理をしている今ならすんなり入国可能か」


 そう呟いた俺はヤスオに居る。ここから素直にパンノニアの関を超えることになる。




 俺の足でヤスオから半日。レンジェレフ側の関があった。そこは何の問題も無く通る事が出来たが、少し進んだところにあるパンノニア側の関で引き留められた。


「ドワーフでべルーシのギルド証。またなぜこの時期にパンノニアへ?」


 特に隠す必要もないのでコウチンでの一件を話して聞かせた。


 するとその役人はため息一つつき、それ以上問うことなく通してくれた。


 関を超えて町まで行くとそこでアレが何だったのか、宿をとるついでに聞いてみた。


「あんた、知らずに来たのかい?パンノニアの南はべルーシを落したダータが南下してトランシュ盆地を攻めているところさ。私が言うのもなんだけど、わざわざべルーシから逃げ出せたのに好き好んでいつまた攻め込まれるか分からないパンノニアに来るのはモノ好きって言いたかったんだろう」


 宿の女将がそう言って来た。


 そう言えばケビが連中が南下して行ったとか言っていたな。まさかそんな事とは知らなかったよ。


 そこで一泊したのち、魔導というモノをやっているところがあるかを聞くと、ブスタという街を教えてもらった。とりあえずの目的地はそこに決めた。  


 町からさらに山道を進む。そこは狩人や兵士たちと時折すれ違う場所だった。きっと魔物が出没する事があるのだろう。


 そんな道を夕方まで歩くとようやく山を下り、ふもとの町が見えて来た。どうやらそこがブスタの町らしい。


 町は山間から離れた平野に作られているからだろうか、高い塀はなく申し訳程度の高さに抑えられている。


 そして、山では全く見なかった水路もないのに現れる水車小屋らしき建物が先ほどから何戸か目に入った。


 町の近く、街道脇にある建物を覗いてみるとまさに水車の様な大きな装置とそれに寄り添うように建つ小屋であることが分かった。

 小屋は石臼が置いてあるのだろう。今は戸が閉まっている。


「おい!小屋に何の用だ?」


 街道脇という事もあって人目に付いたからだろう。兵士らしき男が走ってきた。


「こいつは魔導って奴じゃないのか?」


 俺がそう尋ねるとそうだと答える。


「この魔導を作った奴は町に居るのか?」


 それが知りたかった。


「いや、居ない。水車小屋じゃなくて荷車に魔導を付けられないかという話が来てな。管理の出来る弟子を残してぺスタに行ってるよ」


 居ないというのにはガッカリだったが、居場所と理由が分かったのは幸いだな。それで少し小屋を見たいと言ってみたら快く見せてくれた。


「ドワーフなら見たいのは当然だろうな。まあ、見てくれ」


 そう言って小屋を開けてくれた。良いのかそれで・・・・・・


「スゲェだろ。魔導って奴は。水路もないのに動くんだぜ?」


 そう言ってわざわざ動かしてくれるという念の入れようだ。


「あんたもこれ見たら作りたくなるんじゃないのか?」


 何やら積極的である。もしかして魔族認定について知らないのだろうか?


「もしかして、パンノニアが魔族認定受けたことを知らないのか?」


 俺がそう聞くと、居心地悪そうにしている。


「知らねぇわけ無いだろう。神官連中はマトモにダータとの戦いに協力もしないくせに、せっかく誰でもダータに一撃加えられる爆裂矢を悪魔の所業とか言って魔族認定とか叫んだそうだからな。トンデモねぇ奴らだ。何が神の僕だ。自分達だけ先に逃げやがって。知ってるか?南のデターにあった教会が飛竜に破壊されたとき、町にある金貨より多い金貨が出て来たんだぜ」


 なるほど、兵士が語る教会への不満を聞いていると、どうやら神官たちは不都合な真実を隠したくて魔族認定をしたのかもしれないと思い至った。


「不満もあるだろうな。かくいう俺も、レンジェレフで魔族認定受けちまってな。魔導の研究が傀儡術に当たるんだとよ」


 そう伝えると兵士も笑いだした。


「そいつは良いや。爆裂矢に魔導。ここはさしずめ魔境だな」


 どうやら兵士のツボにはまったらしい。

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